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第二十二話 こひなたん、実はすごい

再び、旅に出た2人ですが、川をあっちに行ったり、戻らねばならなかったりと面倒なことになっています。さて、今回は語り部TTがお知らせしますね。

SCISSORSの群れ

実際、想像しただけで、ちょっと(うっ)と来ませんか?みなさんが想像しにくいのであれば説明しますが、要はアメリカザリガニが川面を埋め尽くしているわけです。美味しそうでも何でもありません。まさに、グロいという言葉がピッタリの光景です。あ、中にはアメリカザリガニが好きでたまらないという方も居るかもですね。私はそうではないですけど。

さて、困ったのは2人です。さっき、SCISSORSにふくらはぎを挟まれて痛い目にあったサガワン。バサダーに治してもらったとはいえ、再び、あの川に入るのはやはりためらわれます。私だって嫌です。エルフのこひなたんも、もう水に入るのは避けたいようです。かなり疲れるんです、エルフは水で。

かと言って、SCISSORSの群れはひとつひとつが小さい個体が集まった群れなので、ワニの背を飛んでいくようなことはできそうもありません。周りには舟らしきものもありませんし、橋も見えません。エルフは水の上を飛ぶこともできないし、サガワンにいたっては、当然、飛べません。八方塞がりです。

サガワンの一言

「困ったね。川を渡るにはこのSCISSORSの群れが途切れる上流のどこかまで行くか、もう一度、さっきの崖を降りて、向こう岸にわたり、崖を手で登るかだね」
「いえ、それは無理だわ。下を見て。この群れの一部が滝を落ちて、下流にも広がっているわ。さっきの川はもう一度、渡れないわ」
「ああ!なんてこった。川が真っ黒になってる。じゃあ、上流に行くか」
「でも、どこまでこの群れが続いているかはわからないわ。それにせっかくすぐそこに合流地点が見えているのにもったいない」
「もったいないって言ったって、橋もないし空も飛べないんだから、行きようがないよ」
「え?今なんて言った?」
「空飛べないんだからって」
「そうじゃない、その前」
「橋もないって」
「そうか!」
「そうか!って何?」
「橋を作りましょうよ、橋!なんで思いつかなかったんだろう」
こひなたん、何か思いついたようです。

橋をかける

こひなたんはエルフの中でも、それほどたくさんの魔法は使えません。前に説明したとおり、ライターやエディターなどの魔法が使えるものの、あまり役に立つことはありません。でも、実はもう一つ、魔法が使えます。それは、ミケツという魔法。

この魔法は、紙を限りなく積み上げられる魔法。人間の中にもこの魔法を使える、編集者とか、記者とか呼ばれる人がいると聞いています。

それはさておき、こひなたんは思ったのです。この異世界では、紙を木から作ります。だから、きっと木を積み上げることもできるはずと。問題は木をどうやって切り倒すか。そう、聖剣です。

「サガワン、聖剣を使って後ろの森にある木を何本か切ってきて。その聖剣ならきっと切れるはず」
「やってみよう」
サガワンはできるだけ、手頃な木をまずは切ってみた。
(サクッ)
「え?!」と思ったようだ。太さが15センチ位の木だが、魚の切り身を切るくらいサクッと切れたのだ。手前にバタン!と倒れてきたので、びっくりした。同じ要領でもっと太い木を15、6本切り倒した。木はバサダーが運んでくれた。大人数で(笑)

しかし、こひなたんのミケツという魔法はすごい。それらの木を、そんな形で積み上げられるのか?という形に積み上げていく。人間界の編集者も真っ青なバランスだ。木々は一種虹のような格好になり、らくらく向こう岸に届いた。この上なら水から遠いからこひなたんも浮ける。サクサクと登り、あちら側へ降りた。
大変なのはサガワンである。いくら太い木だと言っても一本木である。立ってバランスを取りながら歩くことはできない。橋とはいえない橋である。イモムシのように登り、枝に邪魔されながら擦り傷を負い、てっぺんで反対側に足を向けて、ズリズリと降りる。降りてから思ったようだ。
(SCISSORSの川を渡ったほうが、傷が少なかったのでは?)

とは言え、SCISSORSとあいまみれることなく渡りきった。もう、そこには念の国への入口が見えた。バサダーたちに傷を見てもらいながら、(念の国では何が起こるんだろう)と心配性がムクムクと起き上がってくるサガワンであった。

続き 第二十三話 念の国、入国


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