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ワクチン接種の優先順位・英米独仏の状況は?

12/25の予防接種部会で、コロナワクチンの接種の優先順位案が示された(決定から修正)
部会の資料はこちら

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まとめ直すと、こうなる。

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予防の優先順位は、感染リスクの高い人や、感染後の死亡リスクが高い人を優先するのが基本となる。場合によってはこの要素に加えて、「感染した場合に、他者に拡げる可能性が高い人」を盛り込むことも考えられる。

米国の優先順位は?

ワクチンの優先順位は、海外でも当然議論されている。ここでは、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツの優先順位を見てみよう。

12月20日付けで、米国疾病管理センター (CDC)の下部組織であるACIPから出たレポート。

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日本と比べると、長期介護施設の入所者およびスタッフの優先順位が高い。この点についてCDCは、以下のようなエビデンスを紹介している。

ACIPの8月のミーティングでは、スタッフへの接種 (HCP vac.)と入所者への接種(Residents Vac.)をモデルで比較したデータが示された。グラフから見えるとおり、スタッフに接種した方が、死亡や感染を減らせる数は多くなる。

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あわせて、COVID19の入院患者のうち、高齢者ケア施設から来た患者の割合は、75-84歳で48.7%、85歳以上では65.9%を占めることも、12月のミーティングで報告されている。

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英国の優先順位は?

英国では、予防接種戦略を決めるJCVIが優先順位を公表している。

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こちらは、介護施設の入所者・従事者が単独で最優先とされた。論拠として、英国の介護施設での調査結果が引用されており、入所者では3.9%・スタッフでも1.2%が感染していることが報告されている。

フランス・ドイツの状況は?

フランスHASドイツ保健省の優先順位は以下の通り。

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どちらの国でも、やはりケア施設の入所者・従事者が最優先に位置付けられている。

もちろん、米国や英国の例で紹介したとおり、優先順位を上げるためには「感染するリスクが高い」「感染した場合に、重症化や死亡するリスクが高い」ことについて、ある程度のエビデンスが必要になる。この状況のみをもって「日本でも介護施設の優先度を上げるべき!」と結論するのは早計ではある。感染者も死亡者も欧米よりも少ない日本では、年齢や基礎疾患以外に「誰が感染しやすい?感染した後、誰が重症化・死亡しやすい?」のデータを取るのはどうしても難しくなる。今後のデータを待ちたい。

なお、優先順位を決める際に、単純に感染リスクだけでは決まらない。社会的な弱者(少数移民など)について、差別のリスクを最小化するために、あえて優先順位を上げることは、米国でも英国でも考慮されている。感染リスク「以外」の公平性の要素をどのように組み込むかは、重要な課題である。


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