ノルウェー保健省・ワクチン有害事象レポート (1/22)

1/17にBloomberg日本語版が報じた、ノルウェー保健省のコロナワクチン有害事象報告(フレイル高齢者の死亡事例)。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-01-17/QN1V23T1UM0W01

Bloombergの英語元記事はより詳しく書いてあるが、当の保健省のサイトでも、頻繁に情報が更新されている。

現在の最新版は、1/21付けのもの。幸い、ノルウェー語とほぼ同内容(後述のとおり、グラフが一つ少ないだけ)の英語版が読める。

有害事象の頻度は?

1月21日現在で、71,971人がワクチンを接種された。そのうち、ワクチン接種との関係の有無は問わず、好ましくない出来事(=有害事象)が292件起こった。単純に割り算すれば0.04%・ 246人に1人となる。

292件の有害事象のうち、104件について詳細な情報がまとめられている。ノルウェーではファイザー・BioNTecとモデルナ、2社のワクチンが使用可能だが、現時点で解析済みの104件の情報は、すべて先行のファイザー社 (Comirnaty)のワクチンの接種者から報告されたものである。

高齢者が多い?

性・年齢分布はこの通り。104件のうち75件は、70歳以上の高齢者で起きている。

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ただしノルウェーでも、接種の優先者は

・介護施設の入所者
・85歳以上の高齢者
・医療従事者とエッセンシャルワーカー

となっている。少々タイミングがずれるが、1/17現在のワクチン接種者の年齢分布は以下の通り (Kvinnerが女性・Mennが男性。4,956から始まるのが実数、0.3%から始まるのが「その年代の人口のうち何%が接種済みか」の情報)。およそ5万人のうち、75歳以上が3万人近くを占めるので、有害事象報告も多くなるのは自然ともいえる。

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死亡者30名の背景は?

104件の有害事象のうち、死亡例が30件死亡以外の重篤なものが16件報告されている。重篤な有害事象は、「入院や、入院期間の延長が必要だったケース」「死亡や、アナフィラキシーなどの生命が脅かされるケース」「障害を引き起こしたケース」などが含まれる。

30件の死亡例の内訳は明示されていないが、

「高齢者施設の入所者の多くは、もともと虚弱な状態(フレイル)にあるか、もしくは終末期の状態 (terminal ill)である。ノルウェーの高齢者施設全体で、1日あたり平均45名が亡くなっている。それゆえ、接種直後に死亡したケースでも、必ずしも接種と因果関係があるわけではない。」

「非常に虚弱な状態 (most frail patients)の入所者の場合、基礎疾患などが影響して、通常ならば軽症で済む有害事象でも重症化・死亡する可能性がある」

とし、ワクチンの添付文書の改訂は不要と述べている。

どんな有害事象が観察された?

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発症部位別のグラフは上の通り。多い方から順に、

84件 注射部位での局所反応など(痛みや不快感・発熱など)
31件 消化器症状(腹痛や吐き気など)
30件 神経症状(頭痛やめまいなど)
28件 呼吸器症状(息切れ・呼吸困難・咳など)

となる。多くの症状が投与後1-2日で現れ、通常は数日間で消失する。

別の項では"prompt reporting is important"として、ワクチンに関する未知の有害事象の情報をできるだけ早く見つけるために、可能な限り迅速に情報収集・分析し、必要があれば接種の推奨を変更することが重要だ、と述べている。因果関係を問わずに広く情報を収集・開示することは、この路線に沿ったものである。



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