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儚き光のラプソディ感想〜不倫と戦争と仁義〜

はじめに

風間俊介さんは「ジャニーズの異端児」と呼ばれてきた方だ。
私が風間さんの存在を知った時、すでに彼は俳優、タレント業を中心に活動しており、私は彼が「アイドル」をしている姿を見たことはほとんどない。ジャニーズタレントが集まるカウントダウンコンサートにいたのも年男の時くらいだったと思う。だから風間さんは世間一般的にも自認としてもアイドルではなくずっと俳優・タレントなのだろう。しかし私は風間さんのことをアイドルとして好きになったし、これからもそう思っていると思う。

感想

儚き光のラプソディは「苦しみがあったらそのまま進み続けるのではなく、一度立ち止まって誰かを頼って、また現実と向き合って進んでいこう」という内容…だと思う。
私はいまいちこの話にピンと来なかった。個々のキャラクターが魅力的で個性的だっただけに、戦争の悲惨さを伝える内容が加わった時に一部のキャラクターが話から浮いているように感じられてしまった。

物語は孤児院出身の青年歩絵夢(ぽえむ)が白髪の老婆すずと白い部屋で邂逅するところから始まる。孤児院の職員がそんなキラキラネームつけることあるんだ?自分の過去の話を話しているうちにその白い部屋には人に隠したい秘密や後悔を持った「現実から逃げ出したい」人々が集まり、それぞれの秘密が明かされていくという内容だ。奇抜な服を着たサラリーマンのSJ、その友人の甲斐、船長をしていると言うマット、人気騎手の仁義、そして戦争の舞台をしていたという虎吉。彼らの生い立ちや秘密が語られていく。

ここで集められた人々の秘密というのが後々さらに大きな謎解きにつながるのだが、一部のキャラは「この人は物語の繋ぎのために存在しているのではないか?」と思わされるような秘密だった。
ポエムと仁義(風間俊介さんが演じている)は語る罪や後悔が重い上、かなり重要な繋がりが判明する。すずと虎吉も後半に戦争の悲惨さを語る上で重要な役割を果たすので分かる。上記の人たちの繋がりや秘密が深く重かったからこそ、マット、SJ、甲斐が若干ミスマッチなキャラクターをしていたなあ…と感じた。

マットは未来人の作家で大嘘つきという設定、「逃げ出した」と思った理由はよくわからなかった。というか、話していなかった気がする。最後まで何が本当か嘘かわからないようなことを話し続け、最後に未来の危機を伝えて去っていった。「未来が平和になるかは今を生きる君たちにかかっている」というメッセージを伝えるために選ばれたのかもしれないけど、逃げ出したいことはあったのか…?最後まで分からなくて、でもきっとそこが魅力なんだろう。彼は本当に全く物語の根幹には関わってこず、ついた嘘がすべてバレてからは開き直っては他のキャラにいじられるという役回りだったから、本当に最後までよくわからなかった。

SJと甲斐に関しては彼らの部分だけ倫理が大崩壊していて逆に面白かった。二人とも割といい歳したオッサンだが、SJは甲斐の妻を、甲斐はSJの娘を愛してしまう。しかも甲斐に関しては娘の方から甲斐に恋しているのでまだ納得できるが、SJと甲斐の妻は普通に不倫だし、結構やることやってるっぽいし。そして彼らが現実から逃げ出したいと思っていたのはそれぞれが恋を諦めて女性を振ったからなのだが、最後では彼らは仲直りをして、それぞれ新しく愛する人の元へ向かうのだ。

結局あんたら親友の娘・親友の妻と付き合うんかい!!!!!

大声でツッコみたくなった部分だった。いや「愛に年齢も障壁も関係ない」ってことなんだろうけどね?!良いと…思うけど…まあやっぱりちょっとキショいかなぁ…と思わされた部分だった。

次にすずと虎吉。すずはお茶目なおばあちゃんかと思いきやたまに深いことを言ったりみんなを導いたりする役目なんだろう。虎吉は始め他の人たちの様子を見て「戦争の舞台をやっていた」というが、途中から自分が現在進行形で戦争をしている軍人であることを明かす。そして日本は負けるという事実を伝えられるがそれを受け入れることができず、自分の役目は敵を一人でも多く殺すことだと言って戦場に戻ってしまう。
虎吉はあの鈴木福くんが演じていたのだが、私の知っている福くんとはまったく変わっていた。まず歌も演技も動きも完成されている。あのマルマルモリモリを踊っていた姿しか知らなかったが、声がはっきり出ているし怒声も上手いしバク転しているしでびっくりした。戦場での殺陣も迫力があり、あの福くんがこんなに立派な青年に…と若干しんみりした(ほぼ同い年なのに…)。

この二人とすずの過去の思い人を通じて後半〜最後にかけて「戦争の悲惨さ」が語られるのだが、なんというか結構物語の展開がいきなりすぎてあんまり入ってこなかった。戦場に未来ある若人を投入したことの愚かさ、若人が「自分は国のために命を失ってでも敵を一人でも多く殺す」と信じさせられる戦争の恐ろしさ、戦いがいかに無駄なことだったかというメッセージを伝えたいことは伝わってきた。ただそれを伝えたいあまり他の人の過去や物語が浮いてしまっているように感じた。あと戦争のシーンで若人に命を捨てさせるような思想が愚かであることは明示されていたけど、結局その考えや行動が個人の責任、人々の罪に委ねられてしまっているように感じて、結局悪いのって個人個人の問題じゃないと思うんだけどな〜と思ったりした。

ただ最後のシーンですずさんが「私はもう現世の人々に絶望した。だからもうこの白い部屋から出るつもりはない」と言った後の展開が私は好きだった。てか福くん、かっこよすぎ〜。舞台の後、Twitterで福くんフォローした。

そしてポエムと仁義。ポエムは孤児院出身で正直者、金持ちの家に養子として迎えられて人を助けるようになった。しかし人に感謝されることに固執しすぎて自分が破産するほど寄付を続けてしまった。自分の「他人からの感謝」への執着に嫌気がさして白い部屋にたどり着いたようだった。しかしポエムの過剰な自分が正直者であるというアピールを掘り下げると、彼は昔自分が養子に選ばれたいがためにもう一人の最終候補を手にかけたことを明らかにする。彼は最終候補者のもう一人の通る橋のロープを切り、彼が川に落ちて行方不明になったことをずっと後悔していた。
一方仁義は人気騎手、言葉遣いや態度は荒くヤンキーのようだが、身長が低く童顔で実は優しい一面がある。そしてなぜか動物と会話することができる。仁義には過去の記憶がない。仁義は幼少期捨てられていたところをヤクザに拾われ、彼らの砦で育てられたのだという。しかしそのヤクザたちがある日全員いなくなってしまい(おそらく他との戦いで壊滅した)一人で生きることになり、騎手になったのだという。

ポエムと仁義に関しては個人としてもコンビとしても完全に、

爆萌え〜〜〜〜!!!!!!!!!

この一言に尽きる。

ポエムに関しては「人を助けたい気持ちが強すぎて自分が破滅しそうになる」という、私の中では珍しい性格と問題を持った人物でかなり興味深かった。己の善意が破滅に繋がることは現実ではよくあることだが、物語では基本善意を持った人物は実は悪役か普通にいい人の二択であることが多い。そして善人の愚かさは誰にでもいい顔をする部分で描かれがちである。ポエムはその「善人」とう枠にとどまらず自身の善意がもつ欲深さを認めているのが大変可愛かった。ポエムは本当の意味で愚かなのだ。ポエムは
・正直者でいることを自分に強制している
・人から感謝されたい自己承認欲求を抑えられない
・自分の善が欲望の表れであることを分かっている
そんな欲まみれな善人であることを自分で分かっているところが良かった。ポエムのその人助けは一般的には「偽善」と呼ばれるのだろう。しかし白い部屋に集められた人々はそれを決して言わなかったし、私も偽善ではないと思う。というか偽善だとしても、ポエムが破産したとしても誰かが救われたことは事実なのだ。まあポエムはもう自分のために資産を築いて生きていくべきだと思うし、人によってはポエムのこの「推し活」で自分の命をすり減らしていくオタクのような性格を嫌う人もいると思うけれど、私はそんなポエムのことが愚かで可愛らしいと思った。

仁義に関してはある意味一番「良い人」だと思う。言動こそすぐ「殺すぞ!」とか言ったり人のことすぐ叩いたりと悪い人っぽいが、多分非倫理的なことは一度もしていない。名前の通り仁義と人情の男、だと思う。
例えば彼の物語は彼の乗っている馬とのコミュニケーションを中心に進むが(さっきも言った通り彼は動物と話すことができる)、彼はいつも馬のことを気遣う描写がされている。馬の体調や怪我を慮り必死にレースで戦っている。私は根性のある可愛い男が好きなので、童顔低身長キャラ(公式)かつめちゃくちゃ漢気のある仁義にメロメロだった。しかも記憶喪失でヤクザに育てられて自分で生きてきたという設定モリモリ人間だ。最初に衣装の写真を見た時は奇抜すぎて不安になったが、風間俊介さんは最高にかっこいい。だいちゅき〜。

「儚き光のラプソディ」公式Xアカウントより

そして彼の優しさはしっかりと人間にも向けられる。後半で実は仁義はポエムと同じ施設出身であることが判明し、ポエムが手にかけた養子の最終候補者こそが仁義だったことも分かる。ポエムは必死に仁義に謝り、俺を許さないでくれと言う。仁義はそこでポエムに「今までそんな秘密を抱えていて辛かっただろう」と言い、ポエムを抱きしめるのだ。そしてポエムのおかげで自分は動物と話せるようになったし自分の生きる道を見つけられたと感謝さえする。実際仁義がどう思っていようとこの他者への優しさを貫く仁義の態度に再びメロメロになる私。終わった後の私には「仁義くん、かっこいい…♡」という気持ちだけが残るのであった。

最後に〜風間さんメロメロ学部を添えて〜

総合的にこの舞台のストーリーの個人個人のエピソードは浮いているし結局どうまとめたかったのかよく分からなかった。それは私がこの舞台を一回しか見ていないからだし、舞台を見るのに不慣れだったこともあるだろう。あとやっぱりSJと甲斐が嫌。
しかしマットの演者の演技は好きだったし、ポエムくんの性格は爆萌えだったし、風間俊介さん演じる仁義は最高にかっこよかった。

私の風間俊介さんの好きなところは頭の回転が早くバラエティ適性があるところ、オタクなところ、そして何よりも「異端児」なところだ。風間さんは「(旧)ジャニーズの異端児」と呼ばれ、ディズニーのヘビーオタクとしても俳優としても遊戯王の主役声優としても活躍してきた。風間さんは好きなものを極め、それがいくつも仕事につながっている。風間さんのそんなオタクぶりも他のジャニーズタレントとは違う道の切り開き方も私は大好きだ。私が風間さんを舞台で見た回数は最近好きになった侍を見た回数よりも少なく大茶の間でしかない。しかし風間さんは確かに私が初めて自身の意思で好きになった旧ジャニーズアイドルであり、これからも私の好きな「アイドル」なんだろう。

「アイドル」の定義は「恋愛感情を持つ熱狂的なファンが売り上げのメイン層を占める歌手・タレント・俳優」だそうだ。
つまり「アイドル」の概念には「歌手・タレント・俳優」が内包されているのである。昨今は「歌や踊りなどのパフォーマンスを優先しているから」という理由で「アイドル」とは名乗らずパフォーマー、ダンサー等と名乗るアーティストグループも少なくないが、彼らはある意味で「アイドル」なのである。風間俊介さんは世間的に見ると「タレント」であり「俳優」だが、私から見れば彼は長年多くの人々を魅了してきた立派な「アイドル」だ。そして私は俳優の風間さんもタレントの風間さんのことも大好きだ。もう風間さんはジャニーズの異端児と呼ばれることはないが、これからも彼の旅路をひっそりと応援していきたい。


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