「持っている人」は占星術的に優位なの?
世間で言う「持っている人」というのは占星術的に関係がありますか? 8ハウスはツイていないとか、ディグニティが高いと実力が高いなど、関係ありますか?この質問にメルマガで答えた翌日、複数の反響がありました。
10年前ならアングルに星が集まっている人と答えたかも知れませんが、今の答えはちがいます。いわゆる「持っている人」は、単純に挑戦と失敗の回数が多い。アングルやディグニティとはあまり関係がないと考えています。
もっとも、なにを「持っている」かにもよります。
たとえば一見して華やかな人、逆に目立たない人。よく喋る人とそうでない人。
そうした雰囲気やクセとチャートの間に整合性を感じることはとても多い。これには多くの占星術師諸氏も同意すると思います。
ただ、より本質的な人の資質であったり、真価とチャートはまるで関係がないと考えています。
はたから見て「あの人持ってるよね」という時、
ツイている出来事が表に見えているだけということは多い
その人が社会的に目立つ評価を得ていると、その見え方はさらに強められます。
でも、アンラッキーな出来事や失敗を他人は見ていないし、憶えてもいないという事実を、私たちは考えなければいけません。
世間で言う「持っている」とは、事実の一部を切り出していることが多いからです。
さらに。その人が続けている努力や、試行錯誤、失敗、苦悩について考慮しているでしょうか? 自分の苦労を喧伝する人にかぎって大したことはやっていません。
ですから、本当に興味がある人には直接聞きに行くしかありません。
トライ回数は物理世界で不可欠なこと
トライ回数が多い人の特徴は、失敗の痛みに対して独得の対処方法を持っている。
あるいは、そもそも「失敗」とは思っていない。
やりとげる過程があるだけで、「期待通りにはいかなかった」程度の感覚。
その背景には到達点への目標設定があり、最初から過程(失敗)は折り込み済み。
その過程で何が起きている?
その人の経験値が増え、到達までのカンが働く様になる
ここで言うカンは「感性」「観察力」「経験」の総合力だから、試行錯誤の回数が支えるところが大きい。
実際に6/8/12ハウスに星が集中したり、ディグニティがさして高くない実力者はいくらでもいます。そうした事例を見るにつけ「持っているか」問題は「諦めずに続けているか」に尽きると考える様になりました。
ある売れっ子デザイナーの話〜体験話
(ここから体験談風に文体を変えます)
その人は、ある分野では著名で、一時期は色々な講演でお目にかかった。
制作物の露出も多く、同業からはやっかみと羨望の眼差しで見られていた。
悪い噂もあった。
人から仕事をぶんどることについては悪評が半端ではなかった。
かなりの売上があって、十分に有名なのになんだアイツは!という評価だ。
彼は他人の仕事にも辛辣だったし、事実、口もひどく悪かった。
数人の現場デザイナーを抱え、自分は指示するだけで、ヤツは売れ線のデザインをするビジネスマン。と揶揄する人もいた。
(売れっ子が若手に現場仕事を振るのは、仕事を回すためにどの業界でも当たり前なことだけど、それを良しとしない職人気質の人はいる)
自分も同じ目線で見ていたことがある。
でも、あることをきっかけにして見方を180度改めた。
その人が1年で作る制作物をリスト化すると、作る量が尋常ではないのだ。
プライベートで知り合い、分かったことは寝る間も惜しんで作りつづけていることだった。
しかもそれを30年だ。
自分よりも20歳近く年上で、尋常ではない仕事量。
業界ではデザイナー30代限界説、なんていう流言もある。
そんなことにはお構いなしの人だ。
そこで自分を振り返った。
「彼と同じ努力をしているのか?」
答えはNO。全てに於いて達していない。
であれば、全ての評価を反転させて新たな視点で見つめるしかない。
その日から、彼の貪欲さに対するやっかみを尊敬に変えた。
「十分に売れてるのに、なんでそんなに貪欲なの!?」と思っていた。
でもちがう。
その貪欲さは、かならず苦悩をもたらしている。
いつの世も欲は苦悩とペアだ。
普通なら、苦悩に疲れて安住する場所を探す。
貪欲さが善いと言っているのではない。「凄い」のだ。
凄さは善さを遙かに超える機動力と影響力を生みだす。
性格もキツイし言葉も悪いので、特に親交を深めたいとは思わなかった。
でも、興味が出た。
そして、ある程度仲良くなってから、呑む機会を得て正確な出生時間を聞き出すことに成功する。(当時はまだ占星術師を名乗ってはいなかった)
どんなにすごいチャートなんだろう…
実はすでにその場でドキドキしていて、ソワソワと席を外し、お店のトイレで確認した。(「家に帰ったら見とくね」と嘘をついたからだ)
そしたら、ぜんぜん普通。拍子抜けした。
天体のディグニティは総じて低い。
センスを表す星も普通かそれ以下。
アングルに星はあったけど、それほど重要な天体ではなかった。
ただ、特徴がひとつあった。
凶星とのスクウェアが目立つ、ひと言で言えばアンフェイバラブル(好ましからざる)チャートだった。
その人は「持っている」というよりも、自分を機会に近づけていく努力を惜しまない人だ。
でも、人は外側でしか評価をしない。
今も彼を悪く言う人はいるだろうが、そういう人たちは以前の自分と同じで、彼の貪欲さを恐れているだけなのだと思う。
…
その後、数日か数週間後かは忘れてしまったが、かなりの日にちが経ってから彼からメールが入った。
「で、おれのホロスコープとやらはどうだった?」
正直に感じたことを、かなりの長文で送った。
すると、暫くしてひと言だけ返信。
「たぶんそうだろうなと思ってた」
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