ラジオドラマ製作裏話第3章~『アップデート』について

0はじめに

こんにちは、夢水です。
さて、昨日新作の第5話を更新しましたが、読んでいただきましたか? 少しずつ新作も中盤に入って参りました。
そして、Twitterのほうでも宣伝したように、明日いよいよラジオドラマの新作も公開となります。そちらについては特集記事として掲載しますのでお楽しみに。
さて、今日もラジオドラマの過去作品についての裏話です。今回取りあげる作品は、『アップデート』という、公開されているものでは最新の作品についてです。気になった方は末尾のリンクからご視聴ください。


1 あらすじ

コロナ禍を経て数年。インターネットの需要がますます高まる時代の中、突然ビジコミというIT会社のネットサーバーが、コミテックと名乗るハッカーにハッキングされ、インターネットを使い続けるとスマホが発火して使用できなくなるというウィルスが、世界中のインターネットサーバーに万円するようになる。舞台はそんなクリスマス。政府はウィルスの万縁を食い止めるため、日本のインターネットを切断する『オンライン緊急事態宣言』っという思い切った措置に踏み切る。そして、コミテックによって5人の若者が突然呼び出される。5人はネットが使えない中で、どのように困難を乗り越えていくのだろうか。そして、世界のネットの安全は守られるのだろうか…。インターネットがより重要になったコロナ禍だからこそ見て欲しい作品。


2 製作のきっかけ

話は、以前記事に取りあげた、『アナタが主役のワンカット』作成時に遡ります。ある日収録をしようとすると、収録に使っていたオンラインでのコミュニケーションツールが突然使えなくなり、断念したことがありました。そのあとよく調べてみると、その日は世界規模でネットが不安定になっていたことがわかったのです。っわたしたちは、オンラインで何かをすることの落とし穴に気づきました。つまり、一つのサーバーが不安定になったり、アクセスが集中したりすれば、その時点でオンラインでの活動は出来なくなると言うことです。そんな思いを何か作品に出来ないか。そういう提案を監督からいただき、執筆することになったわけです。


3 欲張った設定

この作品は、ちょうど11月下旬から製作を始めたこともあり、クリスマスをテーマにした作品に出来ないかということで話を進めていました。つまり、インターネット世代の弱点とクリスマスという二つの事柄をどう結びつけるかということがちょっとした課題になりました。なんとか作品として形にはなりましたが、クリスマスにちなんだ話なら、もっと夢のある者にしたらドウなんだというご意見もありました。ネット社会の問題点だけを表すなら、もっと踏み込んだ議論が出来たかも知れません。
ただ、そんな欲張った設定でも一番こだわったのは登場人物の名前です。全員をご紹介することはしませんが、キャラクターの名前の中に、クリスマスの要素、もしくはインターネットの要素を組み込むことができて、それはすごく満足しています。ぜひ作品をご覧になって、名前にどんな意味があるのか考えてみてください。


4 ネット世代ならではのキャラ設定

今回重要視したのは、もちろんクリスマスということもありますが、やはりネット社会の弱点について考えることです。そこで、最近のネット世代を象徴するようなキャラクターをメインの登場人物としました。例えば、今回のお話の主人公はシステムエンジニアです。さらには、ユー中バーを目指す女子高生、ネトゲをやりこんで現実世界に居場所を見いだすことの出来なくなった女性、マッチングアプリで知り合ったアメリカ人男性と恋仲に落ち、アイドルオタクになっている女子大生、ウェブで小説を書きながら生計を立てている吃音の男性、オンライン授業を受けながら時代の先端を悲観的に捉えようとする男子大学生、さらにはハッカーと、必ずキャラ設定にはネット世代ならではのキーワードを入れるようにしました。これらのキャラクターの中に、あなたの面影を探すことも出来るかも知れません。

5 コロナ禍の風刺

今回もう一つ重要なテーマとしたのは、現実世界のコロナ禍に起こっている様々な出来事を作中で見せると言うことです。だからこそ、事件の原因はネットにウィルスが万縁したこと、そして最終的に政府がいきなり、『オンライン緊急事態宣言』なる滑稽な製作を発表して国民が困るという描写を入れました。そして、それをネット社会の問題と結びつけたのには、コロナ禍によってみんながインターネットにばかり頼っている昨今の状況を風刺する目的があります。
基本的に人との接触を避けることが、感染拡大を避けるための重要な方法です。そのためには、オンライン化をすることで基本的な課題は解決されるでしょう。しかし、誰がオンラインは安全で安心で確実なものだということを保障できるでしょうか。
さらに、コロナ禍では人間の味方をしてくれたはずのインターネットが、コロナウィルスさながらの未知のウィルスに襲われるという設定を通して、今の自分たちの状況は本当に正しい状況なのかということを多くの人たちが考えられるように心がけました。つまりこの作品は、かなりの意味で議論を呼ぶ者として作ったのです。むしろ議論が白熱したほうが、作者としては狙い通りなのです。


6 作者の代弁者としての悪役

この作品を作っていて改めて感じたことがあります。それは、物語に登場する悪役というのは、作者が読者に対して伝えたいことを作者の代わりに体現してくれる存在なのではないかということです。少なくとも、私は今回、ウィルスを万円させた悪役(ここでは誰が犯人なのかは伏せますが)を描くときには、自分の思いをその悪役に託しました。その悪役に託した思いというのが、上記のセクションに掲げたコロナ禍を風刺し、社会を批判的に捕らえて欲しいという考え方なのです。
この1年は、「オンライン○○」とか、「バーチャル○○」という言葉が流布した時代でもあります。それがまるで全てを解決してくれる魔法の言葉のようにうたわれているのです。それなら、その解決策を奪ってしまおう。それが悪役の狙いでアルト同時に、作者が実験してみたかったこと、そして作者が実際に経験したことなのです。


7 『アップデート』というタイトルに込めた意味

去年、「新しい生活様式」という言葉が流行した頃、「スマホがアップデートするみたいに、新しく気をつけなきゃいけないことを守って、生活をアップデートさせていけばいいよね。」と知人が言っていました。
つまり、全てはそれに尽きるのです。何か社会課題があったなら、それの犯人捜しをしたり、過去のやり方が間違っていたと否定したりせずに、社会課題の解決策を取り入れつつ、変わらない自分という存在を受け入れて進化させていくこと。これなくして、私たちの人生は豊かにも鳴らなければ平和にもならないのではないでしょうか。こういう危機が迫っていて、そのためには今持っている者を全て新しい物に変えてしまえ。そう早合点しないことが大切です。チェンジではなく、アップデートとしたのはそのためです。


8 おわりに

ここまで読んでいただいてわかるように、この作品は、コロナ禍でいろんなことに制限が付いたこの1年の私の鬱憤を全て作品につぎ込んだという、言うなればストレス発散的な作品かも知れません。まぁそれは誇張だとしても、きっと今何かしら我慢をしながら生きている人がこの世界の大半でしょう。そんな人たちにはぜひ見ていただきたい作品です。
明日にはいよいよラジオドラマの新作公開が行われます。そちらもぜひお楽しみに。
それでは今日はこの辺で。いい夢見てね。

https://youtu.be/hfF5mwP3zxU

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?