乗り物
エスカレーターに乗っているとすぐ後ろから「あっ、そうか。関西は東京と逆だったわ」と声が聞こえた。
関西で肉と言えば牛肉だから、カレーは常にビーフカレーであって、豚肉を使ったカレーを食べたければわざわざポークカレーを頼む必要があるのに、逆に東京ではわざわざビーフカレーを頼まなければ牛肉を使ったカレーが出てこないのである。
違う。そうじゃない。今ここで話題になっている「逆」はそのことではない。もちろん、エスカレーターの左右どちら側に立つかの話である。
肉の話題が出たついでに横道にそれるが、都会から離れた地域を車で走っていると、ときどき街道沿いのステーキ店やとんかつ店の看板に、牛や豚のイラストをあしらっているものを見かけることがある。かわいくデフォルメされた牛や豚がフォークとナイフを持って満足そうな笑顔を浮かべているあれである。あの手の看板を見るたびに僕は大いに困惑する。いいか。お前たちは食べられる側であって食べる側ではないんだぞ、どうして呑気にフォークとナイフを持って笑っていられるんだよ。ああいう看板を描く人はそのあたりをまったく考慮しないのだろうかと気になってしかたがない。運転中にあれこれと余計なことを考えてしまって危険なのである。
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