書く事が思いつかないのと現実逃避で作り上げたソラましSS

ガタガタと揺れる電車の振動に身を預けながら、虹ヶ丘ましろはぼんやりと外の景色を見る。
窓から見える夕空に美しいと感じつつ、何故だか寂しいという気持ちも同時にこみ上げている。

今の自分はとても充実している筈なのに

ましろは今、美術科あるの高校に通っている。絵本作家になる為にしっかり絵の事を勉強したいという思いからだ。
学校にはそれぞれ理由やなりたいものは違えど夢に向かって一生懸命にがんばっている同級生や先輩が沢山いて、良い刺激をもらいながら毎日がんばっている。
でも、それなのに、今のましろは何か足りない。身体の真ん中にぽっかりと穴が開いているような気持ちになっているのだ。

(なんでだろう………?)

揺られながら、移り行く景色を見ながら考えるましろ。
いつしか電車が駅に着き、再び動き出す。そしてまた視界がどんどんと変わって行く。
考えたって答えは出なかった。いや、違う。本当は理由なんてわかっているのだ。

最近、大切な友達に会えていない。

別に何か特別な事情がある訳じゃない。ケンカをした訳でも無い。
ただ、お互いに忙しいというか………目指すもの。なりたい自分になる為にがんばっているだけ。仕方がないことなんだ。
出会って、一緒に生活をして、戦って………そんな日々が終わった時も共に過ごす時間は減ったけど、それでも休みの日は殆ど一緒に過ごしたり、定期的に会っていたのに………少しずつ間隔がひらいていって気が付けば全然顔を見ていない気がする。
ずっと同じ様にはいかないのはわかってる。住む世界も、目指しているものも違う。いつでも会えるけど、いつでも会える訳ではない。そうなってしまうのはどうしようもない。
そう、これは仕方がない………………ずっとそうやって、何度も言い聞かせいる。自分を納得させようとしている。
でも、空いた心が埋まる訳じゃない。みんなと…………彼女と共に過ごす時間はましろにとって何にも代えがたい大切な物であると改めて気づかされた。ましろは抱えていた鞄に顔を沈めた。自分の気持ちが溢れ出ないように
でも、想いの全てを止める事は出来なかった。
「……………ソラちゃん」

誰にも聞かれないぐらいの声の大きさで今、会いたい人の名前が漏れた。今日は一段と電車の揺れを大きく感じた。



電車がソラシド市に到着した。
今日は自分が晩ごはんを作るとおばあちゃんに言ってある為、買い物をして帰らないと…………
そんな事を考えながらましろがいつも通り改札を抜けて駅を出ようとすると

「あっ!ましろさーん!!」

自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。しかもその声は今1番聞きたかった、会いたかった人のものだ。
自然と顔が上がる。声の聞こえた方に目線が向く。
そこには、ましろにとって大切な……大切な友達。ソラがいた。
雑踏の中、2人の視線が合う。ソラは前と変わらない笑顔で、純粋に嬉しそうにましろの方をまっすぐに見つめていた。
その姿を見て、ましろは思わず周りに目もくれず彼女に向かって真っすぐに走り出して…………そのまま勢い余って飛び込んでしまった。

「ま、ましろさん?」

驚いたソラだったがしっかりとましろを受け止めていた。
同時に彼女の様子がおかしい事にも一瞬で気が付いた。
一体どうしたのだろう?心配しながらましろの事を見つめるが、ソラの胸に飛び込んでそのまま顔をうずめているので表情が見えない。
このままにしててもどうにもならない。とりあえず声を掛けようと思った直後
「ソラちゃん…………おかえり」
ましろの声が聞こえた。同時にぎゅっと身体を抱きしめられた。
その一言と手にこめられた力の強さ、そして伝わってくる温もりでソラは彼女の気持ちが何となく分かった気がした。
「ただいまです。ましろさん」

だから、真っ直ぐに言葉を返して。ソラもましろの身体を抱きしめた。



人目をはばからずに大胆な事をしてしまった…………
顔を赤くしながら街中をソラと並んで歩くましろ。
当初の予定通り買い物をしてから帰るので2人でスーパーへ向かっている最中である。
「エルちゃんが唐突にこっちに遊びに来たいと言い出しまして………」
という話から、お互いの最近の出来事を口にしていく
久しぶりだけど、こうやって会えたらあの頃とまったく変わらない2人でいられる。ましろはそれがなんだかすごく嬉しかった。
そう思っていると、ふとある事に気付く

「ソラちゃん。ちょっと背伸びた?」
元々ソラの方が高かったが、どんどんと伸びていっている気がする。今ではましろとの差は頭一つ分に近い。指摘されたソラは照れくさそうに笑った。
「自分ではあんまり自覚ないですけど、そうみたいです」
「なんだか、会う度に大人っぽくなってるなって」
「そんな事を言ったらましろさんだって、会うたびキレイになってますよ!」
「そ、そうかなぁ………?」
思わず両手を頬に当てるましろ。そうは言われたがまったく実感は無い。それよりもソラに真顔で言われた言葉が嬉しくもあり、恥ずかしくもあって照れてしまう。
つまり、お互いから見て2人とも成長してるんだ……という事実がなんだか寂しい気持ちにもさせた。
「ずっと変わらないものなんて、無いのかもしれないね」
ポツリと呟くましろ。これからも自分達は大人になっていく。そうしたらより見える世界は広がっていって、元の居場所に戻れなくなるぐらい遠くへ行ってしまうのかもしれない。
(やっぱりそれって仕方がない事なんだよね……)
そう考えていると、ましろの手をソラが握った。

「大丈夫です」
「えっ……」
「わたしにとってましろさんが大切な人だという事は絶対に変わりません」
力強い言葉と笑顔を見せるソラ。それに嘘偽りなどない事は当然ましろにも分かる。でも、それでも
「ましろさんは、違いますか?」
「………そんな事ないよ。でも、少し不安なんだ。こうやってソラちゃんと一緒にいる時間が少なくなると」
同時に手を握り返すましろ。しっかり分かってる。会えない時間が増えたってこれまで紡いできた思い出は無くならないし、大切な人であることにも変わりはないと
それでもやっぱり、一緒にいられないのは寂しい。もっとあなたの隣にいたい。そう思ってしまうのだ。
 (なんか………わがままだなぁ)
自嘲的に心の中でつぶやくましろ。こんな自分がちょっと嫌になってしまう。
きっとソラも困っているだろう………なんて考えていると
「実はわたしも、ましろさんに会えないのは寂しいです」
彼女はそう言い、少し恥ずかしそうに口を開いた。
「さっきも言った通りずっと大切な人なのは変わりません。でも、だから、もっと一緒にいたいなって思ってしまう時があるんです。ましろさんだって毎日大変なのは分かってますけど………わがままですね。わたし」
照れ笑いを見せるソラに対し、ましろは首を横に振った。
結局、お互い同じような事を思っていたという事らしい

「わたし達もしかした全然変わってないのかも」
「ですね」
「…………ソラちゃん」
「はい」
「今度はわたしが会いに行っていい?」
「勿論です。いつでも来てください」
「うん。ありがとう」
「これからも出来る限り、沢山一緒にいましょう」
「うん、これからも………ずっと」

そんな会話をしながら手を繋ぎ、2人並んで歩いて行った。
空の色は暗くなり始めたが、今はとても明るく見える気がした。







一方その頃
「少年、エルちゃん久しぶり〜」
「うん!あげは、ひさしぶり」
「久しぶりって……最後に会ったのたった1ヶ月ぐらい前ですよ?」
「前は毎日顔合わせてたんだから、その頃に比べたら久しぶりって感じしない?」
「そもそも昨日だってミラーパッドで通信したじゃないですか」
「そうだけど、やっぱ画面越しとこうやって集まるのだと違うじゃん」
「うん。エルも嬉しい!ツバサは?」
「えっ!?ボクもまぁ、嬉しいと言えば嬉しいですけど………」
「ふふっ、ありがとう2人共」

なんて話をツバサとあげは、エルでしていた。
ちなみに、ソラとましろはほぼ毎日通話しているのであった。














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