4/14 米NIHが健常者10,000人対象の疫学研究(抗体検査)開始

各国が「ホントのところ、患者数はどのくらいなのか?」
「どんなタイミングで縛りを緩くしていくか?」
「どのくらい免疫を持っているのか」
を明らかにすべく、健常人も対象に含めた上での疫学調査を計画・実施している。ドイツやオーストリアのケースはこの数日紹介したとおり。

先週金曜日、米NIH (National Institute of Health)が健常人10,000人を対象に、抗体検査による疫学調査を実施することを発表した。参加者の募集もスタートしている。

ドイツ・オーストリア研究との対象者の違いは?

ドイツ・オーストリア(ランダムに抽出した人に研究参加を依頼)とは異なり、NIH(実施主体はNIAID・国立感染症アレルギー研究所)の研究は、参加を希望する人が自ら連絡し、研究参加の基準を満たしているかどうかのチェックと同意を経て研究が開始される。

対象者は米国在住の成人(18歳以上)で、すでにCOVID-19に罹患した人や、感染の徴候がある人は除かれる。この点もドイツ・オーストリア研究とは異なる。
COVID-19の罹患が疑われる症状があったが、その後治癒した患者は、検査を受けていない場合に限りこの研究に参加できる。

すでに検査で感染が確認された人は除外されるので、この研究から明らかになるのは、「COVID-19の感染者が何人いるか?」ではなく、「検査対象とならなかったような、COVID-19の潜在感染者が何人いるか?」になる。

研究の流れ

参加希望者はまず、COVID-19のスクリーニング質問票にウェブ上で回答する。症状があったり、発症者との接触があるなどのハイリスク者は、かかりつけ医への連絡を指示される(研究には参加できない)。スクリーニングを通過した希望者は、NIHで血液を採取されるか、自宅に送付される採血キットを使用して血液を採取し、研究所に送付する。あわせて、人種・性別・年齢・職業などの背景因子も調査される。

採取・送付された血液は抗体検査 (ELISA法) によって、SARS-CoV-2ウイルスに対するIgG・IgMの有無が調べられる。(註: IgMが感染初期に、やや遅れてIgGが作られる)仮に抗体が存在した場合、追加的な検査をすることで、免疫獲得のしくみを詳しく調査する。このことで、「軽症・無症状で治癒した人の特性を明らかにできる。なお抗体検査は"NIH内で開発した手法を用いる"とのみ記載されている。

今回の調査は「参加希望者を募る」システムなので、「不安に思った人・心当たりのある人がより多く手を挙げる」バイアスはある程度存在する。もっともリスクの高い人は最初の質問票段階でふるい落とされるとしても、他国の研究とは少し形式が異なることは留意すべきである。

臨床試験登録サイト (Clinicaltrials.gov)の情報によれば、今週末 (4/16)から研究が開始され、2022年3月末までの2年間が研究期間に設定されている。なおこのサイトでは症例数は1,000例とあるが、NIHの発表では10,000人の予定。


 

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