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監督道  ~テレビマンがプロ野球の監督になったら~

【監督道1回オモテ】
茨城アストロプラネッツ監督、伊藤悠一(35歳)。

昨年、監督トライアウトを経て、茨城アストロプラネッツの監督に就任。テレビマンから異色の転身を遂げた。

静岡県出身で縁もゆかりもない茨城にやってきた。

テレビマンから監督へー。

指導者経験ゼロからいかに選手を育成し、チームをまとめ、球団に勝利を導くのか。
前職で培った経験をチームにどう活かしていくのか。

伊藤監督の1年を定期的にお届けします。

【監督道1回ウラ】

キャンプ初日、初めてのミーティングで監督が伝えたかったコト


2023年3月9日(木)@茨城県笠間市

「トライアウト」というこれまでに例のない選出方法でルートインBCリーグの茨城アストロプラネッツの監督となった伊藤悠一。

指導者経験ゼロ
元NHKのディレクター

異色中の異色ともいえる経歴だが、これまでディレクターとして培ってきた「マネジメント力」、そしてプロ野球界における新たな化学反応を期待されて茨城アストロプラネッツは起用を決めた。


そんな伊藤監督がキャンプ初日、初めてのミーティングで選手に伝えたかったコトとは何だったのだろうか?

「夢を追える時間は限られている」


中学校のころから伊藤少年が描いていた夢。

それは、TVのディレクターと野球の指導者だった。

大学卒業後、NHKに入局し、TVディレクターの夢をかなえた。
そして、2022年、茨城アストロプラネッツが監督トライアウトを実施することを知る。

「TVディレクターの仕事もやりがいを感じていたし、楽しかったので正直、悩みました。おそらくどちらの道を選んでも後悔することは分かっています。あえて監督の道を選んだのは、将来が見えないからですね」

TV局にいれば、5年後も楽しい仕事も続けられる可能性は高いし、安定した生活も送れるイメージもあるだろう。
その一方で、監督は単年契約。5年後に監督を続けている保障はどこにもない。

「将来の自分をイメージして、先が見える方を選びなさい」
きっと学校の進路指導の先生ならそう言うだろう。

しかし、伊藤監督はあえて真逆を選んだ。

「将来が見えないなら見えるように頑張ればいい。見えないからこそ得られるものもあるはず。将来をどう構築していくか、自分で考えて行動していけばきっと満足いく人生が送れると思うんです」

小さいころに描いた野球指導者の夢。
今、このチャンスを逃したら次はないかもしれない。
夢を追うチャンスは限られている。

監督に就任し、選手に伝えたかったのは、自身の経験から沸き上がった思いでもあった。

「独立リーグにいる選手にとって、NPBで活躍することはかなえたい夢の一つだと思います。NPBで活躍するためには、独立リーグにいるこの1年をどうするかがカギになる。10年後も追える夢ではない。夢を追える時間は限られています。自分にとって今、何が必要なのか、1日1日を大切にして夢を追ってほしい」

将来に対して不安を抱いている選手の気持ちはよくわかる。
5年後の将来が見えない気持ちもわかる。
同じ気持ちだからこそ、今は自分自身で将来を作っていくしかない。

自分自身に問いかけるかのように、そう選手に伝えた。

「疑問を持つこと、信じることの大切さ」


20年前だったら、コーチの指導に従って練習メニューをこなしていた。
でも、今は違う。

スマホには、NPB選手のみならず海外で活躍するプレイヤー自身が練習メニューを公開したり、打撃フォームまで動画で教えたりしてくれる。

「たくさん情報があるからこそ、その練習メニューは自分にとって必要なのか、今の自分に何が必要なのかを考えないといけない。一流選手の真似をしてもそれが自分に合っているとは限らない。大事なのは、『なぜ?』と疑問を持つこと。なぜ、その練習をするのか。その練習が自分にどう作用するのか。それを理解し、自分にとって最適なものが見つかったらそれを信じて進むことが大切だと思うんです」


まずは「なぜ?」の気持ちを抱く。
そして、その疑問を解いていくうちに解決する道筋が見えたらその道を信じる。

1日1日を大切にしてほしいからこそ、ただ練習をこなす毎日にはしてほしくない。
疑問を持ち、それを解決するために信じて道を突き進んでほしい。

それが選手の意識を変えると信じている。

「目標」と「目的」の違い


目的は、NPBのドラフトで指名を受けること。
そのためにどうするか、目標を定めること。

目的を達成するために、あなたならどのような目標を定めますか?

チームの勝利ですか?
打率を上げることですか?
打者から三振を多く奪うことですか?

「目的」と「目標」を常に意識する。

意識するかしないかで1年後の自分は変わるはず。

筋肉隆々のがっちりした選手の中にいると、ひときわ目立つ伊藤監督。でもその言葉一つひとつは大きな存在感を放っている。

一人ひとりの目を見ながら思いを言葉にする。伊藤悠一の監督道はこうして始まった。

そして明日、公式戦デビューを迎える。