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連座

男はJR飯田橋駅から東西線飯田橋駅へと歩いていた。

帰宅ラッシュ時、これでもかという人混みの中、自分以外の風景が突然すべてモノクロになった。

グレーの世界で、正面から、唯一着色された人間がこちらへ歩いてきているのを認めた。

30mほど先から歩いてくるのは、宇宙服を着た、身長200cmはあろうかという人間だった。

男はその場から動けなくなった。

宇宙服を着た人間はヘルメットを被っていて、ヘルメットは鏡面仕上げのようになっており外側から中身が確認できない。

もう男との距離は10mほどになっていた。

宇宙服の背中には上半身と同じ大きさのボンベのようなものがくっ付いていて、持ち主がそこから伸びている長い管をショットガンのように構えていることがわかった。

空気銃?火炎放射器?猟銃?

男の脳内の武器フォルダが全開になると同時に生命への危機感が頭を駆け巡ったが、身体はびくとも動かなかった。

もう宇宙服の持つ管が男の身体に触れられるほどの距離まで来てしまった。

極端にこもった声、ニュース番組やドラマで使われる低いほうのボイスチェンジャーのような声で、宇宙服の人間は男に言った。

「ふるさと納税やってる?」

…ふるさと納税やってる?

…ふるさと納税やってる?

「あ、え、は、えっと、オンラインで控除の申請をしています」

男は極度の緊張とパニックで、Qに対するAではないことを口走った。

「会話になってない」

宇宙服の携えた長い管は男の頭部を向き、先端から勢いよく水が飛び出した。

どうと仰向けに倒れた男の額には小さな風穴が空いており、頭部を中心に血溜まりが広がった。

骸に背を向けて元の方向へ歩き始めた宇宙服がヘルメットを2回コンコンと叩くと、世界は彩りに満ちた。

一方その頃、池袋駅の東口側コンコース(キャンメイク東京のポスターがいっぱいあるとこ)で寝食していたある老人が「宇宙服のあんちゃん、クリーンハンズの原則って知ってるかい?」という強い思念を飛ばした。

宇宙服はゆっくりゆっくり振り返り、東西線から有楽町線のほうへ歩きだした。

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