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銀河系のお話し(13) 懐かしい教科書に書いてあったこと

『銀河系』問題

今回も、いつもの文章でこの note を始めたい。

天の川銀河のことを、なぜ「銀河系」というのか? この問題について考えてきたが、いまだに答えは見つかっていない。

思った以上に難問で困っている。

懐かしい教科書を見つけた

大学のオフィスの本棚を整理していたら、懐かしい本を見つけた。恒星社が昭和41年に出した『新天文学講座 第8巻 銀河系と宇宙』だ。全部で15巻。次のような構成になっていた。

第1巻 星座
第2巻 太陽系
第3巻 太陽
第4巻 地球と月
第5巻 地球の物理
第6巻 恒星の世界
第7巻 原子核物理学と星の内部構造
第8巻 銀河系と宇宙
第9巻 天文学の応用
第10巻 電波天文学
第11巻 天文台と観測機械
第12巻 天文学の歴史
第13巻 天体の位置観測
第14巻 天体の軌道計算
第15巻 天体の物理観測

私は全巻揃えてはいなかったが、専門分野の第8巻『銀河系と宇宙』は買って持っていた(図1)。

図1 『新天文学講座 第8巻 銀河系と宇宙』(鏑木政岐 編、恒星社、昭和41 [1966] 年)

説明なしの銀河系登場に唖然・・・

古い教科書なので、もう処分しようと思った。しかし、思いとどまった。

「待てよ、ひょっとしたら銀河系という言葉の由来が書いてあるかも知れない」

そう思ったのだ。

しかし、その期待は裏切られた。なんのことはない、まったく説明なしに唐突に銀河系という言葉が使われているだけなのだ(図2)。

図2 『新天文学講座 第8巻 銀河系と宇宙』で、最初に「銀河系」という言葉が出てくる箇所(赤線の部分)

そもそもアンドロメダ銀河のことがアンドロメダ星雲だ。表の最後のコラムには「銀河系外星雲」と書いてあるが、今では単に銀河とされている。昭和41年というと、1966年。今から約60年前のことだが、まだこんな感じだったのかと、唖然とした。

この表は16頁に出てくるが、そのあとの頁を見ても、「銀河系」の説明はない。当然、「銀河系」の由来も書かれていない。

半世紀前には「天の川銀河=銀河系」がすっかり定着していて、誰も疑問を持つことなく「銀河系」という言葉を使っていたということだ。

じゃあ、昭和24年はどうだ

以前の note で、明治12年から大正を経て、昭和6年までに出た天文学の教科書の紹介はした。全部で19冊調べたが、どの本にも「銀河系」の名前の由来は書いていなかった。

『銀河系』のお話(3)『銀河系』という言葉はいつから使われていたのか?https://note.com/astro_dialog/n/ne316644c6000

昭和41年に出た『新天文学講座 第8巻 銀河系と宇宙』でもダメだった。そこで、もう少し遡ってみることにした。今度は昭和24年の本だ。全12巻の構成で、天文宇宙物理学総論シリーズが刊行された。『銀河系』はその第10巻にある(図3;荒木俊馬 著、宇宙物理学研究会版、昭和24 [1949] 年)。この本は神田神保町の古書店で見つけたものだ。

図3 天文宇宙物理学総論シリーズの内容。全12巻の構成で、「銀河系」は第10巻にある。

この本の緒言に「銀河系」の説明がある(図4)。
銀河系はわが太陽の属する、恒星の一大集団である。

図4 天文宇宙物理学総論シリーズの『銀河系』で説明されている銀河系の意味(赤線の部分)。

たった、これだけの説明だ。戦後まもない頃のことだが、やはり誰も疑問を持つことなく「銀河系」という言葉を使っていたのだ。

ということで、調査はまだまだ続く。

「乞うご期待!」と言えないところが寂しいが。

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