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8ハウスの惑星は不吉なの?

質問 『8ハウスが死という不吉な意味とのことで、惑星が8ハウスにある自分としては、悪い意味しかないことに不安があります』

回答

古典占星術の8ハウスは死を表し、損失、支出、悲しみ、不安、恐怖、(冥界に代表される)暗い場所、貧困、毒、光が当たりにくいこと、失われたこと、などの意味があります。 確かにネガティブです!


ここまで不穏な言葉だけを並べ立てられれば、仮に心理的なアプローチを好まなくとも「死」以外の象意を探したり、ポジティブな象意を創出したくなるのも仕方がないと思います。 では、もし重要な天体、たとえばアセンダントが獅子座で、そのルーラー(太陽)が8ハウスの魚座にあれば、その人の一生は「死」や「不安」がテーマなのでしょうか。2ハウスのルーラーが太陽で、8ハウスにあれば「死」に関わることからお金を得るのでしょうか。私たちは何を見落としているのでしょう?

ここに、国内の診療所や病院で生まれた人たちは、14時台生まれが多いという統計データがあります。[1] ホール・サイン・ハウスシステムで読むなら、日本では14時台後半以降、比較的高い確率で太陽が8ハウスに入ります。こうした人たちの多くが死や喪失、不安と関わりを持つのでしょうか。あるいは日本人が不安症の傾向を持つ説[2]と関係があるのでしょうか。こうしたデータは8ハウスの意味と無関係だと自分は思います。見落とされているのは、客観的データではなく「死」や「損失」の象意が広大な点。そしてシンボリズムの探究です。シンボリズムは再現性のある科学ではありません。古代から語り継がれ、継承された力を有し、また同時に解釈を下す各個人の生き方を反映するものと考えています。

8ハウスが示す「損失」と「死」は自分に限定される?

アセンダントとアスペクトしないことから、6ハウス、8ハウス、12ハウスは受動的なハウスと考えられてきました。
では、ここに関係する行動や姿勢が受動的であることや、単に自発的な行動が苦手なことを示しているのでしょうか?
それとも、そうした体験から自発性を獲得するのでしょうか?

8ハウスは単に自分の損失を表しているのでしょうか。それとも、人の利益になることを表しているのでしょうか? (利益と損失は常に表裏一体です)
「死に比肩する極限的な体験」「光と切り離される場所」、あるいは「夜」「夜のはじまり」「死」「冥界」に悩まされるのでしょうか。それともそうした場所や物事に魅了されるのでしょうか?

占い鑑定を受ける人たちに、こうした受け取り方を求めることはできません。 でも、占う側には象意が持つ広がりと豊かさへの探究心が求められていると思います。それは、ネガティブさを打ち消したいという思いから、ポジティブな意味を作るのではなく「死、損失、悲しみ、不安」といった言葉の解像度を上げる姿勢です。

嫌われるネガティブと減衰する感性

なにが幸せなのか分からない、幸せを感じない、なんとなくずっと不安、といった悩みをよく聞きます。 その理由に、ネガティブなものを遠ざけ、解像度を低くしているが故に起きる「対立感覚の希薄化」の可能性を挙げてみましょう。 恐れや不安を遠ざけ、見ないようにするが故に、幸せや喜びへの感覚も同時に鈍化している可能性です。ネガティブとポジティブはあくまでも相対的です。 不安があるから安堵があり、怒りがあるから歓喜がある。逆もまたしかりです。怒りだけ、喜びだけがある、ということはありません。 ですから、片方の感覚が軽くなれば、もう一方も自ずと軽くなり、一方を見なければ、片方の解像度も粗くなるのは不思議なことではありません。
勿論それは、不安や怒りに耽溺し「不快ど怒りマン」になることではなく、不快さを「なかったこと」にしない、希薄にしない態度です。

なぜ私たちは自然の中で感覚が鋭敏になり、気持ちが満たされるのでしょう。 それは、個人では対抗し得ない感覚、たとえば不安や恐怖に通じる「自分を超えた巨大すぎる何か」に触れているからではないでしょうか。 その結果、その対極で普段感じることのない安堵や喜びが呼び起こされる。 (もっとも、大自然の暗闇に一人たたずめば、抗えない恐怖と不安に支配されますが)
私たちの中で同様のことが起きているとしたらどうでしょう。ネガティブとポジティブの片側を否定すれば、ふたつを否定することになります。

この考え方は受け入れられないかも知れません。でも8ハウスを含むネガティブな意味を持つハウスを正面から捉えるには必要な視点と考えています。

※ この投稿は2023年8月開催の講座「お金の入り口」で頂いた質問と、以前に頂いた類似した問から新たに構成し直しました。

註釈

  1. 出生曜日・時間別にみた出生(厚生労働省) https://mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/syussyo-4/syussyo3-7.html 全数標本を用いたわが国の出生数の時刻別分布に関する記述疫学(奈良県立医科大学衛生学教室)
    https://jstage.jst.go.jp/article/jjh1946/57/4/57_4_674/_pdf

  2. 不安遺伝子(セロトニントランスポーター)「SS型」の遺伝子を持つ人は不安を感じやすく、「LL型」遺伝子は楽観的、「SL型」はその中間。 日本人は「SS型」が全体の68.2%を占めるという調査による。

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