【ネタバレあり】Thisコミュニケーション感想

※This コミュニケーション12巻までのネタバレがあります。

まず、一言で表すならば「盛大な蛇足の物語」ですかね。

デルウハを語るだけなら、第1話と最終の2話——自害をするところまでを読むだけで事足ります。
何故なら、デルウハの目的や理念はそれだけのことだから。

しかし、ハントレスという存在のせいで「コミュニケーション」の必要性が発生してしまった。
コミュニケーションとはすなわち信頼関係の構築であり、相互理解の橋渡しなのです。
たとえ手段が殺人だとしても、それはコミュニケーションだった。
やはり何事においても真摯に向き合うというのは、大事なのです。

だからこそハントレスたちは、デルウハのコミュニケーションを受け入れてしまった。
仕方のないことだった、結果的に良くなっていたと、そしてさらに変えられるものと判断してしまった。

その判断は決して間違いではなかったと思います。
事実として、デルウハはハントレスたちを生かすか殺すかで「迷った」。
今まで即断即決で、先手を打ち続けるデルウハが、後手に回りかねない「迷い」を見せたのは、やはりハントレスとのコミュニケーションが原因でした。

イペリットの正体や性質について、ほとんどすべてを教えてもらった今なら、ハントレスたちと世界を救えるかもしれない。
とはいえ、結局それは掻き消され、デルウハは完全に抹消し総取りを成したのですが。

当然、自分を別次元に飛ばしてくるような生物とは戦ってられないですよね。
実際にハントレスたちは全滅(デルウハが情報を与えていても、おそらくは結果は同じだったと思います)。

だからと言ってデルウハがハントレスたちを信頼していなかったわけではなく、むしろその逆でしょう。
デルウハは今までの壮絶なコミュニケーションに基づき、完璧に信頼してあの判断を下したのだと思います。
故に総取りした後も、デルウハは一度だけハントレスのことを考えたのでしょう。
帰ってくる可能性を、想像したのでしょう。

イペリットについて理解したデルウハが、帰って来るのがどれほど困難かを理解できないはずがありません。
それなのに、万が一を考えてしまった。
そして帰って来るとしたら、相当に「強く、聡く」なっているということも。

もしかしたら、どこかでハントレスが戻ってきて世界を救うことを予期していたのかもしれません。
ただ、それはまったく合理的ではない。
だからこそ真剣に吟味したりはしないし、一日三食のほうが大切だった。

もちろんこの想いが、最後のアレに繋がったわけではないでしょう。
アレはただの反射で、間違いないと思います。
だけど、デルウハの愛を否定するものではないとは思います。

愛の定義なんて結局のところ曖昧なので、そこに情は宿っていなかったとしても、愛していたという言葉は使えるものと私は思います。
少なくとも信頼はしていた。と言えば、わりと肉薄するでしょうか。

そんなデルウハの「愛」に、ハントレスは勝手に「情」を見出した。
あるいは「愛」のことを、コミュニケーションと言い換えてもいいかもしれません。

愛もコミュニケーションも広い言葉で、一人一人が自分のケースに当てはめたり、色々と妄想しないと実像が見えてこないものです。
それに、その見えてきた実像は仮初の100%で、本当は1%も投影できていないものなんてことは、当たり前のことなのです。

だけど、その仮初の100%が『Thisコミュニケーション』では世界を救った。
それはきっと、コミュニケーションが、盛大な蛇足があったからこそ生まれたのでしょう。

壮絶なコミュニケーションの一つの結果。最高の漫画でした。


ところで、これがまだ1000万部売れてないの普通にバグ。アニメ化されてないのもバグ。
3クールだとちょい長いけど、2クールだと足りない感はある。
制作会社はWITがいいと思います!








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