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【コント】大化の改新

645年6月12日。

中大兄皇子
「(陰に隠れながら)手はずはわかってるな。」

中臣鎌足
「(同じく陰に隠れて)あぁ。
 蘇我氏がやってきたら、オレが話しかけて気をそらす。」

中大兄皇子
「その間にオレが後ろから蘇我氏を斬る。」

中臣鎌足
「今日は歴史に残る日だ。
 その名を『大化の改新』!」

中大兄皇子
「これは歴史に残るな。」

中臣鎌足
「そして、ナカダイさんとオレの名は今後、語り継がれることとなる!」

中大兄皇子
「・・・。」

中臣鎌足
「・・・(剣を構えて蘇我氏を待つ)。」

中大兄皇子
「・・・今、なんて?」

中臣鎌足
「・・・ナカダイさんとオレの名は今後、語り継がれることとなる!」

中大兄皇子
「あの・・・。」

中臣鎌足
「・・・ん?」

中大兄皇子
「・・・今までずっと言おう言おうと思ってたけど。」

中臣鎌足
「・・・なんですか、改まって。」

中大兄皇子
「・・・俺、ナカダイじゃないから。」

中臣鎌足
「ええっ?!
 『ナカダイアニオウジ』じゃないの?」

中大兄皇子
「中大兄皇子と書いて、『ナカノオオエノオウジ』ね。」

中臣鎌足
「ずっとナカダイさんだと思ってた・・・。」

中大兄皇子
「ごめんごめん。
 ずっと聞き間違いかなぁと思ってたけど、
 あまりに続くから、あ、これ本気で間違えてるわと思って。」

中臣鎌足
「すみません・・・。
 えーと・・・。」

中大兄皇子
「中大兄皇子。」

中臣鎌足
「・・・ごめんなさい、もう一回。」

中大兄皇子
「中大兄皇子。」

中臣鎌足
「・・・えーと。」

中大兄皇子
「中大兄皇子。」

中臣鎌足
「あのー・・・。」

中大兄皇子
「覚えた?」

中臣鎌足
「えーと、・・・はい!」

中大兄皇子
「・・・覚えられてないでしょ?」

中臣鎌足
「はい!」

中大兄皇子
「中大兄皇子。」

中臣鎌足
「・・・なか・・・なか。」

中大兄皇子
「中大兄皇子。」

中臣鎌足
「・・・なかのじ。」

中大兄皇子
「略さないで!
 中大兄皇子!」

中臣鎌足
「ダメだ!覚えられない!
 行くぞ、なかのじ!!」

中大兄皇子
「ダメダメダメ!
 うやむやのまま大化の改新できない!」

中臣鎌足
「いや、もうずっとナカダイさんだったから、
 突然『なかナントカ』とか言われても無理!」

中大兄皇子
「『なかナントカ』じゃない!
 中大兄皇子!!」

中臣鎌足
「あー!あー!聞こえなーい!!」

中大兄皇子
「聞いて!
 これ試験に出るから!!」

中臣鎌足
「大丈夫!
 覚えなくても生きていける!」

中大兄皇子
「投げやらないで!!
 たった今、歴史に名を残すとか言ってたじゃん!!」

中臣鎌足
「歴史の授業の挫折のキッカケになる!」

中大兄皇子
「寂しいこと言わないで!
 まだ歴史の序盤だから!
 絶対試験に出るから!」

中臣鎌足
「鏡文字みたいな漢字しやがって!」

中大兄皇子
「確かに左右対称っぽいけど、
 残念ながら後半破綻してるから!」

中臣鎌足
「わかったわかった。あとで覚える。
 行くよ、なかのじ。」

中大兄皇子
「・・・わかったよ、カタマリ。」

中臣鎌足
「・・・。」

中大兄皇子
「・・・(剣を構えて蘇我氏を待つ)。」

中臣鎌足
「・・・今、なんて?」

中大兄皇子
「カタマリ。」

中臣鎌足
「あの・・・。」

中大兄皇子
「ん?」

中臣鎌足
「・・・今までずっと言おう言おうと思ってたけど」

中大兄皇子
「・・・なになに。改まって。」

中臣鎌足
「・・・オレ、カタマリじゃないから。」

中大兄皇子
「ええっ?!」

中臣鎌足
「カマタリね、正しくは。」

中大兄皇子
「オレずっとカタマリと喋ってると思ってた。」

中臣鎌足
「その言い方やめて。傷つく。」

中大兄皇子
「わかった。タカマリね。」

中臣鎌足
「いや、カマタリ。」

中大兄皇子
「カタナシ?」

中臣鎌足
「カマタリ。」

中大兄皇子
「カネナシ。」

中臣鎌足
「カマタリ。」

中大兄皇子
「甲斐性なし。」

中臣鎌足
「もはや悪口じゃん。」

中大兄皇子
「覚えられないよ。
 ずっとカタマリだと思ってたから。」

中臣鎌足
「あー、もう!わかった!」

中大兄皇子
「何、どうしたの?」

中臣鎌足
「オレ、大化の改新終わったら名前変える!」

中大兄皇子
「いやいやいや、歴史に名を残すんでしょ?
 名前変えちゃマズイでしょ?」

中臣鎌足
「今後、日本中にカタマリとか呼ばれるの耐えられない。」

中大兄皇子
「じゃあ、オレも変える!」

中臣鎌足
「いやいやいや、なかのじまで変えたら、
 大化の改新、覚えさせる気あるのかって思われる。」

中大兄皇子
「そう考えると、蘇我氏って覚えやすいな。」

中臣鎌足
「あー、確かに。蘇我入鹿って。
 イルカとか絶対女子受け狙ってるよな。」

中大兄皇子
「狙ってる。
 絶対狙ってる。」

中臣鎌足
「あざとい系だよ。」

中大兄皇子
「守ってあげたい系男子?」

中臣鎌足
「アイツ計算高いからなー。」

中大兄皇子
「歴史に一瞬しか出てこないくせに。」

中臣鎌足
「出てくるなり暗殺されるくせに。」

中大兄皇子
「2時間ドラマの最初の被害者的なやつな。」

中臣鎌足
「・・・それにしても来ないな、蘇我氏。」

中大兄皇子
「蘇我氏・・・。
 なんか『蘇我氏』って声に出して言いたくない?」

中臣鎌足
「あ、わかる。
 ドラクエで敵にダメージを与える音っぽい。」

中大兄皇子
「そうそう。蘇我氏!」

中臣鎌足
「うはは!蘇我氏!」

中大兄皇子
「わはは!蘇我氏!」

中臣鎌足
「ははは!蘇我氏!」

蘇我入鹿
「何やってるんすか?」

中大兄皇子
「わ、蘇我氏!」

蘇我入鹿
「なんか盛り上がってましたけど。」

中大兄皇子
「あの・・・、えーと・・・。」

中臣鎌足
「・・・よかったら混ざる?」

蘇我入鹿
「あ、いいですか?」

中大兄皇子
「いくよ。蘇我氏!」

蘇我入鹿
「蘇我氏!」

中臣鎌足
「いいね。蘇我氏!」

蘇我入鹿
「蘇我氏!」

中大兄皇子
「蘇我氏!」

中臣鎌足蘇我入鹿
「蘇我氏!」

これから2日後の645年6月14日、大化の改新は決行された。

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