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志賀直哉の原稿用紙

志賀直哉の直筆原稿を見たことがある。

やや太めのペン先でさらりと書かれた文字はその書き心地を想像させて心地よい。ところどころに書き損じなどもあって、一度「ゴーホ」と表記したのを後から全て線を引いて「ゴッホ」に書き直しているところが気になる。「ゴーホ」の何が引っかかったのだろうか。

志賀直哉は自身専用の体裁の原稿用紙を使っていたようで、マス目の枠の左下に記された文字でそれがわかる。専用の原稿用紙を使っていた作家は他にもおり、見てみると大抵同じ左下の場所に名前だけを記したり〇〇(名前)原稿用紙などと印刷してある。志賀直哉の場合はそれが「志賀直哉用紙」となっていた。「志賀直哉原稿用紙」ではなく「志賀直哉「用紙」」である。「文豪、志賀直哉用の紙である。」とでも言いたげな書き方である。志賀直哉らしいと感じた文字列であった。

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