ラジオドラマ製作裏話第2章~『アナタが主役のワンカット』について

0 はじめに

こんにちは、夢水です。昨日は投稿をおサボりしてしまいましたね、すみません。
今日も、一昨日の記事に引き続き、いままで私が脚本担当として携わったラジオドラマの脚本製作裏話を書いていきます。今回取りあげる作品は、去年の夏に作った、『アナタが主役のワンカット』という作品です。記事の最後にリンクを記載しておきますので、ぜひそこからご視聴ください。


1 あらすじ

舞台はとある総合大学。小説家を目指す女子学生、丹坂文乃(ニサカフミノ)は、ある非、ラジオドラマを作らないかと、彼女のファンを名乗る男子学生から声を掛けられる。最初は断るつもりだった文乃だが、ある人物の一言から企画に関わることになる。文乃の視点で物語は転回するが、役者、監督、編集担当、悪役、教授など、様々な視点にフォーカスが当てられた作品になっている。学生たちのラジオドラマに込める熱い思いが、時にはぶつかり合い、時には励まし合い、少しずつ形になっていく。これは、アナタが主役のワンカットを紡ぎ出す夏の青春物語。


2 製作のきっかけ

この作品の脚本を執筆したきっかけは以前から自分の創作や執筆に関わる思いを何らかの作品に残したいという思いがあったからです。そこで、少し前の記事でも紹介した、高校時代のラジオドラマ製作のときの記憶を思い出しながら、それを形にしたいという思いが芽生えたため、そんな作品を作ることにしました。至ってシンプルな理由でしたが、なかなかの作品に仕上がりました。


3 メタ的要素

この作品を一言でまとめるなら、「ラジオドラマを作るラジオドラマ」となります。これはメタ的要素のある作品と言えます。つまり、「言語を学ぶための言語」とか、「アニメを作るアニメ」とか、「ゲームを作るゲーム」とかと同じ類のものです。今回は、いわゆる、その「メタ」の中身である、ラジオドラマの中のラジオドラマの脚本も作る必要がありました。それは、前から私が作っていた素材があったので、それを使って作りました。あくまでストーリーの中では、丹坂文乃が作ったと言うことになっていますが、実際は私、夢水が書いた脚本です。ちなみに、その中のラジオドラマも、いずれそれ自体で成立する作品として製作予定です。


4「メタ的要素」の理由

なぜメタ的要素のラジオドラマを作ろうと思ったのか。その理由は、上記のような、ラジオドラマを作った頃の記憶を形にしたいという思いだけではありません。メタ的要素の作品にすることで、ラジオドラマを作っている人たちの考えを視聴者に届けられるからです。
すなわち、私は脚本担当として、ラジオドラマを作るときにどんな楽しさがあるのか、役者の人たちとどう関わっているのか、自分の脚本とどう向き合っているのかということを、なるべく丹坂文乃という小説家を目指す女子学生に投影させる形で書きました。もちろん、私と丹坂文乃の性格は完璧に一致していないので、生き写しというわけにはいきませんが、彼女に私の思いを託すことが出来ました。
また、一口に役者と行っても、ラジオドラマへの向き合い方というのは実際のところ様々です。私がいままでにラジオドラマ作りで関わった人たちの中には、自分が声優に憧れているので、遊びではなくて真剣に演じたいという人もいれば、憧れてはいるけれど声優になるつもりはないのでただ楽しんでやりたいという人もいれば、ただ誰かになりきることが好きだと考える人もいれば、暇だからと言う人もいれば、それは様々です。そのような多様な役者像を、様々なキャラクターに投影させて描きました。
また、改めて強調することでもないですが、ラジオドラマだけでなく、こういう映像や音声の作品は、編集やデザインを作る人たちも主役と言っていいほど活躍してくれます。しかし視聴者と近い距離にいるのは、縁者や監督であることが多いです。もちろん、この人の作る映像がきれいだからこのアニメを見るなどというふうに決めている人もいるかもしれませんが、大抵、音響や映像担当、サントラに注目して作品を楽しむ人は少ないです。しかし、彼らの存在無くして、作品は作品として成立しません。そのため、この作品では、編集担当や音響担当に注目するシーンも設けました。
そして、こういう作品には悪役も必要と考え、生産性や現実性などを追求して、ラジオドラマなんてやるべきではないと考えるような悪役も登場させました。この悪役は、悪役であると同時に、ラジオドラマについて全く知らない視聴者としての目線も投影されています。
この作品は、私がラジオドラマしか作ったことがないのでラジオドラマというコンテクストで描きましたが、それだけでなく、こういう芸術作品はたくさんの人たちの手によって支えられ、その人たち一人一人が、たとえ下っ端だろうと、主役になり得るという思いを込めました。


5「アナタが主役」

でも私が伝えたかったのは、もっとスケールの大きなお話です。一人一人が主役になるのは、芸術作品というコンテクストに限定されるものではありません。人生というもの自身を映画に例えて、あなたが主役なんだと説く歌や本がよくありますが、私の考えもそれに近いものがあります。「人生はアナタが主役です」。それは簡単に口にできるけれど、実はすごく難しいことです。自分が主役なんだと思っていても、他人の言いなりになったり、生きる希望をなくしたり、暇を持て余したり、自分を責めたりする人は多いでしょう。私自身が、自分を責めたり他人の評価を必要以上に気にしたりするので、その気持ちは痛いほど分かります。
でも、それではいつまで経っても人生というドラマは前に進みません。自分が自分でなくなっても、自分を見失っても、そこにいる自分という役柄を全うしてこそ、アナタが主役の人生を生きることが出来ます。私たちは、この世に生を受けてから、胸に付けられたそのカメラが壊れるまで、ずっと、あなたが主役のワンカットを生きているんだ。そんな思いが、この作品の根底にあります。


6今後の展望

以上読んでいただければ分かるように、この作品は、脚本的に様々な思いが詰まった作品です。ラジオドラマに携わる人々に平等にフォーカスを当てようとすると、たぶんシリーズ物にしなければ終わらない長さになってしまいます。そこで現在、この『アナタが主役のワンカット』のノベライズ版を執筆中です。完成がいつになるか分かりませんが、必ず書き上げて公開いたします。そのときは、ドラマ本編と合わせてお楽しみください。


7 おわりに

以上で、『アナタが主役のワンカット』の製作裏話を終わります。興味を持たれた方は、ぜひ下のリンクを触ってみてくださいね。
明日はおそらく新作を更新できると思いますので、どうぞお楽しみに。
それでは今日はこの辺で。いい夢見てね。そしていいワンカットを。

https://youtu.be/IIJ50VQNHFg

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