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高校生発 ロールモデルをみつけよう!#15 セデッテかしま 小川さん編

                       取材日:2022年10月20日 
                       編集長:但野むつ美
福島県を通る常磐自動車道の中で唯一のサービスエリアである「セデッテかしま」は、福島県の南相馬市鹿島区にあります。
この地方の方言、「連れて行って」を意味し、「また行きたいな」と思ってもらう施設になってほしいとの想いがこめられた「セデッテかしま」は、高速道路上りと下りの共用、スマートインター、一般道から利用可能の三拍子がそろっており、高速道路利用者はもちろん、地域の人々にも愛されている南相馬市自慢のサービスエリアです。

セデッテかしま

今回は、「セデッテかしま」の副店長である小川有哉さんに取材を行いました。
取材中、編集部員からの個人的な相談や編集部員の高校生活についての話にも耳を傾けてくださった小川さん。
小川さんのこれまでの人生とこれからの目指す姿をお聞きしました。


〈好きを見つけた中学・高校時代の小川さん〉


                           (但野むつ美)
小川さんは、南相馬市鹿島区のご出身です。家の近くには真野川があり、子どもだけでこっそり川遊びをしては近所の方に怒られるという、元気いっぱいな幼少期を過ごしました。今の穏やかな人柄の小川さんからは想像できませんが、とにかくやんちゃな子どもでした。

中学に進学し、やんちゃ少年を卒業した小川さんは部活に取り組みます。バスケットボール部と特設の陸上部に所属し、陸上部では駅伝で活躍しました。もともと走ることが好きだった小川さんは、部活に取り組むことで「好き」を伸ばし始めました。
高校の受験先は私たちが在学する原町高校ではなく、お隣の相馬市にある相馬高校を選びます。小川さんのお姉さんが相馬高校に通学していたこと、陸上部があり自分の好きなことに取り組めること、そして校舎がキレイなことに惹かれての進学でした。進学先決定の理由が私と似ているところがあったので、小川さんにとても親近感を覚えました。
小川さんの相馬高校での青春時代は、勉強と部活の両立も図れ、とても充実していました。
一方、将来の夢については決まっていませんでしたが、人に教えることと歴史に興味があったため、歴史の教員を目指し始めます。
関東圏の大学に進学したかった小川さんですが、結局宮城県の大学に進学します。進路について、両親と自分の考えの違いもあるなかで、経済的な負担を考えたとき、両親の希望を優先してしまったこと…。小川さんも悩まれた大学への進路選択のお話に私たち高校生は共感するばかりでした。
 高校生の私たちに学生時代のお話をする小川さんは、とても懐かしげに話されていて、充実さが伝わってきたのが印象的でした。

〈チャレンジの大学生時代〉

                            (遠藤瑚子)
大学生の頃は何をしても楽しかった、と当時のことを懐かしむ小川さん。大学では歴史の教員になるための勉強はもちろんですが、色々な経験をしたいという思いから、アルバイトを熱心に行います。
配達員、カフェの店員、試験官の助手、アパレル…経験したアルバイトは多種多様です。その中でも、アパレルのアルバイトを通して接客の面白さと奥深さに夢中になります。小川さんの、相手の想いに寄り沿おうとする姿勢と観察力が、接客において大きな役割を果たしていました。顔見知りのお客さんと会話し、相手の想いを大切に考えながら商品選びをサポートすることにやりがいを覚えるなかで、アパレル会社に就職したいという気持ちが芽生えました。小川さんは、「自分が何をするかの選択によって未来はどのようにも変えられる。」と私たちに伝えてくれました。積極的にたくさんのアルバイトに取り組み、就職のきっかけに出会った小川さんだからこその言葉だと思いました。

小川さんは大学生の時、もう1つの大きな経験をしました。それは、大学1年生の春休み期間に起こった東日本大震災です。ちょうど地元に帰ってきていた小川さんは、自分が生まれ育った故郷が崩壊していく様子を鮮明に覚えています。小学生時代に元気よく遊んだ思い出の場所は放射線量が心配だからと子どもたちが遊ばなくなり、この先地元はどうなってしまうのだろう、と不安な気持ちになりました。ですが小川さんは、見たことのない、行ったことのない地域へ行って活動してみよう、と気持ちを切り替えます。震災によって休学になっていた大学も6月からスタートし、大学4年生の春にはアパレル会社のインターンを始めました。

〈小川さん、リベンジを決意!〉

                             (中川猛)
小川さんは大学卒業後、学生時代に本腰を入れていたアルバイトをきっかけにアパレル会社に就職しました。人と会話をすることが好きな小川さんにとって、アパレル会社での接客はとてもやりがいがありました。会社からの打診があったことや、若い内に色々な場所に行きたいと考える小川さんの気持ちも重なり、大学時代を過ごした宮城県の店舗から愛知県の店舗に異動し、新しい地域での生活をスタートしました。

アパレル会社で在庫を確認中の小川さん

愛知県で時折テレビから流れる自分の地元・南相馬は、震災で無惨な姿のまま止まっていました。両親から聞いていた復興に向かって頑張っている南相馬市の姿とテレビの中の南相馬の姿はかけ離れていました。そんな放送を見て、小川さんは沸々と悔恨がこみ上げてきました。放射線への心配や、アパレル業を続けたいという気持ちから地元に帰る決意がつかないでいた小川さん。そんな小川さんを動かしたのは「福島から離れている遠い土地には、地元の頑張りが正しく伝わっていない。頑張っている地元の凄さをもっと伝えていきたい!!」というリベンジ精神でした。そして、両親から聞いていた、復興のひとつである「セデッテかしま」の開業と社員募集の話に興味を持ち、地元に戻る決意を固めました。
 実際に地元へ帰ってみると、復興に向かって動き出していますが、まだまだ東日本大震災の爪痕が残っている状態でした。小川さんは自分には何ができるのか考え、今まで磨いてきた接客を十分に活かせる「セデッテかしま」で南相馬の良さをもっと広く伝えるために尽力することを心に決めました。

〈小川さんにとっての「セデッテかしま」〉

                          (谷田部さくら)
小川さんは、「セデッテかしま」の開所から3か月後の2015年7月に採用されました。
「セデッテかしま」は、コーナーの作り方などが人の目に留まるよう工夫されていることやスタッフの皆さんの柔らかい対応が心地よく、私自身かなり頻繁に、「セデッテかしま」を利用しています。

セデッテかしまで商品を並べる小川さん

この「セデッテかしま」の野菜売り場には、新鮮な野菜や果物が沢山並んでいるので、どのように農家さんと交渉して野菜を出してもらうのかがとても気になっていました。小川さんに尋ねたところ、並んでいる多くの野菜や果物は「うちの商品を並べてほしい!」と、地元の農家さんたち自らが持ち寄ってくるそうです。地元の農家さんたちの積極性まで引き出している「セデッテかしま」が誇らしくなりました。
売り場が限られているため、農家さんが持ってきてくれた全ての商品を置くことはできない。でも出来るだけ多くの地元の農家さんを支援していきたいという想いが、商品の配置や置き方にも表れていることを感じます。

このように地元の人たちに愛されている「セデッテかしま」ですが、小川さんによるとまだまだこれからとのこと。この地域のものを多く取り扱うことで地元の方には認識されますが、県外の方などへのPRはまだ不足しているとの意識が小川さんたちにはあります。
「セデッテかしま」をさらに活用してもらうために小川さんたちは、「セデッテかしま」だけでなく、行政・地域と一丸となって取り組む仕組み作りを模索しています。「地元の魅力をもっと伝えられるようにすることで地元に還元し、貢献出来たらいいなと思います!」そう話された後、はにかんで笑顔を浮かべる小川さんです。

そんな笑顔が素敵な小川さんの一番好きな風景は、「セデッテかしまに人がいる風景」です。この言葉から小川さんの地元や、職場への愛情を感じました。私も地元への思いがあるため、今回の取材で小川さんの地元に対する思いを聞いて、感銘を受けました…。これから先、自分が地元に対して何ができるだろうと考えさせられる機会になりました。

〈セデッテかしまについて 〉

                          (松崎里帆子)
今回、私たちがお話を伺った小川さんが働く、セデッテかしまについてご紹介します!
セデッテかしまは、2015年に開所したサービスエリアです。高速道路からはもちろん、一般道からも入ることの出来る立地や利便性の良さから、昼夜お客さんが絶えません。私達取材班も17時過ぎに到着し、1時間以上滞在しましたが、終始お客さんの出入りがあり驚きました。
そんなセデッテかしまは、地元の農家さん採りたての農作物や地元の農家さんと企業が開発した6次化商品など、「地元のもの」を取り上げることに力をいれています。特に6次化商品コーナーには、地元で採れたものを使った調味料やジュース等々ユニークな商品が並んでいました。

また、入口に等身大の甲冑をきて馬にまたがったお侍が出迎え、地域の伝統のお祭りである「相馬野馬追い」について紹介しているホールや木目のテーブルとイスが居心地よく寛いでしまう休憩スペース、美味しく多彩な食事が楽しめるお食事処があります。お食事処では和洋幅広いメニューが並び、地元のB級グルメとして有名ななみえ焼きそばが、相馬野馬追を思わせる馬がデザインされたお皿で提供されるなど、楽しい工夫を感じます。どの食事も美味しいお食事処での私の一番のおすすめは、クレミアというソフトクリームです!コーン部分がクッキーになっており、アイス部分とマッチしてとても美味しく、食べると幸せな気持ちになります!

地元のお祭り「相馬野馬追」を紹介するホール・人で賑わうお食事処・地元の人気テナント

そして地元の人気店のテナントが並んでいるエリアは、いつもお客さんが並びます。
今回、私たちが実際に頂いたのは、やまさんのジェラート!おいしい青果店として有名ですが、キャラメルやコーヒー味など、様々なフレーバーがあり、とても美味しかったです。他にもたこ焼き屋さんや山賊焼のお店などもあり、セデッテ鹿島の人気の理由の一つなんだろうなと感じました。
 そして「セデッテかしま」は、いつも沢山のお客さんで賑わっています。県外からのお客さんも多いように見えました。
小川さんの、「まだまだこれからです。県外のお客様へのアピールの強化が課題です。」と力強く話す姿からこれからのセデッテかしまの飛躍が楽しみになりました。

〈高校生へのメッセージ〉 

                            (舟山碧人)
最後に小川さんから、私たち高校生に向けてのメッセージを三ついただきました。
●「客観的に物事を見ることを大切にしてほしい。」
小川さん自身がこれまで多くの接客業を経験し、体感し体得した言葉です。またこの言葉に付け加えて「相手とのコミュニケーションをとるためには自分を押しすぎず他人の意見を受け入れる。」ともおっしゃっていました。自分も常日頃から感じていたことを小川さんが言葉にしてくださったので、思わず身を乗り出した言葉でした。  
「困ったら周りを頼ることが大事。」
私たち高校生は問題や悩みに向き合うことがたくさんありますが、そんなときでも周りにはいつでも親、先生そして友人といった頼れる人がいるということに改めて気づかされました。
「何事も経験!」
大学時代にたくさんのアルバイトを経験していた小川さん。大学時代を一言で表すと「アルバイトを通して、たくさんの方々とかかわる経験ができた。」と語ってくれました。失敗をするのが恥ずかしいと思って行動に移さないより、まずは「やってみる!」ことを意識すること。そこで失敗しても「成功へつながる鍵を得ることができるから大丈夫。」と前向きに物事に挑戦していこうとの気持ちを強くしてくれる言葉です。
 何事もまずは挑戦し、たくさん周りに頼って、自分のこれからの未来をより良いものにしていきたいです。

最後に小川さんを囲んで集合写真

〈編集後記〉

今までの経験を「セデッテかしま」の仕事に活かしている小川さんから、自分から動き、経験していくことは自分の糧になることを学びました。
小川さん、本当にありがとうございました。

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