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バルコニアン(35) つまぐろひょうもん、旅の宿

数年前の出会い

もう数年前のことだ。ある秋の日、「つまぐろひょうもん」という蝶を我が家のバルコニーで見かけた(図1)。

図1 数年前、我が家のバルコニーで見かけた「つまぐろひょうもん」。石蕗(つわぶき)の花の蜜を吸っている。

「つまぐろひょうもん」主として北緯30度以南に生息するようである。(図2)。私は北口生まれの北国育ちで、この蝶を見たことがなかった。まさか、その蝶を我が家のバルコニーで見ることになるとは思っても見なかった。

図2 『原色日本蝶類図鑑』(江崎悌三 校閲、横山光夫 著、保育社、昭和29年)で紹介されている「つまぐろひょうもん」。「つまぐろ」の特徴は雌に見られるが(下段)、雄では見られない(中段)。

数日前の出会い

「つまぐろひょうもん」とは、しばらくご無沙汰していた。ところがである。出会いは突然にやってくるものだ。

数日前、夕方バルコニーに出たとき、1頭の蝶が舞い上がった(蝶は一匹、二匹、・・・ではなく、一頭、二頭、・・・と数える)。ひょうもん蝶だ。黒竹の周りを飛んでいる(図3)。

図3 我が家のバルコニーにある黒竹の周りを飛ぶ「つまぐろひょうもん」。

幸い、黒竹に留まってくれた(図4)。やはり、「つまぐろひょうもん」だ。数年振りの出会いとなった。

図4 我が家のバルコニーにある黒竹で休む「つまぐろひょうもん」。

一般に、ひょうもん蝶は動きが素早い。モンシロチョウなどとは違い、かなりのスピードで飛ぶ。ところが、その日に見た「つまぐろひょうもん」は動きがスローだった。

旅の宿で一休み

「ひょっとしたら、羽化したばかりなのだろうか?」

そんなことを考えながら、「つまぐろひょうもん」を眺めていた。

すると、今度は黒竹からススキの葉に移動した。しかも、葉の裏側に止まった。しばらく眺めていたが、じっとそのまま動かない(図5)。

図5 ススキの葉の裏側で休む「つまぐろひょうもん」。羽の裏側は「つまぐろ」模様はないので、地味である。浮化したばかりのせいかもしれないが。

旅の宿で一休み

「ひょっとして・・・」
私の予想は当たった。夜寝る前にそっと見てみたら、まだススキの同じ場所で休んでいた。
「旅の宿で一休みか。」

ふと、ある歌が頭に浮かんだ。

🎵浴衣のきみは 尾花(ススキ)のかんざし🎵 (吉田拓郎『旅の宿』1972年7月、Odyssey/CBSソニー)

翌朝見ると、「つまぐろひょうもん」の姿はなかった。十分、休めたのだろうか? なにしろ、ススキの葉の裏にぶら下がって寝ていたのだ。

思わず唸った。

「うーん、蝶はすごい!」

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