コロナワクチン Vs. 変異種の闘い

関西を中心にイギリス型変異種が猛威を振るい始めた現在の日本ですが、従来型よりも感染力が強いといわれる変異種に、ワクチンは効くのでしょうか。4月24日付のニューヨークタイムズ紙に、ワクチンに関する疑問に答える記事が掲載されています。("How Good Are the Vaccines at Protecting Us From the Coronavirus?" New York Times, late ed., 19 Apr. 2021: A8.)以下、同記事を参考にまとめてみます。

 英国型変異種

イギリス型変異種の特徴は、細胞に付きやすく、感染力が強く、さらに症状が悪化するスピードも速い点にあります。また、感染者が吐き出すウィルス量が従来型に比べかなり多く、感染力も長期に渡り維持されるようです。

幸い、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、さらにロシア製ワクチン・スプートニクもイギリス型変異種には有効だそうです。ただし、イギリス型変異の起源の地イギリスで感染者が現在急減しているのは、ワクチンとロックダウンの相乗効果といえます。社会に公衆免疫がつくまでは、数は少ないようですが、ワクチン接種者が感染するブレークスルー感染の危険もあります。一方で、ワクチン効果によって重症化するケースはごく希で、人によっては無症状で収まるとのことです。

南アフリカ型変異種

149人のブレークスルー感染者を対象とするイスラエルでの調査では、南アフリカ型変異種の症例が多く見られるようです。ただ、2回目の摂取を済ませてから2週間を経過した後のブレークスルー感染は報告されていません。イスラエルでは、ファイザー製ワクチンが主として使われています。

また、血栓が起きる副作用の問題で一時使用停止となったジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンですが、南アフリカ型変異種に対して強い抑制効果を示しています。(4月22日現在、欧州では使用再開の予定。アメリカ、南アフリカでも同様の見込み。)

ウィルスの変異は各地で起きており、ニューヨーク型、カリフォルニア型もあるようですが、感染力は従来型と変わらないようです。一方、南アフリカ型と並び感染力が強いと言われているのが、ブラジル型変異種です。

医学ジャーナル『セル』誌掲載の論文では、南アフリカ型にならびにブラジル型変異種に対するワクチン効果が、従来型や英国型に比べて劣ることが指摘されているものの、一定度の効果は維持されるようです。

ワクチン効果率

ところで、ワクチンの効果が90%であるとか95%であるとの報道を目にすると、残りの5%ないし10%の人は感染すると思うかもしれません。しかし、これは間違った解釈です。

たとえば、ファイザー製ワクチンが95%効くというとき、治験データは以下のようになります。21、728人のワクチンを打っていないグループからの感染者は162人でした。一方、21,720人のワクチン接種者のなかで感染したのは8人です。8を162で割ると0.049.つまり、ワクチン接種者は非接種者に対し、約5%の人たちが感染するということです。逆にいえば、95%の人たちは感染しません。これが95%の有効性ということです。100人接種すれば5人が感染するという意味ではないのです。

ですから、変異種に対して多少ワクチンの効果が落ちたとしても、その効果は依然として絶大なものといえます。ウィルス変異やブレークスルー感染といった言葉に過剰に反応するのではなく、正確な情報を得ることこそが、この感染症を「正しく恐れる」ことになります。

一方で、ワクチン接種を受けた人に関しては、多くの人々が摂取を済ませて公衆免疫が成立するまでは、やはりマスクをつけソーシャルディスタンスを維持するなど適切な行動をとる必要があります。それは、ワクチンを打っても無症状感染の恐れがあるからです。まだワクチンを打っていない未接種者を守るためにも、従来通りの対策は必要なのです。コロナ感染症の終息に向けて、為すべきことは多く残っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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