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80~90年代最高のライヴバンドとしてのTM NETWORKの話

プロフィールに「音楽とゲームとVimを愛する」と書いてあるにもかかわらず、ここで音楽の話をしていないという相変わらずのアレだったのでそろそろそんな話を、と思ってたんですけど、まぁこの話筆が重くなるんです僕にとっては。現状の記事でもキュレーション行為に対する不満を口にしてる僕がアーティストレビューですよ?そんなことやって何の幸せになるんです?少なくとも僕が幸せになることが大前提で、読ませる文章として人を幸せに出来るものを書かないとならない。そんなこと出来るんですか?出来たらいいですね。

ちょっと昔のバンドの話をします。今僕が音楽が大好きな17歳を名乗る原体験のバンドの、そういう切り口では聞いたことがない話です。

打ち込みバンドのライブという矛盾

「ちょっと待ってくれ、ライブバンドの話だぞ。打ち込みじゃんTM。もっと、なんか、居るだろ?」という話になるかもしれません。そうかもしれませんがちょっと思い出してほしいんです。打ち込みのバンドがスタジオクオリティの事をステージでも出来るようになったのって、少なくとも小室哲哉にとってはglobeでギリギリ、恐らく本当にスタジオとステージを自由自在に行き来できるようになったのはQUIT30期のTM Network以降だと思います。
じゃあ20世紀のTMの頃はどうやっていたのか?ライブのアレンジが変わります。この際、日詰さんが居るのにシンセベースの曲をやらなくちゃいけない、ベーヤンが居るのに打ち込みドラムの曲をやらないといけない、葛Gが居るのにギター聞こえてない曲をやらないといけないのがTM Networkというバンドです。この時のTM Networkは最強のライブバンドに変貌します。演奏技術じゃないです。そもそもスタジオ版に添えないと分かりきって滅茶苦茶してきます。ツアーになると幕が開けないとなにをしでかすか分からないバンドに豹変するのがTM Networkなんです。

Crazy for you

20世紀のTMN最後のアルバムですが、当時のエレクトロミュージックのリファレンスとして最適なのが「EXPO」だと思っているのですが、今聴くと小室哲哉がハウスミュージックとどう膝を突き合わせようとしていたかが窺い知れる感じです。トラックとしてのそれはともかく、ハウスビートの上でウツが彼女とじゃれつく当代最強のアイドルバンドの風格が漂う激アマトラックです。こんなん当時のファンの女の子が聴いたらどうなってしまっていたんですかね?
で、この曲をツアーでやろうとすると……この時のサポート編成は葛城哲哉(Gt.), 阿部薫(Dr.), 浅倉大介(Syn.)です。

すいません、出しちゃいけない動画へのリンクが続きます。フェアユースなので。フェアユースなので何卒……

EXPOリバースメッセージからの実質1曲目です。鼻息荒くして待ってたおねーちゃんたち全員がその瞬間「1万人の中のひとりウツのオンナ」になります。とんでもねー演出しやがるなと思った瞬間ウツがこれで出てきちゃうので、度々この頃のサブカル女子として産まれなおして自分も「1万人の中のひとり」になりたかったと思うことがあります。
それはさておきで、スタジオ版に添うなら本来フロントマンの小室哲哉が(TM NetworkにおいてはKey.はフロントマンです)ピアノパートを持つのが一番自然というか、これをステージで弾きたくないキーボーディストは居ないはずなのですが、Mind Controlを手にカツGとアジテーター役に回ります。これがTMのライブなんです。この曲がハウスだった面影がもうありません。ちなみにこの時のピアノは木根さんに回っているっぽいです。木根さんとギターの複雑な関係はあちこちで言われるやつなので割愛しますが、多分木根さん、ピアノに関しては哲っちゃんより巧かったんじゃないですかね?

Dive into your body

https://www.youtube.com/watch?v=EfYGV7lcwZs

そもさTM Networkが突然ダンスビートに持っていかれたルーツの曲がこれだと……厳密にはDressがトリガーなので話は深くなるんですけどまぁ、要はここからライブとステージをどう繋ぐかを考えないとならなくなったんだと思います。スタジオ版はパリッパリのダンスビートになっていて……ここまで現代フロアビートと乖離してくるとこの頃の哲っちゃんは完璧にダンスミュージックに追いついていたなと思うんですけど、実際どうだったんでしょう?
それはさておきステージ版です。本当なら宇都宮体操にキャロルが巻き込まれるCamp FANKS版で一笑いしてもらうのがいいのかもしれませんが、Last Groove版です。サポートメンバーは葛城哲哉(Gt.), 北島健二(Gt.), 阿部薫(Dr.), 山田亘(Dr.), 久保こーじ(Manipulator)。おいこの編成でダンスミュージックやるのか?

……というわけでダンスミュージックになりません。幸い元々松本孝弘が超前のめりなギターを弾いてるのでそれを前面に出しています。元がダンスビートだった感触がもうありません。……この日ってTAK来てたんじゃなかったっけ?まぁいいや。ステージありきというか、アレンジありきだからこそTMNのライブってワクワクするんだよなあと思うことがあって、それでスタジオがそのままステージによっこできるQUIT30期以降のTMに僕はあまりワクワクしなかったのかもしれないですけどそれはおいといて、我々FANKSがよくサポートメンバーを広義のTMのメンバーとして受け入れているのはそのあたりに理由があるとおもいます。実際にLast Groove版ではCamp FanksからTMN CLASSIXのExtend '12 versionに継がれたシンセブラスと歌だけになるブレイクをカツGに渡してしまっています。これ、実際にナマで見てしまったFANKSはたまらなかっただろうなと思います。

ちょっと笑い話として触れたCamp FANKSの話もさせてください。ウツ、これ踊った後何もなかったように歌い始めるんですけどこの人の肺活量、おかしないです?

Get wild

FANKSが見てたとしたらこの話でGet wild出した時点でもう分かるし、FANKSじゃないとしたら何も聞かずにステージ版を見てほしいので全て割愛します。

サポート編成はEXPOと同じ葛城哲哉(Gt.), 阿部薫(Dr.), 浅倉大介(Syn.)です。それはそれとしてこの時のTM、アルバムはロックサウンドに全振りしてしまったせいでトータルコンセプトに引きずられてステージの定番曲をすべてロック側に振らないとならなくなりました。余りにもしんどければ今回はやらない、も出来るのですがGet wildはさすがに……と言う事で誰も想定しなかったアレンジが出てきてしまいました。問題児扱いされることも多いバージョンですが、そもそもTMと言えば全部Get wildのアルバムが出てしまうようなそれなので最近はそういう揶揄した話は聞かなくなりました。もう何もかも違い過ぎてスタジオ版から話をつなぐことも出来ません。
ここでもカツGがコーラスを持っているなど、サポートメンバー居てこそのライブバンド、TM Networkの姿がよく分かるのでこの話をしないわけにはいかないと思います。

「副産的」な話 - QUIT30期

じゃあQUIT30期のTM Networkがどういうステージをやれるようになったのかと言うと、先ほどもぼやいた通りスタジオの意図がステージに持ってこられるようになってしまったので、だいたいはスタジオバージョンを尊重しているんですけど、まぁこれはこれでいいと思うんです。追体験できることがうれしいとして向き合うものなはずなので。それはそれとしてパブリックにみられるちょっと変なやつがあります。

サポートも鈴木俊彦(Gt.), Ryu(Dr.)と一新されています。普通のライブバンドというか、Come on everybodyのブレイクも昔からやってるし、と思ったらシームレスに別の曲が混ざってしまいます。ジョーク的なやり方だと思うんですけどステージはステージらしいことをしようという気概は常にあるのかもしれません。
ちなみに機材トラブルは哲っちゃんが仕掛けた演出で、このあと朗々と「ようこそFANKS!」と呼びかけるGive you a beatが来るあたり、本当にライブバンドなんだなぁと思うんです。

さらに(しかも本当の)「副産的」な話

多分この話全然関係ないし話したいだけだからブッ込む話なんですけど……実はTMには諸事情が織り上がった末にトリビュート用の「哲っちゃん抜き」ことSpin off編成があります。この時哲っちゃん直々に代役浅倉大介が指名されていて、更にSpin offになると突然過去の何かを完コピしに行く「超ユルいTM」が見られてしまいます。そもさサポートもカツGベーヤン大ちゃんと……お前らもうそのまま加入せーよという感じです。

あのこれ、Last Groove版ですよね?

我々が木根尚登を「ギターが弾けないギタリスト」と呼んでも一切のリスペクトをないがしろにしない理由の究極がこれです。
なんで日詰パートがそんな簡単にこなせちゃうのか……

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