恨まず、妬まず、自分を信じて。

現在高校3年性の息子がいる。彼は中学の途中まで身長が低く、常に最前列に並んでいた。確か、中学入学時で130cmあるかないかだったと記憶している。
そのせいか、友達達からいじられることが多く、口には出さなかったが、内心色々と悔しい思いをうちに秘めて過ごしていたように思う。

そんな息子だが、中学で急に身長が伸びだして、3年生になる頃には170cmを超えるまでになった。そして顔つきもシャープになったのが良かったのか、お陰様で高2から芸能事務所にお世話になることに。
ただ、この1年間は、ヒーロー物や恋愛ドラマ、漫画を実写化した舞台、大河ドラマなど、運が良いのか新人なのに色んなオファーをいただきながらも、コロナやテスト、その他、東京へ行くタイミングが合わずでオーディションや打ち合わせには参加できないことばかりだった。どれも主役やビッグな番組だけに逃したことへの焦りの表情が常に浮かんでいた。

それでも彼にとっては初めて出来た夢。道のりは険しいだろうが、高校を卒業して上京し、悔いの残らないように頑張るとの事。親として、正直売れるか売れないかはどちらでもいい。本人の挑戦や人生の経験の場が、たまたまこの道だったというだけ。数年後、違う道に乗り換えても良いと思う。


さて、前置きが長くなったが、本題はこれから。

平和的で怒らない息子を小学生の頃からイジってきた同級生達はというと、やはり芸能界へ足を踏み入れた息子を笑い、
「どうせお前は売れない」
と終始小馬鹿にしていた。さらには同級生だけではなく、教師までもが
「俺はジャニーズに入れたけど教師になりたかったからこっちを選んだだけだ。お前とはレベルが違う」
などど大の大人が17歳の子供に向かって意味不明な対抗心をむき出しにしたりと、息子は、学校で笑われてる事を自覚しながらも平静を装い、1人演技の練習を挫けずに部屋にこもってやっていた。
(それが評価されて、上に書いたようなオファーが来たのだ)

しかし、ここに来て周りの手のひら返しが起きてるらしい。

卒業間際になってから、散々息子を馬鹿にし笑っていた同級生が
「お願いがあるんだけど、事務所に頼んで俺も芸能界に入れてもらえるようにしてくれないか」
などと何人かが言い寄ってきてるというのだ。

それに対して日頃強い事を言わない息子が、
「それは出来ない。スカウトされるか事務所のオーディションに受かって正々堂々と入ってくれ」
と言ったそうだ。遊びじゃない。発声練習や演技レッスン、怖い大人達の前でそんな事を継続してやれるのかと、甘い考えの同級生達を突き放したらしい。

別に息子が偉いとかじゃない。いい気になってるとかじゃない。だって笑われても一言も言い返さずに目の前の夢から目を逸さなかったのだ。
でも周りは、今まで人を笑い馬鹿にしてきたのに、そんな時だけ言い寄ってくる芯のない人間性。高校生といえど、そんな情けない生き方を選んで生きている情けなさ。

今まで息子の事をのび太君みたいだなと思っていたが、彼は彼なりに芯があったのだ。
正直僕が羨ましいと思うくらいの有名タレントや手の届かないレコード会社社長とzoomで話したりしている息子。それでも一言も自慢したりせずに、淡々と言われた課題をこなす日々。

何を言われても、人を恨まず、淡々と自分のやるべき事をこなす。人を恨んだり嫉妬したりする必要はない。自慢したり得意げになる必要もない。人がいての自分。自分あっての人。お互い尊重し合い、お互い手本となるような関係性を築けばいい。

決して恥ずかしい言動をするような生き方、人間にはならない。間違ってもいい。堂々と前を向けないような恥ずかしいことだけはしない。

息子を通じて、僕自身がそれを学んだ事だった。



話の流れ的に、息子が孤独なような文章になりましたが、実際は友達も多くてまいにち楽しく学生生活を過ごしております。


身バレのため、息子の話はこれで最後にします。

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