見出し画像

暗く温かな土の下
ぬくぬくと鬱屈していた
  ただ天を夢見ながら

体を起こすには のし掛かる闇は重く
どうにか片手を伸ばしてみても
空を切る手に触れるものはなく
  それでも天を夢見ながら

ある時 土の粒子の隙間をぬって
針の穴ほどの小さな光
目の錯覚と疑いながらも
重い土を掻き分ける
  あの天を夢見ながら

エゴもプライドも
甘えも空虚も
恐れも絶望も
立ち上がる力に変えて 両足を支えて
無我夢中で 両腕を伸ばして
  夢見た天を目指しながら

そうして
ついに天に辿り着く
吹きつける風は厳しく
雨泥にまみれて這いつくばる

いつかの平穏な土の中を
懐かしく思わないでもないが
この上には さらに天
まさしく夢見た 光溢れる天

「あの場所へ」と
伸ばす腕は 支える足は
光に引き上げられるように
しっかりと太く のびのびと長く

いつしか風雨とも親友になり
見渡せば大地
見遙かせば天
気付けば「今ここ」が光の中



#詩 #空ニナク_asuta  

「notes」収録

無断転載複製等禁止


ここから先は

162字

¥ 10,000

お気持ちは心の糧に、そしてイベント参加費や印刷費の糧に、ありがたく使わせていただきます。