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懐かしさの徒然に(6) 学生街にあった喫茶店

君とよくこの店に来たものさ

大学の北門を出て少し歩くとその喫茶店があった。名前は「アルトハイデルベルヒ」。コーヒーの値段は180円だったように記憶している。この喫茶店の売りの一つは美味しいケーキも提供してくれることだ。面白い企画があって、昨日作って余っているケーキは一律50円で買える。コーヒーと合わせて、230円。当時は2年生だったが、後期になると学部授業の一部が開講される。解析力学や物理数学の講義はそれなりに難しい。疲れた頭を休めるには「アルトハイデルベルヒ」のコーヒーと50円ケーキが必要だった。残念ながら男数人でゾロゾロ出かけていたので「君とよくこの店に来たものさ」というわけにはいかなかった。

訳もなくお茶を飲み話したよ

「君とよくこの店に来たものさ」

この歌詞が出てくる歌は『学生街の喫茶店』だ。学生街には喫茶店が似合う。あとは雀荘だろうか。安い居酒屋もよい。

『学生街の喫茶店』は1972年6月20日にリリースされた。おしゃれな男性三人組、GAROが歌っていた(図1)。作詞は山上道雄、作曲はすぎやまこういち。重厚なイントロ、美しいメロディとハーモニー。言うことのない一曲だった。

図1 GAROの『学生街の喫茶店』のレコードジャケット。 https://www.amazon.co.jp/学生街の喫茶店-7-Analog-EP-Record/dp/B07RZBGJ8P

今の時代、スターバックスやドトールなど、大手系列店のコーヒーショップが普通になった。コーヒーを飲むだけなら、マックでも構わない。昔の喫茶店はそもそも店自体も古風で、薄暗く、タバコの煙が漂っている感じだった。隔世の感がある。

古書店巡りで神田神保町によく行くが、その辺りにはまだ古風な喫茶店があり、思わず入ってしまう自分がいる。奮発してコーヒーゼリーを頼むことすらある。奮発と言っても、600円ぐらいなのだが。

私が学生時代の頃は、喫茶店というものは行くもんだという感じがあった。友達と行けば、ダラダラといろんな話をして盛り上がっていた。ここ数年のコロナ禍の時代では、あり得ない光景だが、当時はそれが普通だった。

「訳もなくお茶を飲み話したよ」

いつものことだ。

あの頃の歌は聞こえない

「片隅で聴いていたボブ・ディラン」
🎵blowin’in the wind・・・

1963年の歌『風に吹かれて』は一世を風靡した。日本のミュージシャンたちにも多大な影響を与えた歌だ。まさか、ディランがノーベル文学賞を受賞するとは思わなかった(2016年受賞)。考えてみれば、歌詞は文学だ。

ところで、よく出かけた喫茶店は「アルト・ハイデルベルヒ」だけではない。ロック好きの友達と行く時はロック喫茶、ジャズ好きの友達と行く時はジャズ喫茶。当時は歌声喫茶なるもあった。大きなカラオケ喫茶のようなものだが、さすがにそこには行かなかった。

気がつけば遠い日の記憶になった。

「あの時は道に枯葉が 音も立てずに舞っていた」

そうだったのかもしれないが、もう思い出せない。

しかし、これだけは言える。

「時は流れた」

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