見出し画像

フェリー

年に2度、フェリーに乗ることがある。
仕事の関係で小さな島の小学校を訪れなければならない。
福岡では猫がたくさんいることで有名な島だ。

朝の2便で出発するフェリーの中は、猫好きな人たちと釣り人でいっぱいになる。
島の中で増え続ける猫たちは、今や島の人口より多いらしい。

釣り人が釣った餌を分けてもらい、時折り撫でてもらう猫たちを羨ましく眺めながら、わたしにもひと撫でさせておくれと心に秘めて仕事へ向かう。
朝から始めた仕事は、昼頃には終わってしまう。
案外楽な仕事で気に入っている。まるで小旅行気分。
島でランチする場所はないので、決まって給食を頂く!!
私に話しかけて良いかわからない、と言った顔の小学生たちの間で黙々と給食を食べるのも慣れたものだ。

帰り道は少し早めにお暇させてもらい、念願の猫を愛でる。
気前よく触らせてくれる猫たちにうっとりしながら、帰りのフェリーを待つ時間が何よりも好き。
遊んでくれてありがとうと声をかけて、フェリーに乗り込む。

社会人になってからというもの、実家に帰るときは飛行機を使っている。
フェリーで8時間かかる片道が、飛行機なら40分になるのだから、時間をお金で買うと言うことは、まさにこの事だろう。
長らくフェリーに乗って、実家へ帰っていない。
長旅の道中に、甲板に上がり通り過ぎた後にみえる、湧き上がる波が好きだった。
プロペラで巻き上げられた波は、いつまでも船に着いてくる。

ただ呆然と、出来上がった道を眺める時間も大切にしたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?