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第七話 SCISSORS、現る

連載七話である。今回も私、TTからの視点で語る。

初めての魔物

泥のように眠っていたサガワンは、かすかな物音で目を覚ました。
(サクッ、サクッ)
細目を開けてみると、すっかり陽が出ている。気候はよく、大地に横になっていても風邪を引くような感じはしない。
そして、大きな音はしない。が、大地を伝って、気味の悪い音がするのである。
エルフこひなたんは、周囲には見えない。サガワンを置いてどこかへ行ってしまったのか。音は少しずつ大きくなってくる。
(サクサクッ、サクサクッ)
素早く動くのは却って危険ではないかと判断したサガワンは、ゆっくりと立ち上がった。そして、音のする方へゆっくりと振り返ると、見えた!
「なんだ、こりゃ!でかい!」
人間界ではちと考えられない大きさのザリガニのような生き物である。立ち上がれば、3メートルはあろうかという巨体である。周りの草をそのハサミでサクサクと切っている。
「こんなの、昔の仮面ライダーの悪の手先でしかみたこと無いぞ!」
とサガワンは思わず叫んでしまった。

聖剣の切れ味

一歩ずつ、時計が時を刻むように正確に、ザリガニのおばけはサガワンに近づいてくる。
「赤SCISSORSね。比較的小さい方ね」
と、どこからか戻ってきたこひなたんが静かに言う。
「あなたの戦闘練習にはちょうどいいと思うわ」
「こんなにでかいのに、小さい方って、どんだけでかいのがいるんだ?」
「これの3倍くらいかしら」
サガワンが少しふらっとしたのは、気のせいではないはずだ。
「SCISSORSは手帳の敵ね。もう少し大きいやつに以前、勇者になりかけのニックがやられたわ。手帳を切り刻まれたの、それも来年の」
ずしりと聖剣が背中で重くなる。戦えの徴だ。サガワンは諦めて、聖剣に手を伸ばすが、掴む前に勝手に聖剣が前に出てきた。
(ザクッ)
と音がしたと思ったら、SCISSORSの片方のハサミが大地に落ちる。同時に、サガワンの手に聖剣は戻ってきた。軽い。一方、切られたハサミはピクピクとまだ動いている。
(ドスン)
という音とともに、SCISSORSは後ろに仰向けに倒れた。
「思った以上に弱かったわね。練習にもならないわ。このSCISSORSは前世紀の生き残りだと思うわ」

SCISSORSとは

「はじめは驚いたけど、それよりこの聖剣の力にもっと驚いたよ。俺、何もせずとも勝っちゃったよ」
「そうね。SCISSORSは魔王SHREDDERの手先。弱いものから比較的強いものまで、いろいろ居るわ。SHREDDERはこいつらを使って錬金術師が作る手帳を壊滅させようとしているの。なぜなら、手帳大陸の人間たち、エルフなどに堕落した生活を送らせたいから。そうすれば、自分たちの天下になる」
サガワンはこひなたんの話は大して聞かず、ただ、(もっと大きいのが居るのかあ)とぼんやり大地に横たわるハサミを見ていた。
「さあ、北に向かいましょう」
こひなたんは空中移動しながら言った。

第八話 手帳大陸談義 に続く


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