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大学1年 春① 一人暮らしのはじまり

4月に入って、いよいよ移住の時が来た。

大きなものはこちらで購入して配送手配済みなので、僕は手持ちの鞄に必要なものだけ詰め込んで行くのみだった。

出発には母と妹が見送りに来てくれた。

なんともいえない微妙な空気。

寂しい。

でも、ワクワクが勝る。

僕は新幹線に乗った。

母と妹が一瞬にして遠くに小さくなっていった。

その後、羽田から飛行機に乗り継いで北海道へ。

ジェット機だった。

そんなに揺れもせず、安全に到着。スチュワーデスの悪口言わなくてよかったなと、その時も思ったのをいまだに覚えている。


荷物は翌日。

何もない部屋で、着ていたアウターにくるまって夜を過ごす。

こうして、僕の初めての一人暮らしがはじまった。


2〜3日も経つと徐々に荷物も届き始めて、狭い部屋はあっという間にいっぱいになった。

ようやく生活できる感じになってきた。

そして、ちょっぴり寂しくもなっていた僕は、ここで友人に連絡をすることとなる。

実は同じ高校から進学してきた同級生は、僕を含めて4人いた。

うち、3人は同じクラス。

ディズニーで僕に連絡をしてきた元野球部のイジられキャラと、同じく元野球部のがっつりヤンキー、そして僕。

そもそも同じクラスだったし、元から仲も良かった。

もう1人は共通の友人はたくさんいたけど、隣のクラスで全然会話をしたことのなかったヒップホップ好きメンズ。

よくまあ4人も同じ大学に集まったもんだ。

結局、それまで一度もまともに話したことのなかったヒップホップとも仲良くなり、大学が始まる頃にはそれぞれの家を行き来したりするようになった。

大学の周りは学生向けのアパートが集まっていて、学生の大半は徒歩10分圏内に住んでいた。

みんな近くて寂しさもなかった。

地元からの仲間は偉大だ。


それから数日は一気に距離が近くなった友人たちとだべったりしながら過ごした。

とりあえず、ちゃんと生活しなきゃと思った僕は日々3食自炊するところから始めようと思い、毎朝ホットケーキを焼いていた。

毎日家がホットケーキのにおいになった。


それからさらに数日後には入学式。

エントランスのホールに新入生が集められての式。

ふと上を見上げた。

吹き抜けのホールの2階、3階スペースから上級生らしき人たちが僕らを見下ろしている。

ヤベー先輩みたいなのには目をつけられたくないな。

そんなことを思って見回すと、一角にヤンキーとギャルの集団みたいなのが目に映った。

アレにだけは関わらないようにしよう。

そう思って前を向き直す。

式は滞りなく進んで無事終わった。

学生生活の説明などいろいろ終わり懇親会が開催されるとのこと。

みんなで移動していると、サークルの勧誘でめちゃくちゃ声をかけられた。

うひゃ〜とその波に流されている時にふと、グイッと肩を掴まれる。

「おうみんな、コイツ俺の弟だから!な、カヌー部入ろうぜ。そんで番号交換すんべ!」

声のあった方を見ると、入学式の時に上にいたヤンキーの集団10人弱に囲まれていた。

肩を掴んできたのは、その親玉みたいな人だった。

全体にゴールドのメッシュが入っていて、襟足めちゃくちゃ長いモヒカンで金のサングラスをしていた。

「オワタ\(^o^)/

でも、舐められたら終わる。そう思って爽やかに元気いっぱいに答えた。

「お、兄ちゃんなんでこんなとこに!?カヌー部はいるはいる〜!」

初対面の人と兄弟だと言い張るヤバい人に、ノリの良さをやたらと気に入られて連絡先を交換してその場で別れた。

なんもなくてよかった。

懇親会で学籍番号の近い仲間と談笑したりして、新たな友人も何人かできた。

さっきのヤンキー集団が話題に出てた。アレには絡まれたくないよね、と。

さっそくその親玉みたいな人と連絡先交換してるけどな、、、そう思いながら苦笑いで過ごした。

とりあえず出だしは好調。


翌朝、ゴミ捨て場にゴミを捨てに行くと、カモメとカラスがゴミをあさって喧嘩していた。

自然の姿はたくましい。

高い建物が無い北海道の田舎町では、とにかく空が青く、そしてとてつもなく広く思えた。


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