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大学1年 秋④ジャスコまであと◯km

自分のブランドの服作りをしつつ、ダンスも目一杯やる毎日。

大学生なんだからちゃんと勉強していたかと言われればほとんど記憶にないけど、ひたすらやりたいことを形にする毎日だった。

大学でも演劇やりたいなぁとはうっすら思っていたけど、その想いはサークルの公演を観て消し飛んでしまった。

この街には、僕が高一の時の全国大会に出ていた高校があるというのに!

まぁでもそんな都合よく、あの高校の演劇部員がここにいるわけないよね。

やるならメンバー集めからしなきゃいけない。

しかし演劇やりたい人なんているか?

ということで、これは時が来たらにしよう。今じゃない。


こうして気温も落ちてきて秋も深くなってきたある日、僕らのホームタウンからだいぶ離れた街のイベンターから出演のオファーが来た。

僕と横Tセンパイと、この前のクラブイベントで一緒だったDちゃんの男3人によるスタイルヒップホップチームの出陣である。

しかも、あまり日本のヒップホップを知らない僕でさえも聞いたことのあるアーティストがスペシャルゲストで来るのだそう。

その街ではクラブが潰れてしまったらしいという話を聞いた直後だったので、そんな大御所呼んでどこでやるんだ?という疑問を持ちながらも

出演の場所を選べるほどの立場ではない僕らは即決で参加の依頼を受ける。

曲は当時、オールドスクール色全開のアルバムで大ヒットを飛ばしていたミッシーエリオットのWORK ITで挑むことになった。

MVみたいにヒップホップにポッピンの要素を加えた振付を軸に構成して

最後のブレイクビーツのところは、その名の通りブレイクダンスで締める。

"楽しく踊る"をテーマにブレイクダンスの練習をしまくっていたおかげで、この頃には師匠の教え子の中でブレイクダンスではNo. 1のポジションになっていたから、まさに

"俺の見せ場がきたぜーい!"

な状態だった。


そして迎えた当日。

車で2時間以上かけてイベント会場へ向かう。

イベントの会場は使われなくなった公共施設を貸し出しているスペースだった。

普通のステージともまた違う、独特の距離感の中、イベントが始まる。

ダンサーは僕らの他に地元のブレイクダンサーが一組だけ。

他はライブがメインのイベントだった。

いつものように外でコンディションを高めて、ショータイムに合わせて会場に戻る。

本番。

天井が高く、音が反響して掴みにくい。

でも、目一杯身体を使って大きく踊る。

ステージは無事に終了!

楽しかった!

もともとヒップホップにあまり興味がない僕はヒップホップのアーティストのライブの楽しみ方は正直よくわからなかった。

最新のUSチャートを追いかけなきゃいけないジャンルのダンサーなのに、日本の音楽を追いかけてる暇はない。

そう信じていた。

イベントが終わって外に出た。

空がとてつもなく広く見えた。

今回は特に誰と話すとかでもなく、帰路に着く。

イベントは盛り上がっていた様な気もするし、そこまででもなかった様な気もする。

まぁ、僕らはちゃんと踊り切った。

やれるだけやったから十分だ。


帰り、道路脇にとある看板を見つける。

"ジャスコ 直進100km"

通り過ぎてから気付く。

え、100km先の為に看板出す意味ある?

メンバーで大笑いしながら帰路に着いた。

身体は疲労で満身創痍。

でも、とにかく充実していた。




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