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プラネタリウムは明るすぎる

プラネタリウムでの解説が、ホンモノの星空の下では通用しない。

この差異を埋めるためには、まずプラネタリウムとリアルの違いを知ることが大切である。

最初に、素人目でもわかりやすい違いとして、そのドームの狭さについて語ってきたが、続いてプラネタリウムの機能面に話は移る。

プラネタリウムとリアルとの差異で、プラネタリウムは1等星→6等星の明るさの差異が少ない、と書いてきたが、実は、投影されている全光量でいえば、明るさはリアルと同じ光量差で投影されている、つまり1等星は6等星の100倍明るい、というのである。

これは僕が実測値を知らずに印象で書いてしまっていた為に、誤った記述となってしまっていたのではあるが、同じような誤りをしている人も多い、のだという。
ここに、プラネタリウム解説員が勘違いしているポイントがあるのだ。
リアルの光量差で表示しているから、リアルもこの延長で見えるはずだ、とばかりに何もその差について穴埋めできていない解説をする解説員ばかりで、プラネタリウム内の解説のプロ、であっても星空や宇宙に係る仕事だとは言わんといてくれ、というクソ解説のいかに多いことか。

プラネタリウムとホンモノのその認識の違いとして、2つの大きな理由が挙げられる。
まずは、プラネタリウムの機能の問題で、星像が明るい星ほど大きくなって、点像ではなくなること。
円盤状の物体の全光度は、点像の物体の全光度より同じ明るさのはずが暗く感じられる。
例えば、それは彗星観測の際に身を持って体感している天文ファンが多いことだろうし、北斗七星の付け根の星と、オリオン大星雲がほぼ同じ光度を持つのに、都会で星のきれいな日、北斗七星は全景見えてもオリオン大星雲は認識できない、なんて所で本来どこに住んでいても確認できるレベルの話でもある。
この部分については、改善に取り組んでいるプラネタリウムもあって、名古屋の科学館のプラネタリウムはその改善された方式、ということになるようだ。また、メガスター大平氏の「FUSION」も、雲の投影、なんて話ばかり先行するが、この部分へのアプローチこそがキモなのだという。

さらに、メガスターなんかに代表される最近のプラネタリウムに特に多いパターンではあるが、1つ1つの星を本来より明るく投影することで、人間の脳が錯覚を起こすパターン、というのも大きな要素である。
そもそもがプラネタリウムというのはドームの中心に投影機が据え付けられ、そのためホンモノの星空と違って、東と西、北と南で星空と自分との距離感が変わってしまう、という欠点がある。
そのため、同じように投影しても、東の空はドーム近くに座ったから6等星まで見えて、西の空は4等星くらいまでしか見えない、みたいなことが発生しうるのだ。
この欠点を是正し、西の空でも6等星が見えるように、実際の星空と比べて、プラネタリウムの星は明るく投影されている。
実際の何倍か、すべての星が明るく写されているのだ。
この影響で、リアルでの明るさの感じ方と違う感じ方をプラネタリウムではしてしまうことになり、そこをどう是正する解説をしていくか、というのは非常に大切なのである。

明るさの差、ということで言えば、リアルの星空で5等星、例えばオリオンの棍棒の先の星と、ベガでだいたい明るさの差は100倍となる。また、0等星ベガと、-5等に達する最大光輝の金星でまた100倍の明るさの差、ということになる。
この2つを同等、と捉えるようには人間の脳はできていない。それぞれに明るさの差がある、というのは分かるだろうが、同じだけの差があるか、というとそう感じない。
極端に言えば、プラネタリウムで光量の差は維持している、というのは、この部分の違いを無視している、ということになってくるのだ。

だから、暗めの星で目立ちうる形、というのをプラネタリウム内で見つけたとしても、リアルでは暗い星すぎて天空の目印として使うには力不足、ということを、解説員は肝に銘じておく必要が出てくるのだ。

例えば、3等星の集まりのからす座なんかもリアルではさほど目立たないし(マイナーな星座を見つけたい、という欲望を叶えるには十分ではあるけれども)、4等星の集まり、みずがめ座の三ツ矢マークに至っては、リアルでこの形を先に見つけろ、なんていう解説員は頭がオカシイレベルとしかいいようがない。みずがめ座の目印、はみずがめ座から水を貰っている秋の星座の唯一の1等星・フォーマルハウトでいいではないか。

プラネタリウムとリアルとの違いを肝に銘じ、リアルに向き合った際に邪魔にならない解説をする。
それが出来ない解説員など、引きこもりの三流プラネタリアンにすぎないのだ。


というわけで、今回も投げ銭仕様で。この下に内容はないよう!!


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