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猫学(ニャンコロジー)「役に立たない猫の役割」で養老孟子先生の講演を拝聴してきました

先月に引き続き、よみうりカルチャー公開講座にて養老孟子先生の講演を拝聴してきました(2024/2/25)。今回もファシリテーターは読売新聞社科学部次長の宮沢輝夫さん。会場は超満員で、熱心なファンが詰めかけていました。

養老先生はご自身が伝えたいことを散文的にお話になるスタイルなので、上手くまとめるのが中々難しいのですが、ポイントをまとめてみますね。

・1990年~2020年の間に70~90%の昆虫が滅んでしまった。虫だけでなく生き物が減っている。少子化もその流れではないか。その代わり家族としてペットが増えている。(ただし、先生はペットが増えたから少子化が進んでいるというロジックは明確に否定。あくまで少子化(生物の減少)が先にあるとのこと。)

・現代は生き物が行き辛い世界である。皆が適当にハッピーでいることが大切なのではないか。

・日本のGDPがドイツに抜かれ世界4位となった。日本は30年間低成長であり失われた時代とされ、そのことが盛んに悪いことのように言われているが、裏を返せば日本はその期間その分エネルギーを無駄に使わなかったということになるのではないか。日本人は高度成長期と公害などその弊害を経験し、成長するということに対してあまり肯定的になれない、そういった空気が蔓延したことが低成長に繋がっているのではないか。(どちらかというと先生はそういった低成長の空気に肯定的である感じでした。「世界の人口が70億人で日本の人口が1億人ならその70分の1で良い」といったことを仰っていたので。)

・本来は「現実が先で言葉が後」というのが自然であり、現代のように言葉が先になっているのは言葉に囚われてしまっている。

・南海トラフ地震は2038年頃と言われている(山極先生の前の京都大学総長と仰っていたので、尾池和夫先生の説みたいです)。日本の食料自給率は4割であり、体の6割は海外産ということを考えれば、生き延びるために食料を時給できる農業をやれる土地に馴染みを作っておくことが大切なのではないか。人間が猫にしてあげていること(食事、水、トイレなど)を人間が自分自身で用意していかなければならない時代が必ず来る

・日本の歴史の転換点は人為的なものより天災によることの方が多い。安政元年はペリー来航として知られそれが江戸幕府崩壊のようにされているが、それよりも多くの大地震が起こったことが契機となった。方丈記を読むといい。

・人工知能という言葉が嫌い。70億も人間がいるのだからそれを活かせばいい。

行く前はなんとなく先生とまるちゃんの鎌倉での生活のことなどが主な内容になるのかなと思っていたのですが、今先生が思索していらっしゃることを色々お伝えくださったのかなという講演でした。虫の激減については先生が以前から仰っていたことですが、それを食べる鳥そしてその鳥を食べる・・と食物連鎖で繋がっていく話ですし、農業にも深刻な影響が出る話でもありますよね。まるちゃんのお話は所々出てきて、今度ユニクロの世界平和プロジェクト?でまるちゃんのTシャツが発売されるとのことでした。まるちゃんは2020年末に亡くなったそうですが、いまでも家に帰ると玄関にまるちゃんの姿を探してしまうのだそうです。

前回もそうでしたがファシリテーターの宮沢さんがとても上手に場を回していらっしゃいました。聞き上手、まとめ上手(でも決して自分に都合よくまとめたりしない)。猫学の受講は今回が最終回で最後となりましたが、宮崎先生のお話も養老先生のお話も、色々なことを考えるきっかけになり受講して良かったです。コマとじろとどうやって生き延びるのか色々謙虚に考えて、やれることはやっておかないとです。

近著のタイトル「なるようになる。」の「。」は、まるちゃんのことだそうですよ。近々読んでみようと思います。

先生推薦の方丈記。名前だけ知っていて読んだことないのでこちらも読んでみよう。災害文学なのですね。


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