大学1年 春② 生のニラはシャッキシャキ
大学生活が始まった。
入学式に声をかけてきたヤンキーが所属しているカヌー部にノリと勢いで入部することになった。
ヤンキーはJさんと言って、四年生らしい。
カヌー部に行ってみると、思った以上にみんな優しくて普通の人が多かった。
ヤンキーばかりでないことにめちゃくちゃ安心した。
あと、かわいい女の子も多くて、キャンパスライフらしいな〜と思った。
でも、僕は地元に彼女を残してきたまま。
遠距離。
彼女はわざわざ北海道まではこないだろう。
僕もそれは望んでない。自分の夢があるなら、それに向けて進んでほしい。
たった4年間。でも、その4年はとてつもなく長く感じた。
他にもサークルを調べていると週に一度、大学でヒップホップのダンススクールが開催されていることがわかった。
早速入会することにした。
カヌー部の先輩、カヌー部の同級生もいた。
先生は田舎の大学には似合わないほど、ゴリゴリのヒップホッパーって感じのB BOYとB GIRLだった。
いろいろ雑な感じがとても苦手だと思った。
でも、ダンスは恐ろしくパワフルで美しかった。
ある日、ヤンキーのJさんから電話がかかってきた。
「鍋食おう」
断るのも気が引けるし、大学の中でもやたらと注目を集めている人だ。
とても興味がある。即座に行くことにした。
呼ばれた場所は僕と同級生の女の子の家っぽかった。
女の子の家に入るのって緊張するな、と素直に思った。
玄関にはすでにたくさんの靴。
中に入るとかわいい女の子がたくさんいた。
「おー!きたきたー!これ、俺の弟だから!」
まだこの茶番続いてるんだ笑
そう思いながら
「いつも兄ちゃんがお世話になってますー」
と挨拶した。
つかみはバッチリだったらしい。めちゃくちゃ歓迎された。
鍋を食べていたが人数も多くて、すぐになくなった。
ボーイッシュな感じの女の子が
「あたし、ニラ玉得意でーす!」
と言いながら台所に向かった。
一同テンション爆上がりしていた。
「そいえば、なんで入学式の時に声かけてくれたんすか?」
『いやだって、入学式に金色のスーツ着てくるやつ他にいないべ笑』
部屋の中には8人ほどいたと思うが、全員が大笑いしながら頷いていた。
入学式の服装を見て、大学内では注目の的になっていたらしい。
中でも同級生からは近寄りがたい存在だと思われていたらしく、この会がなかったら絶対話しかけなかったとほぼ全員に言われた。
高校時代、ビジュアル系の服装にハマってビニールとかボンテージの服とかばっかり着ていたから、どうも感覚がズレていたらしい。
シルエットが普通なんだから、普通じゃん?みたいな。
今考えるとアホである。
でも、当時は変な服ばかり着ていたからそこまでズレてるとはまったく思っていなかった。
普通のスーツ着ていこう。でも普通すぎるのは嫌だから、せめて金色にしよう。
今考えると大バカ者である。
なんやかんや話して盛り上がっていると
「ニラ玉出来たよ〜」
と言いながらボーイッシュな女の子が大皿片手に戻ってきた。
テンションマックスな僕らはさっそく一口ずつ頂く。
生だった。
シャッキシャキの生ニラだった。
そのボーイッシュな女の子はその日から"ニラ"と呼ばれるようになった。
ある程度夜が更けてきた。
近所にあった朝までフリータイム一部屋¥2,500のカラオケルームにみんなでなだれこんだ。
Jさんは見た目の通りヒップホップな曲をたくさん歌う。
キングギドラのFFBという曲をJさんが歌っている時、歌詞がエロすぎてやけにドギマギしていた。
僕は歌詞もわからないまま、この新しすぎる生活と文化を浴びて一晩中歌っていた。
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