8ハウスが不吉なら蠍座も不吉なの?
質問
2ハウス=牡牛座、8ハウス=蠍座のイメージで憶えているのですが、8ハウスが死や喪失を表す不吉なハウスということは、古典占星術では蠍座も不吉なサインでしょうか?
回答
ハウスとサインの関係はイメージがしやすく、ふたつを似た性質とする考え方は現代の占星術では不可欠です。 確かにこの考え方でいけば、蠍座は不吉なサインということになってしまいます。 でも安心してください。 古典占星術においても、蠍座が不吉なサインという意味はありません。
これには、サインとハウスの出自が異なるという前提が理解に役立ちます。
「サイン」は黄道上を動く惑星の場所を表す区分です 「ハウス」は日周運動(星々が東から昇り、西へと沈む動き)を元にした区分です。
西洋占星術は、星々の位置を「黄道上での動きと、1日に見る天球上の動き」という2つの異なる見方で表します。 そして、ハウスとサインの意味は本来関係が無いという説が現在は有力です。
2つを連結してイメージする、20世紀以降の見方からすれば軽いカルチャー・ショックです。 でも、その前提であれば蠍座(8番目)、乙女座(6番目)、魚座(12番目)が不吉なサインでないことも納得がいくと思います。
ニコラス・カルペパーやウィリアム・リリーの記述で、17世紀頃にはサインとハウスのイメージ共有が始まっていたことが伺えます[1]。
そして20世紀以降、ふたつの関連付けはより堅固になりました。
こうした違いから頂いた質問と似た、疑問や悩みは生まれます。違いや矛盾が気になる方には、融合を試みるのではなく「古典占星術」と「現代占星術」の使い分けを提案しています。実際、古典占星術と現代占星術の間には大きな違いがあります。
ハッキリ申し上げましょう。ふたつを混ぜてはいけません。かならず矛盾に突き当たるからです。そして、その矛盾を解消するために、新たな独自案、折衷案を作るハメになります。その時、(恐らく)両者の良さは失われているでしょう。
古典伝統派の占星術は吉凶を重視し、事象を「判定する」ことに重きを置きます。当然、吉凶の解像度は高く、判定を行うためのルールや基準が数多くあります。極論をすれば、古典占星術の占断規範は惑星の吉凶状態の判別にあると言えます。
一方で、現代占星術は吉凶判断から脱却し、現象をニュートラルに捉えることを目指した占星術と自分は考えています。古典伝統派の人たちは、現代占星術をポジティブ過ぎると批判することがあります。実際はそうではなく「吉凶」というフィルターを殆ど用いないだけです。そうしたところが、古典派から見れば「吉凶に疎く、鈍い」と写ります。でも、はなから重視していないのだから当たり前です。
ここまで、占う基準と目的が違いますから、ふたつを使うのなら、別々に学び、別々に扱うことをお薦めしています。
註釈
17世紀の占星術師ウィリアム・リリーは、サインをハウスの「共同表示体(co-significator)」と呼びましたが、サインとハウスの関連性は、身体の類似した部分を共同で支配していること以上には強調していません。(例:1ハウスと牡羊座は共に頭部を司る)
また、おなじく17世紀、サインとハウスの関連性について、コラス・カルペパーの論調はこうです。
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