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罰・日本沈没

illustrated by スミタ2021 @good_god_gold

 瀟洒な書斎机の向こうに座っている男は、腕に大きなペルシャ猫を抱えていた。真っ白なこの猫も、主人の持つ権力の大きさは知っているようで、どこか小馬鹿にした目つきでこちらをじっと見ている。男の顔には額から鼻にかけて大きな傷跡があり、左目には黒い眼帯をつけていた。
 机の左右にはサングラスをかけ自動小銃を手にしたスーツ姿の男がニコリともせず立っている。
「わかっているだろう。わたしは一度のミスは許す」
 薄暗い部屋の中に低く響く声には、まったく感情が含まれていないようだった。
「だが二度目はない」
 そう言って男は片手を伸ばし、机の上のボタンを押した。
 バタン。
 激しい音が鳴って、大理石の張られた床の一部に穴が空く。
「あああっ」
 悲鳴を上げながら、日本はその穴から地下へと消えていった。
 キー。
 開いた床の一部がゆっくりと閉じる。
 もうそこには何もない。
 それまで日本列島のあった場所には、ただ海が広がっているだけだった。

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