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手話で脚本創作塾④「なんで?そんで?」

今井雅子さんワークショップの「脚本創作塾」を受講した中で作ったお話を備忘録としてメモその4。

前回のnote

文化庁の令和4年度障害者等による文化芸術活動推進事業育成×手話×芸術プロジェクトによるもの。

ついに全4回の脚本創作塾も最終回!
この日は朝から寒く、空気の冷たさにひいひい耐えながら会場まで向かった。


まずは先週提出した作品添削したものを利用して講評。他の受講者の作品を確認しつつ、脚本の形式、見やすさを意識した添削アドバイスを頂いたので勉強になる部分が多かった。

・ト書きは見えるものだけを書く。身体的特徴はト書きに。
 第三者であるカメラワークの視点を意識して書くと分かりやすくなる
・「」の中の(〇〇ながら)はセリフの前に付ける。色んな書き方がある。
 男「(去りながら)じゃあね」  OK
 男「じゃあね(去りながら)」はあまり良くない
 男、去りながら 「じゃあね」 ト書き+「セリフ」も可

Q:環境音に近い会話の音を記載する場合の工夫はどうしたらよいか?
 例)郵便局で、隣で「ハガキいくらですか」「〇〇円です」と会話がある場合の記述について。
A:(OFF)か(電話)などを用いると良い。
〇郵便局窓口
 女(OFF)「あの、ハガキいくらですか」
 女(OFF)「~〇〇円です」
 女(電話)「〇〇です~~」
など、会話外で話してる内容を()で補足して書くと分かりやすいそう

手話と会話の音が混じっているシーンを想定して書くならば、『手話で会話している時』の内容の他に、『周りの環境音となる会話の音』を脚本、演出に盛り込む時の工夫、分かりやすい描写も考える必要がありそう。


ワーク6 テーマ:赤ずきん

①赤ずきんが一人でおばあちゃんの家に行った理由を必ず記述する
②オオカミのお腹の中でのおばあちゃんと赤ずきんの会話

「なぜ、1人で行ったのか」の理由をきちんと考え、思いつきを掘り下げ「なんで?」の切り口を作り「そんで?」とおばあさんとの関係、キャラ立ちを膨らませることを意識。

→まず10分で話を考えてから、それを手話寸劇で表現。手話寸劇発表後に20分で文字に書き起こし脚本の書式に沿って書いていく。
ーーー
・手話寸劇発表用のざっくりメモ
設定 赤ずきんは親からおばあさんの所に日常生活品を配達させられてる
〇オオカミのおなかの中
異様に厚着をしているおばあさん
どうして食べられちゃったの?
わざわざ狼さんに食われなくていいのに。
あら、消化さえされなければ冬の間の暖房代タダよ
それはそうだけど…大丈夫?!
大丈夫、吐き出させるようにちゃんと準備してるから
狼の喉を殴る
オオカミの声「ヴオエ!」

<寸評>
もっと設定盛り込むと面白い。なぜ赤ずきんは配達させられてるの?
 →おばあさんがケチすぎて日常生活品や食料持ってきてよ!って親に言ってるから。赤ずきんは親とおばあさんにしぶしぶ従ってるイメージ。
それなら最初のシーンで親との会話やおばあさんとのイメージ、またはオオカミがどう飲み込んだのかも考えて書くといいかも
<他受講者からのコメント提案>
「胃の中って臭くない?」→ファブリーズを持ち出してみる(笑)
「なぜ厚着か?→消化されないため。ってことは赤ずきんがわたし死んじゃうのでは!?と焦ってもよさそう」→焦るシーンを入れてみる(笑)
ーーー

文字に書き起こし+設定盛り込みしたもの↓


【設定】 赤ずきんのおばあさんはドケチで有名。
そして赤ずきんは親からおばあさんの所に日常生活品を配達させられている。
〇赤ずきん家
親「ちょっと赤ずきん、あのケチケチばあちゃんにまとめてこれ持って行ってよ! LINEすごい来てるんだからね」
赤ずきん「はあ~? も~しょうがないわねあのおばあちゃん」

〇おばあさん家
赤ずきん「あれ、いない…?」
辺りをきょろきょろ見回すとオオカミが後ろから現れ、口を開けている。
赤ずきん「え!?」
喉の奥からおばあさんの声がかすかに聞こえてくる。
オオカミ「(ぼそぼそと)…ちょっと! こっち!」
オオカミの口のなかから手が現れ、赤ずきんはそのまま中に引きずり込まれる
〇オオカミのおなかの中
異様に厚着をしているおばあさんがいる。
おばあさん「もお~遅いじゃないの!」
赤ずきん「どうしてここに?」
おばあさん「あら、消化されなければ冬の間の暖房代タダよ」
赤ずきん「え……ええ……なるほど? ってここ、臭くない?」
おばあさん「大丈夫よ、これ持ってるから」
おばあさん、服の中からファブリーズを取り出しシュッシュと掛ける。
遠くでオオカミの呻く声が聞こえる。
赤ずきん「ああ……異様に厚着してると思ったら……いろいろ持ち込んでるからなのね」
おばあさん「ええ、それにここ長く居ると溶けちゃうから」
赤ずきん「え!? 私ヤバくない!? 薄着なんだけど!」
慌てふためく赤ずきん、服の一部が溶け始めている。
おばあさん「大丈夫、吐き出させるようにちゃんと準備してるから」
おばあさん、狼の喉を勢い良く殴る
オオカミの声「(吐き出す)ヴオエ!」
二人ともオオカミから吐き出される
おばあさん「(得意げに)ほらね」
オオカミ「……ちょっとばーちゃんもうちょっと優しくしてくれよお」
おばあさん「うるさいわね~代わりにご飯分けてんだから、我慢おし!」
赤ずきん「さすがケチケチばあちゃん…抜かりないわ」
おわり

<寸評>
良くなってきてる。ただ、部分的に表記ブレや脱字があるので脚本の形式や書式に気を付ける。主語きちんと記載すれば誰が、何を、どうしているのか把握しやすくなるので役者だけでなくスタッフにも分かりやすいように。
会話内に書き言葉が所々あるので話し言葉を意識するといいかも。
話している内容の伏線や順番なども整理して、掴んで引っ張ってから最後に「消化される」オチを強調した方が面白いと思う。

<部分的な修正例>
・〇赤ずきん家→赤ずきんの家 
・親→どっちの親なのかを記載
・「あのケチケチばあちゃんにまとめてこれ持って行ってよ!」
→ケチケチ、まとめてこれ持って行ってよ、は書き言葉的?で説明的なので「(物を渡して)ちょっと、あのケチばあに、これ!」とかシンプルでも良さそう。
(ケチなのが周知の事実ならケチばあ、に縮める。距離があまり無ければこれ!で近くにいるように示したり)
・狼の喉の奥から手が→オオカミの喉の奥からおばあさんの手が
・遠くで→外で(※距離があまりないので外で、が適切) 
・「あら、消化されなければ冬の暖房代タダよ」※書き言葉で説明的
 →「暖房代タダよ」シンプルに、消化のワードをここで出さず、その後に持っていくとオチが強くなる。
・二人とも→赤ずきん、おばあさん (二人だとどの二人か分かりにくい)
などなど…。
その他にオオカミは今回飲み込んだのが初めてなのか、おばあさんは毎年こういうことを行っていたのか、より深く設定を掘り下げていくのも良さそう。


今回は受講者それぞれの個性がにじみ出てる手話寸劇と文を見るのが面白かった。他の人の発表シナリオ↓(要素メモ)

・赤ずきん×暗殺(飢饉の背景)

(↑ツイート掲載許可受領済)

・赤ずきん×美容(胃液)ホラーorコメディ
・赤ずきん×好奇心(冒険)


お互いにフィードバック確認し、最後に感想を述べて終わり。
ちなみ基本講座受講者は応用編として、実践的に脚本技術を学べるフォローアップ講座を受けることができるので来年1月に全2回受講予定です。
いったんひとやすみ、ひとやすみ。

会場内で飾られていたクリスマスツリーを撮っていたら先生に手招かれるの図。

来年もよろしくお願いします〜。



※こっから長くなる考察メモ。

興味ない人はスルー推奨

帰り道、受講者の1名とずっと話していて気づいたこと。先生から「書き言葉ではなく話し言葉で」と言われてたことから、
ろう者(日本手話使用者)は、無意識に書き言葉になりやすいのでは?
という話になった。(説明するシチュエーションや個人差はあると思うけれど)
日本語での話し言葉では動詞の「何をするか」をぼかしてもある程度伝わることもあり、ハイコンテクスト(抽象的)だとよく言われている。それが日本手話だとローコンテクスト寄り(具体的)なので無意識に書き言葉になりやすい?

例えば、(これはちょっと例えが悪いかもしれない)
「殺す」、「殺(や)る」の表現について。
書き言葉→「あいつ、しつこいしもう、殺るしかないんじゃない?」
話し言葉→「(目線をやりながら)しつこいしな…もう、やるか?」
日本手話→「PT3 あいつ/しつこい(眉しかめ)/殺/(眉上げ)?」

書き言葉だと「殺る」の文字で簡単に表せるけれど、
この場合の話し言葉の「やる」を単語のまま日本手話で表すには表現を変えないといけない。
なぜなら「やる」だけでは具体的にどの動詞での「何をやる」のか、殺意の有無などがすこし伝わりづらいから。
というか、日本語の同音異義語や曖昧な部分が多いからかも。
「何」を「やるのか」具体的に示す際に仮に殺意があれば「殺す(包丁で刺す)」ような手話が選ばれる。または死なない程度に痛めつけるのであれば「殴る」or「押し付ける」などが選ばれる。
時間が迫っている条件下での会話の場においては直接的な表現を選ぶと相手に伝わりやすくなる(その方がイメージしやすくて手っ取り早いから)
つまり、情報伝達ツールとしての、伝わりやすい日本手話とは具体的で説明的であり、書き言葉の説明に近いものである、ということが言えるのではないだろうか。

(※書き言葉の定義について。今回セリフが書き言葉的ですね〜みたいなことを先生に言われたのは書き言葉=説明的のニュアンスで使ってるか、わたしが通訳読み取り間違えてるかのどちらかな気がしてきた)

とりあえず、「無意識に書き言葉になりやすい」ことが分かれば、あとは工夫して対策を立てればよいだけなので脳内でスイッチングし、書き言葉から話し言葉に変換するようにして、とにかく省ける所をどんどん省いていけばなんとかなりそうではある。
上手く行かなければ他の人に添削のアドバイスをもらうのが確実。

話し言葉を自身でインプット、アウトプットするにはやはり、漫画、映画、ドラマなどの台詞からだろうか。
自分の書いてる言葉がなぜ書き言葉になっているように見えるか、説明的になっていないかを意識しないといけなさそう。ムン。



追記:手話の第三者視点での状況説明の表現は説明的になりがちで、主観視点での状況説明の表現は話し言葉になりやすいのかも。
その他事例(知人提供)
書き言葉「あいつ……あの隆々とした筋肉やべえな……」
話し言葉「あいつ……やべえな……(筋肉を凝視しながら)」など。

赤ずきんのシナリオ例では分かりやすいように「赤ずきん、これ持って行ってよ」と書くけど、実際に目の前にいるなら「赤ずきん」とわざわざ呼ばずに「はい、これ持ってって」となる。目線やモノ、動作、動詞で縮めて話しかけるっていう暗黙知…?がそこにある…?
書き言葉と話し言葉が混ざりがちな気がしてきました。
この辺りみなさんの意見がほしいところです。




この記事の最後に載せてた余談の部分については流石に長すぎたので別記事にまとめ直ししました🤔↓


受講した時の自分用メモとして無料記事にて公開しております。講義内容は全て載せずに一部端折っています。
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そっとしまってください。


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