麻雀強者であるために本当に必要なスキルって?

今回お話するのは、僕が思う
「未来の麻雀強者に求められるもの」 
そして、
「Mリーグで行われる麻雀の特異性」
この二つです。
この二つのトピックをポーカーで使われるとあるワードを用いて、自分なりの考えを述べたいと思います。(ポーカーのルールを知らなくても全く問題ないと思います)


①麻雀最強ってどんな人か

さて、さっそくですが皆さんは「世界で一番麻雀が強い人」をどのように定義づけましょうか?
一番麻雀で運が良い人?
一番麻雀でお金を稼いだ人?
トーナメントで優勝した人?
桜井章一さん?w

どれもしっくり来なく無いですか?

この文章内での「麻雀最強」の定義は
「ある1つの麻雀ゲームの集合の結果に対する期待値最大化」を行える個人、とします。

要は「盤外戦術も含め」人事を最大限尽くして期待値を上げた人を最強と定義したいということなのですが、「麻雀ゲームの集合」という言い回しに含みを感じたと思います。

例えばとあるフリー雀荘に勤務するプロ雀士さんがいて、この人は団体で個人の優勝がかかったリーグ戦が近く、トロフィーを掴むために必死だとしましょう。

さて、いつものように勤務先でメンバーとしてお客さんと打ちます。ここでこの人が件の「最強雀士」であった場合、お客さんに対しても最強である必要ってあるんでしょうか?

違います。
恐らく人生で何万回と打つであろう彼の麻雀の中で、恐らく重要なゲームと呼べるものはそう多くは無いのです。他のゲームの期待値を多少捨てても、重要なゲームがどこなのか見極めて、そこの期待値を追いかけることは恐らく最強雀士の必須スキルでは無いでしょうか。
いわゆる勝負所を見極めるってやつです。

この勝負所を「ある麻雀ゲームの集合」と言い換え、麻雀最強を定義しました。

②最強のための必須スキル:exploit戦略

じゃあこの期待値最大化を行うためにはどうすれば良いの?というところにアプローチしたいわけです。

皆さんはポーカーにおける「GTO戦略」というものを聞いたことがありますか?
GTO戦略は、相手がメンタリストであったとしても絶対に負けない、数学的見地から計算され尽くした戦略です。友達が7万くらいでソフトウェアを購入したらしいです。(笑)
要は誰も完璧には遂行できない「ポーカー戦略の『イデア』」と考えて下さい。
このGTO戦略から如何に外れないかで獲得チップが決まるという考え方もあるようです。

しかし、この戦略は対戦相手のことを一切考慮しません。相手が小倉孝さんだろうが僕だろうが同じ手を打っていくんです。それってまず、正しいんでしょうか?

GTO戦略とは対を為す形で「exploit戦略」というものがあります。この戦略は、相手のミスにつけ込み、期待値を上昇させる戦略です。相手のことを観察しながらプレイするわけですね。
例えば、自分がレイズした後に相手がいっぱいミスをしてくれるプレイヤーと判明した場合、こちらが相手と戦う場合たくさんレイズをすることが期待値を大幅にプラスにする、といった具合です。

あまりポーカーの話はしたく無いので、話を麻雀に戻しましょう。
「万人に通用する戦略の『イデア』」vs「相手を観察して搾取するexploit戦略」。ポーカーで物議を醸すこの話題、これがそっくり麻雀にも当てはまります。
天鳳界にsuphxをはじめとした麻雀AIが降臨し、ポーカーにおけるGTO戦略のようなソフトウェアが完成する日は近いように見えます。実際上手い人の牌譜よりはもうsuphx見るよ!って人もいるはずです。

でもちょっと待ってほしいんです。suphxが麻雀が強いってことはわかります。参考になる部分は多いでしょう。しかし、suphx通りに打って期待値最大になるのって、「天鳳特上卓」という限られた環境だけでは無いですか?

ズバリ言います。
おそらく、近い将来ほとんどのルールに対するGTO戦略が現れるであろうこの状況の中、先程定義した最強雀士のクリアすべき条件は
「環境への適応から生まれる最適な『exploit戦略』」
なのです。

ちょっと自分の経験から掘り下げます。
自分は天鳳の鳳凰卓で全然勝てず、面前祝儀(赤3金1の4000,8000点相当)のフリー雀荘へ麻雀の場を移してから、大負けした時や改善したいポイントがあった時に、麻雀に関する色んな数理データを集めて、少しずつ自分の頭の中の麻雀AIを改善して行きました。しかし、それでも数字が伸びなかったんです。そこで考えたのがまさにexploit戦略だったんです。

今具体的には大まかに2つの戦略をやっています。
・綺麗に理牌している人を観察し、入り目を推察する。
・対戦相手が押しすぎなら、鳴きを多くして打点祝儀<速度で押し引きはオリ寄りに動く、逆なら速度<打点祝儀 押し引きは押し寄り

理牌に関してはやっている方も多いのでは無いでしょうか。
入り目を知られるということは、その一局における致命傷になりやすいんです。おそらくこれはこの読みをしたことがある人ほど共感頂けると思います。

2点目に関して、これ自分以外に前半部をやってる人は見たことないんですよね。
多分押し引き部分はピン東ルールとかで誰もが意識するとは思うんですが。
ざっくりと説明すると、押し寄りのプレイヤーが集まった時祝儀の価値が通常より目減りし、速度での加点の価値が上がります。型式聴牌の価値が下がることも要素にありますね。更に横移動の可能性が高くなるのでオリ寄りに動くメリットが高くなる、ということですね。

これ以外にも相手のプレイの癖につけ込んで自分の麻雀を変えていく様々なexploit戦略があると思います。

また、このexploit戦略を一切使用する発想が無かった自分が、鳳凰卓で勝てるはずが無かったことにこの考え方をするようになって初めて気づいたんです。
・対戦相手の殆どがGTO戦略を探究しているからこそ読みを外すexploit戦略が通用しやすい環境である
・常にトッププレイヤーが取る思考、トレンドを取り入れており、環境がそれに左右されやすい
・振り込みが致命打となるルールなので、相手の読みを外して放銃させることによるpt期待値の上昇幅は大きい

フリー雀荘のおじさん達の押しすぎを突く戦略と、鳳凰卓のプレイレベルの高さと環境の読みやすさを突く戦略。どちらも広義のexploit戦略と言えるのでは無いでしょうか。

何事もバランスが大切です。GTO戦略から外れすぎることによる期待値下降がexploit戦略による期待値上昇を上回ってはいけません。
しかし、AIによって麻雀のGTO戦略が解き明かされようとしている今だからこそ、更にその上の思考ステップと言えるexploit戦略を、AIには解き明かせない、人間だけができる戦略として目を向けていくべきだと思います。

③特異すぎるMリーグという舞台

Mリーグについて、10回くらい見ただけの視点なので、あまり深いことは言えませんが、本当に選手陣がバラエティに富んでいます。

人読みから貪欲にexploitを狙う選手。
確固たる自分の中のとりあえずのGTO戦略を貫き、自己プロデュースする選手。

古風なカッコ良さを追いかける選手。
そもそもGTO戦略に遠すぎる選手...。

しかし、彼らはトップの麻雀プロで研究会も行っているらしいです。そんな人たちの中に、各人の麻雀の特徴を考慮し、exploitの策を講じている人が少ないわけは無いと思います。

(具体的には3→5切ってのリーチだから黒沢さんに逆に4は通りやすいことを考慮すべきだったとかASAPINさんがツイートしてたと思いますが、これは明確なexploit狙いの意思の表れでしょう)

特に対戦相手の数が少なく、各人のこだわりが強く見受けられるMリーグの舞台。exploitするには絶好の環境が揃っています。

無駄なこだわりはよりカモにされて麻雀人生を奪われるかもしれない世界。かつてそんな
環境で麻雀を打ったことがある人が世の中にどれだけいるんでしょうか?自分には想像もつかないです...

Mリーグでの打牌一つ一つに他人には理解の及ばぬあの卓の中にしか無い決意、思惑が必ず隠れています。それらを踏まえて見ると、ただのミスに見えるような一打も考慮する余地がグッと増します。
あらゆる打牌を持ち上げることも、批判することも、このMリーグという舞台の特異性を理解した上ですべきだと考えます。僕たちとあそこに座っている雀士では見えているものが違いすぎるんです。

④最後に

麻雀におけるexploit戦略を散々持ち上げ、散々その大切さを論じた後ですが、最後にもう一つ。

麻雀にGTO戦略が現れ、皆がそれをこぞって真似するようになったらどうなりますか?
きっとGTO戦略からズレた分だけ負けていく、みんな似たようなプレーヤーになっていく。
Mリーガーが全員そういう人になったら...単純につまらなくないですか?

麻雀というゲームが魅力的であるために、自由なものであるために、クリエイティブなものであるために。exploit戦略を考えることが必要なんです。

⑤あとがき

自己満足の文章をお読み頂きありがとうございます。また何か忘れたくないことがあったら文章にしたいと思います。

今のところ考えてるのは

・GTO戦略部分とexploit戦略部分が混在した結果生まれる「データ」

・この文の①で出てきた強者が勝つための「盤外戦術」

・雀荘というビジネスについて思ったこと

・麻雀のマナーの理想と現実、Mリーグと合わせて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?