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第十七話 ジェームズ

連載もだいぶ続いてきた。今回は語り部TTからお届けする。
ブロックGlassで尋問を受けて、ちょっと疑われてしまったこひなたんとサガワン。尋問する3人から面倒なことを持ち込まれそうである。

剣の返却

ニヤニヤして戻ってきた3人。着席するなり言った。
「ブロック内を通り抜けるための条件がある!」

こひなたんもサガワンも嫌な予感がした。何かトラブルに巻き込まれそうである。一体何だろう。

「剣を返却しよう。その代わり、やって欲しいことがある。実は我々のブロック内に今、ジェームズのでかいやつが嫌がらせをしに来ている。非常に困っている。このジェームズをなんとかして欲しい。」
「じぇ、ジェームズ?」とサガワン。(ジェームズってなんかプロレスラーかなんかか?)と思ったサガワンだが、こひなたんが言う。
「ジェームズはやっかいね。あの液体に絡め取られると面倒なことになるわ。一体、ブロック内で何をしているの、ジェームズは」
「お、君はジェームズのことをよく知っているようだな。さすがエルフだ。一昨日からどこから入ったのかブロック内にジェームズが現れた。既にブロック内の3つの家が襲われて、ドア、窓、そして手帳すべてにあの液体を掛けられ、家が使えなくなる始末。”速乾性”ジェームズらしく、1時間もしないうちに乾いてしまうため、1日や2日で全てを剥がしきることができないのだ。なんとかやつを倒して欲しい。君は勇者なんだろう?」

サガワンは思う。(やっぱりだ。なんだかやっかいだろうと思ったが、ジェームズってのはなんかの魔物だな。倒すって、俺にはそんな力ないよ)
一方、こひなたんは思う。(ジェームズを倒すふりをして一気にブロックを駆け抜けることができれば、、、走って半日は掛かるけど)
2人は同時に「よし、やろう!」と言った。

「ならば、この剣は返そう。これでなんとかなるか?うん?さっきよりもずっと重くなっているような気がするな」
(ずしっとした重さ)
「戦いを前にするとこの剣は重さが増えるんです。そして、戦いが終わるとまた軽くなる。不思議な剣なんですよ」
「そうなのか。そんな剣があるとはな。よし、使者を付けるからそいつについてジェームズを探してくれ」
と言われて、テーブルを後にすることになった2人。大丈夫なのか。

ジェームズ現る

使者は軽い足取りで2人を先導する。
「昨日、ジェームズが現れた場所まで案内する。やつはそれほど早くは歩けないはずなので、まだ周辺にいるはずだ」

小声でサガワンが言う。
「ジェームズって何だよ。速乾性とか液体とか言っていたけどさ」
「粘着性のある白い液体を手の先から出す魔物よ。全体が黄色くて手先や足首、顔だけ赤いの。ジェームズというのは、その魔物の種族の名前で、いくつか亜種が居るわ。さっき言っていた"速乾性"ジェームズは、白い液体が早く乾くのよ。だからやっかいなの。さらに早く乾くアロンでなければ良いのだけど。。。」

「あそこだ。私が指す先に茶色い屋根の家が見えるだろ?」
「あ、なんかストライプ模様のやつですかね」
「そうだ。本当は全体が茶色なのだが、ジェームスに液体を掛けられて乾く途中なのでストライプに見える。乾ききると半透明になるらしいのだが、そうなると剥がすのがやっかいになる」
(なるほど。ボンドのようなものだな)とサガワンは思った。

(じゃり、じゃり、じゃり)
右前方から物音が聞こえる。「敵襲!」とこひなたんが叫ぶ。ジェームズだ。かなりゆっくりとした足取りだ。
大きい。液体を出す指先の部分だけで、50cmの大きさはある。全長は5メートルほどか。体つきは、首が長く、手足は細長い。姿だけだとキリンが二足歩行しているように見える。手の先と足首から下、そして顔の一部だけが赤く、他は全体的に黄色だ。足が細いので、体のバランスがすごく悪い。あれでは走ったりはできないだろう。

横を見ると、既に使者は一目散に逃げている。速い。
こひなたんが言う。「あの使者、役に立たないわね」
(背中の剣がずしりとさらに重くなる)(抜けの合図か)サガワンは思う。

ジェームズと交戦

ジェームズが一歩前に出ると同時に、左手と思われる方から早速、白い液体を噴射してきた!マシンガンのような格好だ。こひなたんが左へ、サガワンは右へ体を飛ばして避けた。
続いて第二波。今度は右手から大量噴射だ!こひなたんを狙っている!こひなたんは後ろへ下がってなんとか躱す。さらに、第三波。今度は、サガワンを狙って大量噴射!
剣を抜くサガワン。それと同時に剣は高速に扇風機のように回転する!そこへ白い液体が放たれる。剣は液体を四方八方へ飛ばす。一部がジェームズの方へ戻っていった。
弾き飛ばされた一部の液体がジェームズの右足下に集まると、自分自身の足を接着してしまった。右足が動かなくなる。速乾性だ。サガワンの剣はというと、全く液体が残っていない。完全に弾き飛ばした形である。
「それ!」という言葉と同時に、サガワンは回り終わった剣をジェームズの左足に向けて投げる。(ざくっ)という音がして、足が切り落とされ、バランスを失ったジェームズは前のめりに倒れる。(どかっ)

それを見た使者が戻ってきた。
「本当にやったのか。あの一瞬で」
「そのようだね。ただ、私もあの液体がなぜ、剣についていないのかは不思議に思っているよ」
すると、こひなたんはいう。
「剣に蛙エキスからできたコートをしてあったのね。さすが、horirium。このコーティングは粘着性のある液体を寄せ付けないのよ。だから弾き飛ばせたんだわ」
「すごいコーティング剤だね。人間界にも持って帰りたいよ」

「ということで、条件を満たしたので、私たちは行って良いわね」とこひなたんが使者に確認する。
「もちろんだ」
2人は使者にジェームズの亡骸を任せ、さらに東へと向かう。

続き 第十八話 ブロックFlowerでの事故


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