4/13 オーストリアの疫学調査結果 (感染率0.33%)+さらなる追加調査の計画発表 (4月末までに完了!)

 昨日一昨日のドイツの話に続いて、あちこちで報じられたオーストリアの疫学調査。
 概要は上のNHKニュースの通りで、調査実施機関SORAのニュースリリースはこちら。
https://www.sora.at/nc/news-presse/news/news-einzelansicht/news/covid-19-praevalenz-1006.html

実施済みの調査のあらまし

 3月末から4月初めにかけて、オーストリア各地(249地域+ウィーン)でランダムに抽出した世帯に対し、研究への参加を依頼した。2,197世帯 (77%)から同意を得られた。オーストリア赤十字によるPCR検査 (CobasⓇSARS-CoV-2)と健康調査が実施された。
 なお、 抗体検査がベースのドイツの調査とは異なってPCR検査で判定しているため、偽陰性(感染しているのに検査が陰性)率はやや高くなる。一般的にPCR検査での偽陽性 (感染していないのに検査陽性)率は低いとされるが、後述のように有病率が低いため、偽陽性者紛れ込みのリスクもある。
 また、「気付かずに感染→無症状で推移→そのまま治癒、ウイルス消失」の場合も、PCRは「いまウイルスがいるか?」を見ているため、やはり陰性となる。

 1,541人から、健康調査の結果とPCRの結果が得られた。この結果に、研究参加段階ですでに感染が認められていた(過去の検査で陽性となっていた)3人を追加し、1,544人を解析対象とした。 

 1,544人中の陽性率は0.33%であった。逆算するとほぼ5人なので、もともと陽性だった3人に、残り1,541人中の2人が加わったことになる。(註: PCR検査の特異度を99.9%としても、感染していない1,000人に検査をすれば1人は偽陽性が出る。その意味で「1,541人中2人陽性」という結果は、やや注意深く評価する必要がある)
 得られたデータを、決め打ちの値(点推定値)で見れば5÷1,544=0.33% (300人に1人)。幅を持たせて推計すると、上限が0.76% (130人に1人)、下限が0.12%(830人に1人)。こちらで「1,544人中5人」として再計算した値でも点推定値0.324%・上限0.754%・下限0.105%となったので、ほぼ結果は一致する。

これらの値に人口を乗じて、決め打ちの値で28,500人・幅を持たせて10,200人〜67,400人という結果を導いている。

さらなる調査計画

この調査を受けてオーストリア科学省は、ウィーン大学・オーストリア赤十字と連携しつつ、第二ステップとしてより詳細な疫学調査を実施すると発表した

 第二ステップの追加調査の目的は、感染状況の正確な実態把握(とくに潜在的無症状患者の割合やすでに免疫を保持している者の割合)である。第二ステップはPCR検査をベースとするが、ある程度時間をおいて、第三ステップの抗体検査も実施予定である。

 4/16から参加者を募集し、4/20までに同意を取得する。ランダム抽出により、16歳以上の2,800名の参加者を研究に組み入れる。健康調査とPCR検査は、オーストリア赤十字によって4/22-25の期間で実施され、4月末には結果が出る見込み。
 
なお、収集される背景データは以下の通り。
 ・性別
 ・年齢
 ・国籍と出生国
 ・最終学歴
 ・就業形態と職業
 ・欠勤の有無(これを聞くとある程度生産性損失の実態が取れる。個人的には非常に興味あり)
 ・家族の人数と年齢

ドイツRKIと同様、非常に迅速な印象。第三ステップの抗体検査の結果まで含めれば、(Heinsbergのような交差反応の問題が解決されていれば)有用な情報減になろう。

 


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