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埋火(うずみび)

昔、大好きだった人。
あの頃は毎日泣いて泣いて過ごしてたっけな。

たくさんたくさん時間を重ねて、あの時の想いはもう消したはずだったのに、こんなにも奥で、まだあつく熱を持っていたなんて。

こぼれそうになる涙を振り払って、ひとつ、深呼吸。
胸の奥の熱は消えそうにないけど、気付かぬふりで、また歩き出す。


◆埋火(うずみび)…灰の中に埋めた炭火。
昔囲炉裏では、大きな切り株や太い薪を昼夜絶やさず焚いていました。また、火鉢なども灰の中で炭を熾し、その火で暖を取ったり料理をしたりしていました。
こうして火を熾した囲炉裏や火鉢も、夜中や真昼の火を必要としない時は、燃えている炭や薪にたっぷりと灰をかけて覆います。このたくさんの灰の下でしっかりと燃え続ける炭火。この火を埋火と言い、密かに人に恋焦がれる様子を見立てたりもしました。
今回はそこから少し発展し、消したはずなのに残っていた、奥で燃え続けていた恋心というお話にしてみました。

あなたの心にも埋火、ありますか?


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