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第二十三話 念の国、入国

念の国の入口まで来た二人。さて、このあと、どうなるのか。今回はこひなたん視点でお送りする。

わかれみち

なんとか、入口まではたどり着きました。しかし、川はやはり苦手です。エルフはなぜ水に弱いのでしょうか。まあ、他の異世界ではどうなっているのか、知りませんけど。

さて、念の国の入口には、なぜかたくさんのお地蔵さんがいます。無数の、という言葉はこのためにあるのではないかと思うくらいの数です。以前聞いた話ですが、念の国には使い終わった手帳が集められ、その手帳に入っている念を地蔵に移しこみ、手帳はお焚き上げすると。
たぶん、私達が目の前にしている地蔵はそうした念が込められた地蔵なのかもしれません。いや、もしかしたら、そのような念が収められる前の地蔵かもしれません。私にはその念は見えませんので、なんともいえません。
地蔵たちがたくさんいる中、細い道がくねくねと続いています。私達はその細い一本道をもう3時間ほど歩いています。道の始まりに(入口はこちら→)という表示がありましたが、それきりなんの標識もありません。一体、どこまでこの地蔵の群れは続くのでしょうか?

などと考えていると、分かれ道です。
(←昨日│明日→)
と表示されています。よくわかりません。サガワンの顔を見ると、もうクタクタの表情です。私も疲れました。もう、どちらでもいいので、本当の入口にたどり着きたい。
サガワンがなんと、聖剣を空に投げます。クルクルと回転しながら剣は舞います。シャリーンという乾いた音を響かせて、大地に落ちました。明日の方角を指しています。私達は、「明日」に向かうことにしました。

入口の出会い

明日の方向には、茨の道が待っていました。昨日にすればよかったかもしれないと思い始めたとき、嗅いだことのない匂いがしてきました。サガワンが言います。
「これは薔薇の香りだな」
バラとは何でしょうか?悪い気分ではありませんが、強い香りです。
エルフにはちょっときついかもしれません、、、と考えていたら頭がぼーっとしてきました。。。まずいです。

香りの先には何か四角い大きな物体が見えます。あれはなんでしょうか。あ!あれは、SHREDDERです!魔物の長、魔王のSHREDDERです!サガワン、危ない!行っちゃだめだ!と声を出したつもりでしたが、頭がぼーっとしていて声が出ません。どうしたことでしょうか。。。

サガワンがSHREDDERに近づいていきます。危険です!。。。
(ここからはサガワンが切り替わってお伝えします)

あの四角い箱は何だろうか。かなり大きいな。高さがざっと2m、横幅は1.5mくらいあるか。奥行きはあまりよく見えないが1mくらいだろうか。あ、その後ろには門が見える。まさにここが入り口なんだな。こひなたんはどうした?あれ、後ろで倒れているぞ。大丈夫か?こひなたん!

あれ、眠ってしまっているようだ。かなり疲れたからかな。困ったな。仕方ないから門のところまではおぶっていくことにしよう。思ったより軽くてよかった。ちょっと、この門のところに寝かせておこう。少しここで休むか。

と思ったら、急にさっきの箱が大きな音を出し始めたぞ!
(シュイーン!)
なんだこれ!?うわ、声がするぞ。
「おまえは誰だ?」
「って、人に名を尋ねる時は自分から名乗るものだ!」
「私はSHREDDER。念の国の入口を任されている。おまえは誰だ」
「SHREDDER!魔王じゃないか!こひなたんから聞いているぞ!」
(あれ、剣が重くならないぞ。なぜだ。敵じゃないのか?)
「なぜ、ここに来た?」
「シノンに会うためだ。私たちはシノンと話したいのだ」
「なに、シノン?錬金術師のか」
「そうだ。念の国にいると聞いた」
「今はいない。火の国へ帰った。やつは火の国の錬金術師だからな」
「魔王の言うことをそのままうのみにできるわけないだろう!私をだまそうったってそうはいかないぞ」
「私も嫌われたものだな。おまえ、使い古しの手帳は持っているか?」
「いや、持っていない。今使っているものだけだ」
「なら、貴様に用はない。私は使い古しのものだけを所望しておる」
(あれ、なんだか聞いていた話と違うぞ。。。)

私は剣が重くなっていないことから、この魔王が敵ではないと認識し始めていた。聞いている話と違うが、剣のほうを信じたい。そこで、よくよく話を聞いてみることにした。こひなたんも寝ているし、都合がよい。

で、聞いてみると、(第九話の話)ということなのである。みんな誤解してんじゃん!って思った。魔王SHREDDERは、念の国のさっきの地蔵の話を信じた人たちが使い古した手帳を持ってきた際、それを預かり、切り刻んで再生紙としてまた手帳に戻すという作業をしているにすぎないのだった。きっと、これを聞いたらこひなたん、ひっくり返るだろうな。寝ていてよかった。

「そういうことなので、入国は認めるが、シノンはさっき言った通り、いないぞ。どうする?」
「うーん、こひなたんに魔王からそんな話を聞いたと言っても信じてもらえないだろうから、いったん入国して、誰かに同じ話を聞くしかないと思う」
「なるほど、それがいいだろう」

魔王、意外といいやつじゃん。

続き 第二十四話 ノートと手帳


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