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詩 _ 「夕方の空」

朝がきて全身で光をうけて 夜が去ったことに安堵する その光は山をのぼるように輝いて 山をくだるように輝きをゆずる きみががんばった一日と混ざり合うために 光は高さを変えてきみに寄り添う うつくしいきみの一日と作った夕方の空

    • 詩 _ 「春を迎えるとき」

      冬と春の境目に立ち 遠くを見ている その先にはきっと開き始めただろう扉 冬のなごりのひんやりとした空気のなか 新鮮な緑のにおいが過ぎてゆく 数センチほど開いたのだろう やがて風に揺らされた花の気配が ふんわりとやってくる そうしたら溜め息をついてもいい 黄色い蝶が片付けてくれる 春の入り口にコートのすそをひっかけた冬が ぼくらの憂いを抱えて 春の分量が増えたら扉を閉める そのときにはもう目を凝らさなくても春が見えている

      • 詩 _ 「おはよう」

        月が輝くから目を閉じる 闇が濃くなっていく 深く潜って体を丸めていけば 雑音から遠のく 濃密な光でさえ届かないぐらいの場所 手のひらを広げてとじる ペンキのようにどろりと動くのは どこまでが自分なのかわからない 潜れば潜るほどのみこまれ 闇は一体化したいのだと知る まわりにいる者たちは きれいごとを重ね着しながら 近くにいるふりをしているだけ それなのに闇はわたしを求めている 氷がとけていくようにゆっくりと わたしを覆い尽くす あとどのぐらいで きれいな球体になれるだろ

        • 詩 _ 「ここにいるのは」

          冬がゆらゆらと天から降りてきている やっと灯った色ものみこむ白 春が天上のぬくもりのなか 白い花を吹くと 風は冬のコートを翻した わたしはあたたかな手のひらで 花びらをうける 儚く消える春からの便り

        詩 _ 「夕方の空」

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          詩 _ 「永遠」

          懸命に守ってきた炎が 小さくなっている いすにすわって ただ炎を見ていればいい日は 一年のうちにあまりない ときに風は強くて 立ち上がって 炎のまわりをぐるぐるする 消えないように ときに雨は痛いぐらい降るから 手のひらで受け止める そうすると凍えそうになる かなしくて そんなことを続けてきたけれど 気が付いてしまった この努力はおかしくないかなって もうこのいすから立ち上がらないことにしようかと 思い始める 炎が消えるのなら それが運命だから 受け入れることが答え

          詩 _ 「永遠」

          詩 _ 「角砂糖」

          誠実さを言葉だけでふりまいて 奇妙な笑顔で上から見ている その人たちのあしもとには積み上げた角砂糖 目をこらしてみても 自慢だという宝石は 暗くてよくわからない 倒れそうなぐらい 積み上げていくのは 何が楽しいのか 想像力を働かせてみても 悲しくなるばかり 角砂糖は少しずつ欠けていき グラグラとあしもとを不安定にしはじめる 落ちてくるかけらで 甘い紅茶をいれよう そして大切な人の話に 同じ高さで耳を傾ける もう見えなくなった角砂糖の山のうえ 見上げることはもうしな

          詩 _ 「角砂糖」

          詩 _ 「春への関門」

          凍った空気のなかをザクザク歩く 真っ白で見えなくなったら 今朝のみこんだ朝日を 手のひらから少し解放して 目のまえを透明にする 視界の中心から外へ向かって 空気がとけていく様子を見つめながら 見えなくなったのか 見ないようにしたのか 考えながら足もとを見た この小さな花はいつから咲いていたのか 振り向こうとしてやめた 透明になった円の真ん中に口づける 落ちていく真冬の壁はきっと春への関門 のみこんだ朝日を少しずつ解放しながら いつだって振り向かずに進む 春に会うために

          詩 _ 「春への関門」

          溜め息と涙のあいだ / 短歌5首

          溜め息と涙のあいだ / 短歌5首

          詩 _ 「手紙」

          きみを失ったことに向き合えず 大丈夫だといいきかせていた それでのりこえられると思っていた いちにち いちにち と過ぎていくうちに きみとの時間があたたかくぼくをてらす ひざしのように 寒くなるまえに届いた手紙には ぼくが返事を送る場所はもうない わかちあったものは かたちをかえずに ぼくの心臓をかたくする 記憶は変化を知らぬことのように きみとの思い出をみせてさっかくさせる まだ手紙が届くかのように 現実にするには自分をだましすぎたから もう泣き方もわからない

          詩 _ 「手紙」

          詩 _ 「雨音」

          雨の音がする ひとりだから それだけをうけとめる ひとりじゃなければ だれかの声や動作の音のなかに 雨の音が降るから これほど気にならない この雨の音には混ざり合うものがない ひとりだから 何をしても 雨の音は消えない そのうちすべてが雫になり 何もかも忘れてしまえているのかもしれない

          詩 _ 「雨音」

          詩 _ 「鳥」

          大地を歩いている 見渡すと世界は囲まれていて 出入り口が決まっているかのよう 突然おりてきた風にさらわれないように 翼をひらいてとびあがる 羽ばたいて 大地から離れた 見下ろした世界は広くて どこへでも行けるかのよう ぼくは大地にも空にもふれながら 囲まれた世界を見ている

          詩 _ 「鳥」

          詩 _ 「涙のかわりに」

          甘いひとつぶをひとつふたつと瓶につめる 冬が来たからもう冷蔵庫にいれなくてもいい 泣きたくなったときに こっそりカバンのなかから取り出して 食べるときにとけていることもない いろいろなことをあきらめるのに 不安も怖さもあきらめることを知らない 365日が欠けていくたび育っていく この瓶が空になれば 楽になれるのか 冷たくしてわかりにくかった心は 365日の残りに押しつぶされそうになる ひとつぶ口にするたび 涙がこぼれおちないように 甘さに哀しみをまぎれこませた

          詩 _ 「涙のかわりに」

          秋に手をのばす / 短歌5首

          秋に手をのばす / 短歌5首

          詩 _ 「呼吸する涙」

          胸の奥がかたくなる どんどんかたくなる もうこれ以上かたくなるのなら 息をすることはできない 胸にあてた手のひらが そんな声をきく ひびわれてぽろぽろと崩れるように ひとみから小さくこぼれてくる 胸の奥にいた涙がかなしんでいる わたしはやっと泣けたのだと知る ひとみからかなしみが転がり落ちる 涙が呼吸をしているから 胸の奥はやわらかくなる 手を広げて深呼吸をした

          詩 _ 「呼吸する涙」

          詩 _ 「涙が落ちる音」

          心の奥から音がきこえる 大きな音か小さな音かわからない だれかがさけんでいるような気もする まいにち会うひとたちとは へだたりがあって 感情は一方通行ばかり 大切にしたいひとをさがしている 大切にしたい何かをさがしている 毎日想って うれしいことやかなしいことを分かち合う そこがわたしの中心で ぐらりと傾いても 中心を知っているから 戻ることができる そうか この音は涙が落ちる音 わたしのなかを ひとつぶずつまっすぐに落ちている けして届くことのない音

          詩 _ 「涙が落ちる音」

          詩 _ 「そよ風と雷」

          わたしのまんなかで 哀しみがまるくなっている そよ風にゆれるときは ゆっくりと呼吸をして まるが乱れないようにする 雷が鳴るときには おおきく息を吸って 居場所を広げる 雷に見つからないように ときどきふるえそうになるから 哀しみが揺れてしまいそうになる 雷に見つかってしまえば もうおおきく息を吸うことは無理だろう するどい光に視界がせまくなり 希望は見えなくなる わたしはしずかにしずかに おなじ姿勢で哀しみを守っている

          詩 _ 「そよ風と雷」