アビガン「臨床研究」の公開情報

複数の報道で、進行中のアビガン臨床試験 (N=86)の中間解析結果が報じられている。「現段階で判断するには時期尚早で、臨床研究を継続すべき」との内容である。

この段階で分かることは極めて限られているが、幸い試験デザインなどの情報は臨床試験登録システムに公開されている。

正式名称は「SARS-CoV2感染無症状・軽症患者におけるウイルス量低減効果の検討を目的としたファビピラビルの多施設非盲検ランダム化臨床試験」。
概要は以下の通り。

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なお「無症状もしくは軽症」は、パフォーマンスステータス0もしくは1と定義されている。

どちらの群もアビガンを投与するように見えるが、効き目を判定するタイミングは6日目である。すると対照群は「6日目からアビガン投与」なので、この段階ではまだアビガン投与が始まっていない。そのため、実質的に「アビガン投与vs非投与」を比べることになる。単純に「アビガンを投与しない」群にしなかったのは、対照群に割り当てられても(遅れるとはいえ)アビガンによる治療が受けられるこように設計したためであろう。対照群に割り付けられた患者の不利益は少なくなる反面、中長期の有効性などは評価がやや難しくなる(アビガン先に投与vsアビガン遅れて投与の比較になってしまうため)。

蛇足ながら、「アビガン初めから投与」vs「アビガン遅れて投与」のような比較でも、投与するタイミングを研究者側が決めている(すなわち、アビガンの投与のタイミングを決めるのは臨床上の判断ではなく、研究目的)ため、観察研究ではなく介入研究に分類される

中間解析 (NHKの報道では、86名のうち40名)の結果は、「現段階で判断するには時期尚早で、臨床研究を継続すべき」という。例えば、劇的にアビガンが効いていた(すなわち、ウイルス消失患者の割合に大きな差があった)ならば、これ以上臨床試験を続けることは「すでに結果が見えているのに、遅延群に割り付けられる人が増えてしまう」ことになり、倫理的に問題が生じる。逆に大きな副作用が頻発し、アビガン群の安全性が問題視されるようなケースでも、やはり試験は打ち切られる。

どちらでもなく「試験継続」の判断が下されたことから最低限推察できるのは、現段階では結論を出せない(有効性で言えば、ウイルス消失患者が増えるかどうか「まだわからない」)ということ。評価ポイントが早い分、最終結果が出るまでもそれほど長期間はかからないと思われる。86例の結果を待ちたい。


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