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占星術はあたらない?〜金融占星術の日

2023年7月23日、トレーダーの山中康司(@yasujiy)さんとの対談イベント、そして「表示星」「当たる当たらない」「自然界の数列」について振り返ります。

山中さんについて
1982年バンク・オブ・アメリカ入行、1989年バイスプレジデント、1993年プロプライエタリー・マネージャー。1997年日興証券入社、1999年日興シティ信託銀行為替資金部次長。2002年アセンダント社設立・取締役。テクニカル分析と独自のサイクル分析を融合させたトレンド分析には定評がある。社名アセンダントは占星術を由来とする。

表示星の再定義と再解釈

金融占星術では「金星」が重要な指標として機能します。古典占星術ではそうした作法はありません。現代占星術と古典占星術の共通点は、金星を性愛、快楽の象徴とするところです。また5ハウスを金星のジョイとする作法は古典から現代へと受け継がれています。

「お金」の表示星(Significator)は金星、これはたびたび議論の的になってきました。
古典派の教科書で富、お金は「2室のルーラー」「2室の在室惑星」「POF(ロット)とそのルーラー」「木星」です。流通する貨幣や取引は「水星」が担います。
一方、現代占星術では「金星」も富やお金を象徴します。金星とお金の関わりは、17世紀頃から、「牡牛座」が2ハウスの共同表示サインとして用いられる様になったことから始まったのかも知れません。金星が獅子座(17世紀以降の5ハウス共同表示サイン)と関連づけられ、これが投機・ギャンブルの生来的表示星(natural significator)となった可能性も考えられます。

古典派の占星術で、積極的に金星を富の表示星として使う人は多くありません。英国で伝統的占星術学校STAを主宰するデボラ・ホールディングは著書で述べています。

金星が貿易やお金を表すという伝統的な文献を探してみてください。見つかりません。金星の本質的な性質を考えてみると、まったく商業的な惑星ではないのです。金星は確かに贅沢を求め、自己満足と関連付けた楽しさを求めます。でも、この惑星はビジネス問題には解決策を持ちません。金星は快楽のためにすべてを犠牲にするので、余裕がないときも楽しいことに仕向けるのかもしれません。でも自己耽溺と贅沢を楽しむ惑星ですから、お金や商業の惑星ではないのです。
(同書 序文から翻訳)

The Houses Temples of the Sky(Wessex Astrologers Ltd. 2006)

ところが金融占星術の運用においては、金星が重要な指標となり、対談での事例を見ても、一定の役割を担っている様に見えます。あくまでも後付け解釈ですが「快楽を求める行動」を表す指標と考えるなら矛盾はありません。金融占星術のフレームワークの中で、金星が金融活動の生来的表示星として機能を得ていることはとても興味深い点です。

当たる占星術、当たらない占星術

現在、占星術を的中度で測る人は限られ、プロの占星術師にも的中度で扱うことを否定する人たちは少なくありません。社会的にはそうあって欲しいです。なぜなら占いや魔術、神秘主義が人を動かす主たる要因になることを自分は心の底から望みません。占星術は可視化できない世界や、言語化不能な余白のある世界のあり方を「仄めかす」媒介者であれば良いと考えています。それは何故でしょうか。
何かを為し遂げるには、挑戦と努力の継続が必須です。でも、努力や自己鍛錬だけではどうしようもないことが世の中には山ほどあることも事実だからです。気軽に運命や宿命を言葉にしたくはありません。でも「自力」の対立概念として「人が抗えぬ力」「自由にならぬ作用」の前提が必要と考えています。なぜなら、その前提は、自分は間違わないと信じる「自己無謬性」に陥る愚かさを破壊するからです。

一方で、占星術の技芸を磨く上で解明したい命題もあります。「なぜ当たるのか、外すのか」という点です。
占星術で扱うパラメーター(占いで使う様々な基準)は、すべて先人が作り、その解釈も人が決めてきました。そこに神秘的な力が働こうが、働くまいが関係なく、人為的に規定されたものという点は強調しても足りません。西洋占星術はシンボリズムに満ちあふれています。でも、それを定義し、運用しているのは、あくまでも人間です。

この点に着目し、喝破した最初の日本人は故荒木俊馬理学博士でしょう。荒木博士は占星術の歴史と効用を十分に吟味し、現代に通用する占星術を再構築することは可能と結論付けました。この点を脊髄反射的に否定した占星術師もいます(自分もそのひとりでした)。でも氏の占星術理解はその程度のものではありません。冷徹に観察した結果、その結論を導いているのです。(参照文献:荒木俊馬著, 西洋占星術, 恒星社, 1963)
占星術はあくまでも人が構築したフレームワークです。世の仕組みを明かす真理でもなければ、聖書外典で言われるように天使(エノク書に登場する「バラキエル」)から与えられた天界の知識でもありません。もちろん、世界の全てなど分かるわけがないのですから、そうした可能性も排除しません。あくまでも思考の基点として、その立場をとるという意味です。
自分が荒木博士と立場が異なるのは、たとえ人が規程したフレームワークであっても、現象の一部を記述し、しばしば正確に予告することがある、という点です。これはホラリー占星術を実践することで恐らく誰もが体感できます。逆に言えばその体験無しには得られません。つまり、適切な質問と過程を踏めば7割以上の確度で、占星術は未来の現象の発生有無を言い当てることができます。それはどういうことでしょうか。
自分が学んだホラリー占星術の師(Petros Eleftheriadis)は「Yes/No」質問と質問の「質」について極めて明瞭なガイドラインを敷きました。

単純に考えてみましょう。Yes/Noだから当たる確率は五分五分。それが二度続けて当たれば1/4、三度続けば1/8…五度で1/32となります。
つまり、一回の実践では分からないが、適切な質問の「質」を維持し、Yes/Noの可否判断を通し、その連続的体験を踏むことで「これはなにか、おかしなことが起きている」「なぜ占星術が未来を描くのか?」という問が具体性を帯びるのです。

山中さんの提示する金融占星術は、現象を正確に描く占星術とその可能性について、改めて自分の視点を新たにしました。

フィボナッチ数列と物理世界

自然界に現れる比率

最後に、自然界の数列について述べます。
投資指標のひとつにフィボナッチ数列を基にした「フィボナッチ曲線」があります。
フィボナッチ数列は「黄金比」としても知られ、自分が30年従事するデザイン界では有名な格言のひとつです。
その比率は近似値で1:1.618、または5:8
どういうわけか自然界にはこの比率が頻出します。銀河系の形状、台風、人体、動物、花弁、貝殻。そして、さらには人の手による芸術作品、絵画、建造物、ロゴデザイン…と出現例については枚挙に暇がありません。

私たちが美しいと感じる構造物、人の顔、人体、風景、絵、構図の殆どに比率「1:1.618」が現れるため「黄金比」と呼ばれています。

作為的にこの比率をデザインや絵画の構図に用いることは可能です。でも、それよりも興味深いのは、人はこの比率を意図せずデザインをするし、ものを作るということです。まるで中心極限定理や大数の法則の様に、黄金比へと「収束」していくのです。

シンボルマーク、絵画に現れる黄金比

これは私たち宇宙の住人や現象の全てが、一定の環境変数によって定義されていることを示しているのでしょうか。それは宇宙創成時に決められた変数なのでしょうか。
もしそうなのであれば、わたしたち自身がその比率で奏でられるリズムの中に生きており、至る場所に同じ比率が出現するのは当たり前ということになります。であれば、仮に人の手で定義されたフレームワークであっても、占星術が現象の一端を描写することに特段の神秘は無いのかも知れません。対談終了後の雑談にて「フィボナッチ曲線にせよ、占星術にせよ、単に自然界を統べるリズムや比率に呼応している」ということについて山中さんと意見を同じくしました。

金融占星術対談は2024年初頭までアーカイブ配信でご覧いただけます。トレーダーとして活躍され、金融占星術を指標のひとつに使う山中さんの言葉に触れてみてください。占星術を実用ツールとして扱う事例は、占星術の実践に何かしらの衝撃があると思います。

黄金比について


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