リハビリ③ 迷子の観光客と駅前を3時間彷徨った話
仕事終わりに軽くて呑んでほろ酔い気分の夜。
終電は逃してしまったのでとりあえず駅前のタクシー乗り場に歩く。
タクシーが来るのを待っていると、韓国語でいろんな人に声をかけては無視をされる困り顔が見えた。
自分も母国語以外話せない。
話を聞いてみるべきかと少し悩む。
待てど暮らせど来ないタクシー。
無視され続ける観光客らしき人。
どうせ終電もないし、タクシーも来ない。家に帰るのが数分遅れるだけと声をかけてみる。
しかしお互い何も伝えれない。
2つに増えた困り顔。
すると突然見せられたのはカレーおばさんが経営するのホテルのルームキー。住所・電話番号・部屋番号なし。
Googleさんに聞いてみると駅前だけでも7件ヒット。…7件。
とりあえず1番近くのホテルに電話してみるものの、『カードキーの情報は泊まってるホテルでしか読み取れないから、入口でカードが反応するか試してもらわないと何もできない。』との返答。
そういうものなのか。そうか。
まぁ、7件か。…7件だよね。
ヨドバシにはどこでもドアは売ってたかな。
コンビニでほんやくコンニャク買えば予約の時のメールをせてもらえるかな。あ、まだ21世紀か。
まぁ、7件ね。おーけーおーけー。
日本人は優しい民族なんだ。
…確かそう。
仕方なく地図アプリを見せてなんとなく全部回ることを伝えて、歩き出す。
言葉は通じないものの付いてくる困り顔。
1件目のホテルを指さして首を傾げてみる。
同じように首を傾げる。困り顔。
入り口は案の定無反応。
2件目でも同じことをする。
3件目。無反応。
そろそろ玄孫が妹ロボットと一緒に現れる頃だろうか。
せめて自転車2台は持ってきて欲しいな。
あ、ゲイには子供すら出来ないか。
…まぁ、残り4件か。
いつの間にか困り顔から向けられる疑いの目。断じて俺は悪くない。
4件目も無反応。
そして5件目に到着。
カードキーを出してもらおうとしたところで事件発生。どうやらここまでの道中で紛失したらしい。
とりあえずフロントに電話して事情を説明するも、紛失時の宿泊確認にはパスポートが必要とのこと。
拙い英語を駆使して不審顔に伝えると、鞄も無くしてしまったらしい。
これにはフロントマンも困り顔。
3つに増えた困り顔。
お互い何も言えない時間が続く…
1番に痺れを切らしたのはフロントマン。
とりあえず宿泊時にとったパスポートの写しと監視カメラを照会してくれるらしい。
そんなこんなで待つこと30分。
無事宿泊確認が取れたらしく、新しいカードキーを用意してくれた。
やっぱり日本人は優しい民族だ。
きっとそう。
最終確認のため3人で部屋に向かう。
フロントマンがドアを開けると、入り口には明らかに観光用の肩掛け鞄。
何も言えない2人を横目に嬉しそうに部屋に駆け込む元不審顔もとい困り顔。
アリガトウ。アリガトウ。と言いそのままドアを閉められる。
そこは日本語なんだな。
パスポートもきっとあるんだろうな。
ふぅ。
…………帰ろう。
そんなこんなで早3時間。
フロントマンにお礼を伝え、丁度始発に乗れそうだなと思いつつもタクシー乗り場に歩く。
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