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鏡の中にある世界

僕の母親は美容師で実家が美容室をやっていました。
小学生のころは良く母親に店に入ってくるなと叱られたりもしていました

ただ良く店を出入りしていたのは昼間だけで夜には、
あまり近づきたくありませんでした。
その頃に体験した話です。


僕の家には大きな鏡が沢山ある
家が美容室でお客さんが沢山きても大丈夫なように
大きな鏡が沢山あるんだ。

いつも昼間はお客さんの姿を映し出している鏡
その時間は人も沢山いるし、別段何も感じたことは無い。

小学校のころ店に顔を出すとお客さんの中にお菓子をくれたり
お小遣いをくれたりする人もいて良く店に顔を出していた。
その後で母親に必ず怒られているんだけど。

でも夜の店に一人で入るのは、ずっと怖いと思っていた
自分の姿がアチコチに映り込んで、それが何となく気持ち悪かったから。

ある日、僕は夜遅くにどうしてもジュースが飲みたくなった。
冷蔵庫にも入っていない。

どうしよう、
外の販売機にジュースを買いに行けばいいかも。
この時はなぜか外に買いに出れば良いと思ったのだ。

店の近くに販売機があったので、一っ走りすれば買ってこれると思った。

そう思って夜の店に入ったとき、妙な気配を感じた
どこか近くて遠いところに誰かがいるような気がした。

でも気のせいだと思いなおした
いつも僕自身怖いと思い込んでいて、そのせいで何も無いのに
気になるんだ。

初めは怖かったけれど一度でも買いに行くと
その行為にも慣れていったのかもしれない。
この後から時々、夜でも店からの入り口を通って
買い物に出るようになっていたんだ。

中学に上がった頃には、
店で感じた気配の事なんかは忘れていたかもしれない

朝だろうと夜だろうと普通に店からの出入りしかしなくなっていた。
母親も小学校のころのようには叱ったりもしなかった。

中学に入ると夜中まで起きるようになっていた。
夏休みにも入っていたし、良く夜中にコンビニ辺りに
食べ物を買いにいったり本を立ち読みしたり
出かけるようになっていた。

その時も夜中にお腹がすいてコンビニまで
色々、買いに出かけようとしていたんだ。

不意に小学校のころの記憶が蘇った

そういえば昔、何かの気配を感じたっけ
小さい頃だし怖いと思い込んでいたんだろうな

そう思いながら店に入った
・・・!!

間違いなく誰かの気配を感じた
誰かいる??

嫌、違う?
気配だけじゃない

こちらを見られている気がする
視線を感じるのだ。

だが、おかしい
そんなはずはない

今は夜中で、ここは自分の家の店の中なのだ。

静寂の中、しばらく動かなかった。
嫌、動けなかった。
自分の唾を飲み込む音だけが聞こえた。

他には何も聞こえない
そう、何もいないはずなのだ
何もいない。

店の中を振り返ることもなく
そのまま外出し買い物に出かけた。


何かあるのかもしれない
その何かを確かめた方が本当は良いのかもしれない。
ある日そう思ったんだ。

意を決して夜中に店の中を調べてみようと思った。

何日目だろう
店に入った瞬間、
確かに何か気配を感じる

本当はずっと感じていたんだ
その気配のする方向だけは。
ただ、怖くてそちら側に目を向けなかっただけ
確かめるしかない。

その場所を確認するしかない
店の奥にある一枚の鏡
その鏡の中の奥だ。

やはり何かいる
ボーッと白っぽい影のようなものが
ふらふらと歩いているのか

そのままゆっくりと、こちらを振り返った

その白い影と目が合った刹那
体が金縛りのようになり全く動かない
目を逸らすことも出来ない。

その白い影が鏡の奥の方から
こちらへと近づいてくる

マズイ、このままでは絶対にヤバい

白い影が鏡に張り付く
出ようとしているのか?

!!
物凄い音がした
鏡にひびが入ったのだ

その音で我に返った
我に返った?
分からない、そう感じたのだ

体が動く
一目散に逃げるしかなかった

ドタドタと部屋中に音を鳴らしながら
階段を駆け上がり自分の部屋の中に逃げ込んだ

あまりの恐怖にガクガクと体が震え
声にならない嗚咽をだしていた

一晩中寝れないまま朝を迎えた。

母親が朝起きてくるなり
昨晩の大騒ぎを叱りに来た
気づいてはいたようだった。

僕は昨晩あったことを説明しようとした、
でも取り付く島もない感じだった
全く信用していないのだ。

夢でも見たんでしょと言われた。

実際に朝になって昨日の鏡を見てみたが
割れるどころかひびすら入っていなかった

あれは本当に夢だったのだろうか?

これ以上母親に何かを言っても仕方がないと思い
何となく婆ちゃんに話をふってみた

婆ちゃん曰く

この近くに昔から霊魂の通り道があるのだそう
しかも鏡はその通り道の近くにあると
その場所を映し出してしまう時があるらしく
向こう側からこちら側に戻ろうとすることがあるらしく
それを防ぐために昔から鏡は閉じておくのが習慣で
だから昔からある大きな鏡などは布がかけてあったり
三面鏡なんかになっていて扉がついているらしいのだ

生(せい)にまだ未練がある時はまっすぐ歩かないことがあるから
気を付けるんだよ

と言われてもなぁー
もっと早く教えてよ
婆ちゃん!

後から気づいたのですが、
この出来事はいつも夏休み
ちょうどお盆の辺りの出来事だったのは
偶然だったのかもしれません




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