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あの日は、大雪が降った後で、世界一面真っ白だった。 みんなが慎重に真ん中を避けて通っ…
研ぎ澄まされた空気を放つ白の金属扉が、僅かな駆動音と共に横滑りする。 現れたのは、頭…
※ゲテモノとグロが苦手な方はご注意ください。 唇から零れる泡が、己の命を運び去っていく…
守り人の管轄する部屋には、一つしか窓がない。 大柄の守り人ですら手の届かない位置にあ…
大臣が部屋に戻ると、片隅に立つトルソーの足元に外套が落ちていた。 脱げてしまったのか…
前の話へ 白衣を纏う集団が、部屋の中央にそびえたつ白の円柱を囲うように集まっている。そ…
集落の鐘が打ち鳴らされている。 生まれて初めて聞く轟音に、否応でも急き立てられる。音は集落を囲う谷にぶつかり、反響して、ますます大きくなった。まるで触れられそうなくらい厚みのある音に背を押され、ひたすらにロニーは走る。集落の奥へ奥へ、谷の根元の洞穴へ。 赤茶けた岩肌にぽかりと空いた暗闇に飛び込むと、淡い黄緑色の光がふわりと動いた。ロニーはその光を頼りに鉄格子をつかみ、手探りで扉に向かう。逆光で見えない苛立ちを抑え、鍵をこすりつけるようにして鍵穴を探した。 かみ合わせの
前の話へ やばい。 やばいやばいやばい。 速度がえげつない。だが、ここで押されたら負…
「違う」 簡潔で非情なる声が響く。 闇のように濃い紫の法衣に身を包んだ魔女は、指先で摘…
神々しいまでの朝日が、礼拝堂に続く通路を照らす。身が引き締まる空気に包まれて尚、瞼が重…
ガタガタと音を立てながら机を直し、教室を出て行く教師たち。その声を背に、高藤は文字と図…
何もしたくない。 曇天が重くのしかかる。空がどばどばと白い綿をまき散らす。それは綿の…
前の話へ 端末を操作するオーリネスの背後に、誰かに追われているのかと錯覚する勢いで足音…
気付けば、口元にすっぽりと紙コップが嵌まっていた。 「いゃだ、もう!」 頓狂な声が、紙コップの中でビリビリと響く。 咄嗟に引っ張ってみたものの、びくともしない。コップと一緒に顔周りの皮が引っ張られるだけだ。端から見ればさぞ滑稽だろう。なんて恥ずかしいのかと辺りを見回すも、幸いなことに人通りはない。 むしろ不自然だった。 スーパーの中である。天井から賑やかな音楽が流れ、商品はずらりと並び、奥に見える窓に映るは快晴、明らかに営業時間である。片腕に下げたカゴに野菜が入って