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【旅行記】JR日本横断 その5 小田原〜秋田(後編)
※この記事は2024/3/6〜3/11の間におこなった乗り鉄旅行のふり返りです。
#しろまるJR日本横断 3日目後半戦。
山形県新庄市からお送りいたします。
前回の記事↓
山形は続くよどこまでも
陸羽西線の代行バスから乗りかえたのはこちら!
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20本目、山形新幹線つばさ150号です。
つばさは全席指定の列車ですが、福島〜新庄間を相互発着利用する場合のみ、きゅんパスで普通車の空いている席を利用することができます。
(この区間では、同じような条件で利用できる特定特急券も発売されています)
えきねっとの予約状況と照らし合わせ、下車予定の駅まで人が乗ってこなさそうな空席を割り出してから本日2本目の新幹線で新庄を後にします。(しろまるさんは人見知りなので、正規の方法で座席を利用していてもあとから乗って来た指定席利用者との「そこ私の席ですよ…!」の会話を避けたいんです)
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新庄から福島までの間、つばさは奥羽本線上を走ります。このように新幹線が在来線へ乗り入れて目的地まで向かう新幹線のことを、ミニ新幹線といいます。新幹線なのに踏切やら小さな無人駅やらを通過します。おもしろい!
ミニ新幹線はフル規格新幹線よりも安く、早く作ることができるお手軽システムです。延伸に多くの課題を抱える西九州新幹線や北陸新幹線には、こういった選択肢もあるのでしょうか…。
県都の山形を素通りし(写真撮り忘れた)尚も南へひた走ります。かみのやま温泉駅を出発すると、左手の車窓に一際目を引く光景が飛び込んできます。
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長閑な田園風景の中に突如として現れる高層マンション『スカイタワー41』です。高さは133メートルもあり、マンションとしては、東北地方で最も高い建物なのだそうです。
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そして新庄から約1時間半。
私はつばさ号山形県最後の停車駅、米沢で下車しました。駅弁ランキングで1位を受賞したこともある『牛肉ど真ん中』が有名な所ですね。ここで乗り換えです。
…そういえば、随分と長いこと山形県内を移動しています。
いなほと代行バスで県北部の新庄まで北上したというのに、つばさに乗って再び南下してしまいました。
山形の旅は、いつまで続くのでしょう?
雪夜の秘境駅探訪
米沢での乗り換え時間は約1時間ほどあります。
新庄で感じた防寒着不足を補うために、私はダイソーさんで手袋などを買い足しました。駅の近くで調達できたので助かりました。
装備を整え、満を持して乗車するのはこちら。
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奥羽本線の普通列車です。
あれ…?乗ってきた路線をそのまま進むのであれば、つばさ号を降りる必要なかったのでは…?
いいえ、これにはちゃんとした理由があります。
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じゃじゃ〜ん!
秘境駅『峠』の訪問です!
以前から行きたい行きたいと思っていた知る人ぞ知るスポットで、2023年の秘境駅ランキングでは全国14位だそうです。
車での訪問も考えていましたが、秘境駅に鉄道以外で到達するのは邪道だと感じ、鉄分濃厚な旅企画を実行することになったこの機を逃すまいと、行程にねじ込みました。
峠駅は、その名のとおり峠の途中にあります。
この辺りは板谷峠という急勾配+豪雪地帯のダブルパンチで数多の列車たちを苦しめた日本の鉄道史の中でも屈指の難所です。これほどまでに名が体を表した駅は、なかなか珍しいのではないでしょうか。
シンプル☆イズ☆ベストで、かなり好きな駅名です。
(超、余談ですが、私が一番好きな駅名は、三岐鉄道の『暁学園前です)(響きが好き)
峠駅のホーム自体は北海道の田舎によくある無人駅のような簡素なつくりですが、雪の多さを象徴するスノーシェルターが駅全体を覆っています。まるで要塞です。
この時列車から下車したのは私一人だったのですが、ホーム上にもう一人影が。その人はこう連呼しています。
「ちからぁ〜もちぃ〜」
「ちからぁ〜もちぃ〜」
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峠駅は、この令和のご時世にホーム上で食べものの立ち売りが日常的に行われている非常に珍しい駅です。売られているのはその名も「峠の力餅」。奥羽本線開通時から愛され続けている歴史ある大福餅です。
力餅の販売は普通列車が駅に停まる30秒〜1分という短い時間で行われ、お客さんはドアや窓から餅を買い求めます。一連の販売作業を円滑に済ませるために、お値段はお釣りが出ない1,000円ぽっきりに設定されています。
(私は下車したのでホームで買いました)
慌ただしい餅販売がひと段落すると、乗ってきた列車は福島へ向けて峠を下っていきました。あとに残されたのは、静寂、暗闇、冷気、それと一人の稚内市民。売り子さんもいつの間にか姿を消していました。
次の列車までは約1時間。
雪夜の峠駅探索、開始です!
峠は、緩いカーブ上にある島式1面2線の駅です。駅を覆うシェルターはカーブから直進するように枝分かれし、二股になっています。
なぜこんな奇妙な構造をしているかというと、かつては峠駅で方向転換が行われていたからです。現在もスイッチバック用の線路跡は駅の出入り口へ通じる通路として活用されており、その歴史を感じながら歩くことができます。
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100mほど歩き、要塞の外に出ました。外界の様子が遮断されていたせいで気がつきませんでしたが、米沢を発った時に薄明だった空にはすっかり夜の帳が下りています。未だ高く積もった雪が僅かな雑音の残滓をも吸収し、一帯が濃密な静寂に満たされていました。
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秘境駅ランキング1位と名高い室蘭本線の小幌駅を訪問した際は、同志の観光客がたくさんいて、もはや人気観光地といった感じでした。面白かったですが、人の気配が寂寥感を打ち消し、秘境駅というよりもアトラクションのような感覚がして少し残念な思いをした記憶があります。
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しかし、今この峠駅にいるのは私ただ一人。
秘境感を独り占めです。
真の秘境とは、有名ではない場所。もしくは自分で見つけ出すものなのだと思います。今回はたまたま一人だっただけかもしれませんが、峠駅は鉄道の歴史的に見ても面白い最高の秘境駅でした。
(ちなみに、携帯の電波は普通にありました)
そして!
峠駅の見どころはまだあります。
この駅、秘境なのに、新幹線が通過するんです。
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シェルターに不気味な列車接近の警報音が反響するなか、トンネルの奥から轟々と走行音を撒き散らしてつばさ号がやってきます。狭いシェルターの中を這う鉄塊の存在感・威圧感は凄まじく、かっこいいを通り越して軽い恐怖すら覚えます。
私が滞在した1時間は上下のつばさがちょうど1本ずつ通過する時間帯だったのでこのイベントを2回体験できました。ラッキーですね(?)
さて。
雪深い夜の山奥に1時間もいれば、身体は芯まで冷え込みます。
プレハブ仕様の待合室には暖房など当然ありませんので、米沢で防寒着を買い足したのは正解でした。
…おや?
私の独壇場だった峠駅に、他人の気配がしてきました。先刻の売り子さんです。彼女の出現は、まもなく列車が到着することを意味します。
カンカンカンカン。
三度列車接近の警報音。
そして暗闇の向こうから迫りくる、モーター音と前照灯の光。
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列車が到着する瞬間はいつも嬉しいものですが、寒さに震える私にとって、今だけはなんの変哲ものない719系電車が新幹線より100倍カッコよく見えます。
「ちからぁ〜もちぃ〜」
「ちからぁ〜もちぃ〜」
列車のドアが開くと、売り子さんの声がシェルターに反響します。1時間前と同じ光景に見送られ、峠駅を出発。
雪夜の秘境駅探訪。とても充実した時間を過ごせました。
電車の暖房あったかい☺️
仙台といえばアレしかないよね
普通列車は軽快に夜の板谷峠を下り、福島へ到着しました。
新幹線つばさは峠駅に停まらないので普通列車の力を借りましたが、きょうはきゅんパスチートデー。ここから再び新幹線を多用していきます。
福島駅の新幹線ホームへ上がると早速、目の前をこまち・はやぶさの17両編成がヒュンヒュンヒュンと風切り音を立てて光速で通過していきました。在来線を我が物顔でゆっくりどっしり走るミニ新幹線も面白いですが、やっぱり新幹線は目にも留まらぬスピードで駆け抜けてこそ本来の姿ですね!
ややあって、乗車予定の新幹線が到着しました。
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E3つばさ+E2系やまびこの17両編成。私が乗るのは後ろのやまびこです。つばさが今しがた巡ってきた山形方面へと先に出発していったあとで、やまびこ号はのっそり福島を発車。終点の仙台まで約20分の乗車です。
と、ここで。
ぐるるるるぅ…
ん。
おなかが空いてきました。
思い返せば、特急いなほの車内で軽く駅弁を食べてから、何も口にしていません。峠駅にいた間は寒さで縮こまっていたのであろう胃と食欲が、温かい車内で復活しました。仙台に着いたら夜ごはんにしましょう。
仙台で…ごはん。
アレをたベるしかないですよね…牛タン。
※ただし仙台の滞在時間は約1時間です。
限られた時間内で仙台名物を食すべく、スマホでポチポチとリサーチをしていると、あっという間に仙台へ到着しました。
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とりあえず一旦改札を出て、駅ナカにある牛タン専門店が軒を連ねるお手軽お食事スポット「牛タン通り」に向かいます。
しかし、皆考えることは同じなのでしょう。どのお店も行列、行列、行列………1時間でミッションをコンプリートし、次の列車に乗るのは厳しそうです。
諦めるか…粘るか…
旅人の判断力が試されます。
………よし。
私は一旦仙台の駅舎を出て、四方に伸びるペデストリアンデッキを北西の方角に早足で歩きました。地上に降り、様々な飲食店が軒を連ねるパピナ名掛丁商店街へ向かいました。
全ては牛タンのためにッ…!
そして。
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目的達成!
利久名掛丁店が空いていたので入ることができました。判断は正しかったようです。限界乗り鉄旅のことは一旦忘れて、プリプリジューシーな牛タンに舌鼓を打ちます。最高♡
なんだかんだ昨日も静岡で浜松餃子を食べているので、ちゃんと満喫していますね。
最終列車がある限り、移動は終わらない
牛タンを堪能し、最低限の食休みを済ませてから仙台駅に戻ってきました。今日は仙台で終わりじゃないですからね。きゅんパスくんを最後の最後まで使い倒します。
仙台からの乗車はこちら。
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24本目、はやぶさ111号で盛岡へ向かいます。
東北新幹線の花形であるはやぶさは、つばさ同様に全席指定の列車です。通常、きゅんパスで乗車するたには座席の指定を受ける必要がある列車なのですが…
例によって仙台〜盛岡間の途中駅に停車するはやぶさを同区間内で相互発着利用する場合に限り、空いている席に指定なしで乗ることができます。ありがとう特例。
また、写真のとおりこの列車はE5系とE6系が連結した編成ですが、はやぶさ111号は本来ならこまちであるはずのE6系を含めた17両全部がはやぶさです!せっかくなのでレアなE6系側のはやぶさに乗車しておきました。
はやぶさ111号は、宮城・岩手県内の各駅に停車し、仙台から1時間強で終点の盛岡に着きます。時刻はすでに22時台。さすがに本日の移動はここまで………
………ではありません!
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盛岡到着の余韻に浸るまもなく、後続のはやぶさ・こまち45号が滑り込んできました。東京から新青森・秋田へ下る最終の新幹線です。すかさずこまちのほうに乗車し、秋田へ行きます。
最終列車がある限り、移動は終わりません。
(秋田新幹線の盛岡〜秋田間についてもこれまで同様の特例があるためきゅんパスで指定なし乗車が可能です)
はやぶさとの連結を切り離し、一足先に盛岡を出発したこまち45号の車内は、それなりに混雑していました。やっとのことで空席を見つけて着席します。
この時間帯の田沢湖線内の各駅には需要がないのか、こまち45号は盛岡を出ると大曲まで止まりません。人里離れた岩手と秋田の県境を、静かにひた走り続けます。車窓はほぼ真っ暗闇で何も見えませんが、窓から漏れた室内の灯りが照らす線路脇がどっさりと雪に覆われていることだけは分かります。
思えば、佐世保を出発してから3日でずいぶんと北に来たものです。
23時23分。大曲に到着。
ここから奥羽本線の線路に入るため、列車の進行方向が変わります。下車する人はまばらで、ほとんどの人が終点秋田まで行くようです。寝ている人も多く、座席は回転させずに皆後ろ向きのまま発車しました。
◆ ◆ ◆
23時53分。終点の秋田に到着。日本横断の中で最も過酷な3日目が無事に終了です。首都圏の降雪には肝を冷やしましたが、なんとか完遂できました。
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駅前のホテルにチェックインし、ベッドに倒れ込みます。おやすみなさい。
明日はいよいよ北海道入りです!
(つづく)
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