見出し画像

あの頃、勇者だった僕へ

 小学生の頃、僕は勇者だった。

 仲の良い友達と二人で毎日冒険の旅に出ていた。

 放課後が旅のはじまり。体育館横の廊下はダンジョンだった。

 三十センチのものさしが剣。道端で拾った小さな鉄板は手裏剣だ。

 見えないけれどそこにいる魔物たちをばったばったと切り伏せた。

 当時、僕たちの中で四神(青龍・白虎・朱雀・玄武)が流行りだった。

 それぞれの守護神を従えていた。

 僕の守護神は白虎。雷を操れる設定のようだ。

 小さなノートに習いたての漢字でオリジナルの技を羅列する。

 「爆裂雷撃百連爪」とか、なんかそんな感じの強そうなやつだ。


 あの「冒険ごっこ」の終わりはいつだったんだろうか。


 中学生になってからは恐らくやってはいないだろう。

 夢中になれるものが他に出来たからなのか。

 部活やギターやあの子のこととか。



 あの頃勇者だった僕へ。

 三十過ぎても僕は未だに、飽きることなく旅に出てるよ。

 今度はみんなにも見えるように、小説という形にしてさ。

 必殺技の名前なんかは、君のほうがセンスがあったかもね。


 君が感じたワクワクは、この年になっても続いているんだ。



 あの頃勇者だった僕へ。


 これからも勇者でいる僕より。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?