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イスラエル・実地でのワクチン効果 (プレプリント)

でも紹介した、イスラエルでの接種者のデータ。データを出している2つの保険者のうち、Maccabi社 (加入者数260万人)が解析した結果が、プレプリントサイトに掲載された。

誰と誰を比較する?

前回紹介した、「加入者のうちのワクチン接種者 vs 加入者全体」や、「加入者のうちのワクチン接種者 vs ワクチン非接種者」ではなく、やや特殊な比較をしている

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使用したデータは、加入者で1/15までにワクチンを接種した51万人分のデータのみ。

ワクチンを接種してから、効果が出るまでには時間がかかることを利用して、
初回接種後1-12日のデータを対照群 (51万人分)
初回接種後13-24日のデータを介入群 (35万人分。例えば1/15に接種した人は24日後までのデータはないため、対照群よりも数が減る)

とし、感染率を比較した。実際、ファイザーワクチンの臨床試験でも、12日目まではワクチン群・プラセボ群に差はなく、それ以降から効果が出始めている。

(プレプリントのFigure 1. BNT162b2が臨床試験のワクチン群、placeboが臨床試験のプラセボ群)

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「感染」は、PCR検査で1回でも陽性になった人をカウントしている。

結果は?

対照群と介入群の特性はこちら (プレプリントTable1)。

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13-24日目 (擬似的なワクチン群)のほうがわずかながら平均年齢が高く、基礎疾患・合併症 (comorbidities)をもっている割合も高い。これは筆者の推測だが、イスラエルでもハイリスクかつ高齢の人から接種が始まっているので、13-24日目のデータがある(すなわち、早期に接種をしている)群の方が高齢・基礎疾患ありの人が若干高くなるのは自然であろう。

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こちらがプレプリントのFigure2。赤線 (1-12日)と青線 (13-24日)、離れているほど「効果あり」と判定される。6日目以降、すなわち12+6日=18日目以降から、2つの群で差が出ていることがわかる。

10万人あたりの発症率に変換すると、
13-24日目 (擬似的なワクチン群): 10万人あたり43.41人
 
1-12日目 (擬似的なプラセボ群):  10万人あたり21.08人

と、ワクチン接種によって感染 (PCR陽性)が51.4%減少することが示されている。なお、幅を持たせた推計では-7.2%から78.0%と、「78.0%減らせるかも知れないし、7.2%増やすかも知れない」と統計的な有意差が出ていないように見える。

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ただ、プレプリントFigure3では、全体の結果は有意 (RRRのバーの下限が、ゼロをまたいでいない)になっている。前述の通り12-17日目はほぼグラフが重なっているので、当てはめたモデルの差によって結果が変化したのか、あるいは単純な記述ミスによるものなのかは、(幅に関する議論が他の項にはないため)現時点では不明である。Figure 3では、糖尿病 (Diabetes)以外は、おおむね基礎疾患・年齢にかかわらず感染減少の効果が見られたと述べられている。

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あくまで「接種者の効果発現後 vs 効果発現前」という比較で、通常のRCTと同列に比較することはできない。それでも、実世界での有用性がある程度(まとまった人数で)示されたことには意義がある。2回接種完了者での同様なデータも、発表を待ちたい。


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