ドイツ制限解除後の再生産数のうごき
5月10日の記事でも書いたドイツ制限解除後の再生産数。
いったん1.0を超えて、ドイツ以外のメディアでも話題になった。
ドイツRKIの再生産数の計算方法は、潜在発症者の人数を補正して日ごとの感染者数を推定した上で、「3-6日前の新規感染者数」を「7-10日前の新規感染者数」で割り算して求めたもの。「4日間の平均」で評価していることになる。
それゆえ、解除直後に感染者数が上昇すれば、必然的に分子>分母となり、再生産数は1を超える。これまでも「直近の値は安定しないので、あまり右往左往しないでね」のようなリリースを出してきていたが、値の一人歩きを危惧した?のか、安定性がより高い「7日間での平均 (3-8日前の新規感染者÷7-12日前の新規感染者)」を公表した。なおかつ、再生産数の計算式を組み込んだExcelテーブルも公開している。(↓「テ」はウムラウト)
"Beispielrechnung für R-Schätzung"のP列、"Berechnung des 7-Tage-R Wertes"が、7日間平均で算出した再生産数である。
別ファイルにある「4日間平均 (R)」と「7日間平均 (R_7Tage)」を比べると、赤い7日間平均のほうが、変動が小さいことがわかる。今日のRKIの日報では、4日間平均のRは0.80 (幅持たせて0.67-0.97)、7日間平均のRは0.90 (幅持たせて0.83 -0.98)となる。
「感染者増えた」 vs 「再生産数上がった」???
完全に私見ではあるが、RKIが「一所懸命」に説明をする背景には、「再生産数」という言葉が与えるインパクトの大きさがあるように思う。
繰り返し書いてきたように、ドイツにおいて「直近の感染者数が増加すること」と「再生産数が1を超えること」とは、式の定義からすれば(期間の幅をとるとはいえ)ほぼ同義である。日本の再生産数の推計も、やや複雑なモデルを組んでいるとは言え、大元を辿れば新規感染者数の日ごとの増減に行き着く。
「制限を解除して感染者数が増える」と「制限を解除したら再生産数が1を超える」こと、計算式をたどれば同じ。それでも後者は、「水面下で恐ろしい事態が発生している」のようなインパクトを与えてしまう。そして、計算式抜きに値だけが一人歩きすれば、直近の値で不確実性が大きいことなどは置き去りにされていく。
RKIにせよ日本にせよ、計算式の詳細(単純ではあるが)が公開されたことは、再生産数の数値の意味(むしろ、のみ込み方)を正しく理解してもらう意味で、とても有用なプロセスだったと考える。
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