間違われた男

 電話のベルが鳴った。事務所の固定電話である。書き物にせよ映像や音楽の制作にせよ、何かに集中していると僕は電話が鳴っていることにさえ気づかないのだけれども、たまたま手を止めて大きく伸びをしているタイミングだったから気づいたのだ。電話は鳴り続けているが事務所には僕以外に誰もいない。さてどうしよう。少し迷ったものの、いつもなら出ない電話になぜか出てしまった。

ここから先は

2,382字
この記事のみ ¥ 160

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?